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5.異変の連鎖

第四研究室に駆けつけた諒とリーシャの目の前で、異様な光景が広がっていた。

実験用の大きな水槽の中で、本来なら美しい結晶となるはずの氷が、不規則な形に歪んで凍りついている。水槽の周りには、困惑した表情の研究員たちが集まっていた。

「どうなってるの?」

諒が状況を確認する。

「いつもの氷結実験なのに、魔力の制御が効かなくて…」

研究員の一人が説明を始める。

「リーシャさん、これは…」

「ええ、私の研究テーマの一つよ。水分子を規則正しく配列させて、純度の高い魔法氷晶を作る実験。でも、今日に限って全く上手くいかないの」

諒は早速、分析スキルを駆使して観察を始めた。氷の結晶構造、そこに流れる魔力の様子、周囲の魔力場の状態—。

「これは…」

諒の表情が変化する。

「何か分かったの?」

リーシャが身を乗り出す。

「魔力の密度が通常より薄いんです。しかも、まるで...何かに干渉されているような」

その時、研究室のドアが開き、カインが入ってきた。

「やはりここでも か」

「カインさん?どうしたんですか?」

「訓練場でも似たような現象が起きている。魔法剣の練習中、魔力の込め方がいつもと違うって騎士たちが報告してきてな」

三人は顔を見合わせた。研究所内の複数の場所で同時に起きている魔力の異常—。これは偶然ではないはずだ。

「図書館に戻りましょう」

諒が決然と言う。

「エレナさんの話と、何か関係があるかもしれない」

研究室を出ようとした時、リーシャが水槽の中の歪んだ氷を見つめながら呟いた。

「この形…どこかで見たような…」

図書館では、エレナが既に関連する資料を机の上に広げて待っていた。

「これを見てください」

エレナが一枚の古い羊皮紙を指さす。

「三百年前の記録です」

そこには、歪んだ氷の結晶の図が描かれていた。リーシャが目を見開く。

「これは、さっきの...!」

「この記録によると、当時も魔力の異常が各地で報告されていたそうです。そして、その後…」

エレナの言葉が途切れた時、図書館全体が不気味な振動に包まれた。書架が軋む音が響き、天井から塵が舞い落ちる。

「地震?」

カインが剣に手をかける。

「違います」

諒が分析スキルで状況を確認する。

「魔力の波動です。しかも、この振動の周期は…」

その時、図書館の古書が一斉に淡い光を放ち始めた。まるで、何かを訴えかけるように。

「古代魔法の本が…反応している?」

エレナが困惑した表情を浮かべる。

振動は次第に収まっていったが、四人の胸に残された不安は、むしろ大きくなっていた。

「これは、ただの局所的な現象じゃない」

諒が言い切る。

「もっと大きな、根本的な異変が起きているんです」

「古代の記録にある、あの大災厄の前兆...まさか」

エレナの声が震える。

「エレナ」

カインが声をかける。

「その大災厄について、詳しく教えてくれないか」

エレナはゆっくりと頷き、古書を開いた。しかし、その内容を読み上げる前に、彼女は深刻な表情で一言付け加えた。

「このことは、上層部にも報告が必要かもしれません」

リーシャが黙って頷く。室内に重苦しい空気が満ちていく中、諒は古書に描かれた魔法陣を見つめていた。その瞬間、彼の分析スキルが、思いもよらない事実を映し出す—。

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