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7.決断の時

マーカスの研究室に駆けつけた諒たちを、重苦しい空気が迎えた。

室長は椅子に深く腰掛け、虚ろな表情で自分の手を見つめていた。机の上には、粉々に砕けた試験管の破片が散らばっている。

「マーカス先生!」

諒が駆け寄る。

「ああ、青山か...」

マーカスの声は、いつもの力強さを失っていた。

「突然、魔力が...制御できなくなってな」

リーシャが素早く状況を確認する。

「完全な魔力枯渇...私が今まで見た中で最も深刻な症状です」

「研究所のトップである室長までもが...」

エレナが言葉を呑む。

その時、カインが部屋の入り口から声を上げた。

「おい、廊下に人が集まってきているぞ」

覗いてみると、大勢の研究員たちが不安そうな表情で集まっていた。マーカスの症状を耳にして、動揺が広がっているのだ。

「このままではパニックになる」

リーシャが状況を見極める。

「でも、評議会の招集にはまだ時間がかかります」

諒は深く息を吐き、一歩前に出た。

「私から説明させてください」

「諒...」

リーシャが心配そうに見つめる。

「大丈夫です。このまま不安を放置するわけにはいきません」

諒は廊下に出て、集まった研究員たちの前に立った。

「皆さん、私から現状について説明させていただきます。そして、可能な対策について、皆さんの知恵を借りたいと思います」

諒は、これまでの発見と仮説を整理して説明し始めた。古代魔法の循環システム、現代魔法による魔力の一方的な消費、そして解決への糸口について。

「つまり、私たちに必要なのは、魔力を循環させる新しいシステムです。古代の知恵と、現代の技術を組み合わせて...」

説明を聞いた研究員たちの間で、次第に議論が活発になっていく。

「私の研究室では、魔力の貯蔵について研究していますが、その技術が使えるかもしれません」

「気象魔法科では、大気中の魔力の流れを観測できます」

「私たちの結晶工学の知識も役立つはずです」

リーシャが諒の横に立ち、声を上げた。

「各研究室の知見を集めれば、必ず道は開けるはず。協力してくれる方は...」

多くの研究員が手を上げた。危機を前に、研究所が一つにまとまろうとしていた。

その時、エレナが古い羊皮紙を掲げて叫んだ。

「見てください!」

皆が振り返ると、羊皮紙に描かれた魔法陣が淡く光を放っていた。

「古代の魔法陣が...反応している?」

諒が驚きの声を上げる。

「まるで、私たちを導こうとしているかのよう...」

エレナの声が震える。

カインが剣を鞘に納めながら、静かに言った。

「なら、我々がやるべきことは決まったな」

マーカスが、よろめきながらも立ち上がる。

「全研究室の総力を上げて、この危機に立ち向かおう」

諒は頷いた。個々の知識と技術を結集させれば、必ず道は開ける。そう確信していた。

しかし、その時は誰も知らなかった。

この決断が、魔法世界の歴史を大きく変える転換点となることを。

そして、彼らの前には、まだ最大の試練が待ち受けているということを—。

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