表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋愛物

28日前の剥がれ落ちた私

作者: 網笠せい

 今日の私は、昨日の私と同じではない。

 湯船に浸かっていると、目の前に垢が浮かんできて、そんなことを考えた。

 人間の皮膚細胞は、およそ28日で入れ替わるらしい。

 垢を手のひらですくって、湯船の外に流した。つまりこれは、28日前の私だ。

「あー……」という声をあげると、お風呂の中に頭のてっぺんまで浸かった。水の浮力がかかって、髪の毛がふわりと浮く。


 ──28日前のことは、いまいち思い出せない。


 私は水面から顔だけ出して、ぼんやりとお風呂場の明かりをながめた。

 付き合っていた人と別れたのは、一ヶ月前のことだ。もうそのときの皮膚細胞は自分に残っていない。


「スッキリするね」


 私のつぶやきはお風呂場に響いたが、私自身はあまり釈然としていなかった。嫌な記憶というのは厄介だ。

 お湯から頭を出して、口元まで湯船に浸かる。息を吐き出すと、ぶくぶくと泡がたった。

 元彼への文句が泡になって消えていった。


【おわり】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ