6.発見と危機
「これは...!」
諒の声に、全員の視線が集中した。
「何が見えたの?」
リーシャが身を乗り出す。
「この魔法陣、現代のものとは根本的に異なる原理で設計されています。私たちは魔力を一方向に流して制御していますが、古代の魔法陣は...魔力を循環させているんです」
「循環?」
カインが眉をひそめる。
「はい。まるで...生態系のように」
諒は机の上の羊皮紙に、化学式のような図を描き始めた。
「現代の魔法は、大気中の魔力を取り込んで使用した後、そのまま拡散させています。でも、この古代の魔法陣は、使用した魔力を浄化して再利用できる仕組みを持っている」
エレナが古書の頁を急いでめくる。
「確かに...古代の文献には『魔力の輪廻』という概念が度々出てきます」
「じゃあ、今起きている異変は...」
リーシャの声が震える。
「ええ」
諒は深刻な表情で頷いた。
「魔力が枯渇しているんです。私たちの魔法使用法が、大気中の魔力を消費する一方なので...」
その時、図書館の扉が勢いよく開いた。
「大変です!」
若い研究員が飛び込んでくる。
「第二研究室の主任が突然、魔法が使えなくなったと...!」
四人は顔を見合わせた。状況は予想以上に急速に悪化していた。
「諒、君の仮説が正しければ、この現象は...」
エレナが言葉を探す。
「はい、広がっていきます。しかも、加速度的に」
「研究所評議会を緊急招集しましょう」
リーシャが立ち上がる。
「私から伝えます」
「待って」
諒が声を上げた。
「その前に、試してみたいことがあります」
諒は急いで実験室に向かった。他の三人も後に続く。
実験室で、諒は魔法薬の材料を素早く混ぜ合わせ始めた。分析スキルを最大限に活用しながら、魔力の流れを観察する。
「これは...回路を作ってるの?」
リーシャが諒の作業を覗き込む。
「はい。古代の魔法陣を参考に、魔力を循環させる反応系を構築してみます」
試験管の中で、淡い光を放つ液体が渦を巻き始めた。
「成功...!」
諒の声が上がる。
「小規模ですが、魔力を循環させることに...」
その瞬間、実験室の窓から見える街の方角で、大きな爆発音が響いた。
「また魔力暴走か!?」
カインが窓に駆け寄る。
「街の市場の方ですね」
エレナが状況を確認する。
「商品の保存に使われている魔法装置が...」
「もう時間がない」
諒が決意を込めた声で言う。
「評議会に報告してください。私はこの循環系の研究を急ぎます」
リーシャが頷く。
「私も手伝うわ。氷魔法の知識が役立つはず」
「図書館の古代資料も総ざらいします」
エレナも決意を示す。
「俺は街の警備を強化する」
カインが剣を握り締める。
「暴走事故が増えるかもしれない」
四人がそれぞれの役割に向かって走り出そうとした時、廊下から悲鳴が聞こえてきた。
「大変です!マーカス室長が...!」
事態は、さらに予想外の展開を見せ始めていた—。




