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金木犀の香る頃  作者: 彩華 (あやはな)
9/14

9.

僕ははじめて婚約者の顔を知った。

 

 青白く生気がかけた顔色で、艶やかに笑う顔。


 彼女は涙を流して、妖精の踊りのような美しいカーテシーをした。


 今思い返すとあの姿を見て初恋の少女を彷彿とさせた。


 ーまさか・・・。そんなはずはない・・・よな


 それに、本当に初恋の人だとしても今更のこと。

 僕の心にはエリアルがいるのだ。

 彼女が全てー。初恋は初恋。今現在が大事なのだ。



 彼女に対して、すまないことをしたー


 そんな気持ちはあった。

 だが自分の行いに対して、悪いことをしたという気はこれっぽっちもなかった。


 僕はといえばあの後、屋敷に帰って父に怒られた。

 どうして二年待てなかったのかと。彼女と僕の関係は何故か二年だけのものだったらしい。

 そんな話は知らないし聞いていなかった。

 何故二年なのかは父は教えてくれなのか?


 例え、ニ年のことだとしても僕はエリアルを待たしたくない。だから、この選択は間違っていないのだ。


 当然、出資はなくなる。

 だが、今までの出資を返さなくてよかった。慰謝料も請求されていない。


 なら、よかったのでは?と思うのに、父は暗い顔で、アシュレイ公爵に罪悪感を抱いているようだった。

 「すまない」と部屋で酒を飲みながら幾度も呟いているのを見たが、僕には理解できないでいる。


 今僕らは、以前と変わらない日常を送ったいる。

 あのような公の場で婚約を解消したと言うのに、カインゼル殿下の継承権もそのまま、エリアルや僕のことも話題にはのぼっていなかった。


 僕は嬉しさのあまり、スマにエリアルのことを報告したが、返事は返ってこなかった。

 手紙がなくなっていたのだから、スマの元に届いているはずだとは思う。


 祝いの席でのことをどこかで知ってしまったのだろうか?もしかして軽蔑していたのだろうか。


 それでもいい。


 僕は幸せだった。


 エリアル嬢と一緒になれる。

 国王陛下が認めてくれたのだ。


 後ろめたいことは、何一つない。


 ただ、エリアルは親友だった彼女のことを心配していた。

 あの後、幾度か屋敷を尋ねたらしいが門前払いされたらしい。


 僕にすれば、どうでも良かった。だが、エリアルに悲しい顔をさせる彼女を許すことはできず、いくばくか腹が立っている。


 確かに僕が悪いのかもしれない。

 でも、でもだ。

 僕はエリアルが好きである。

 

 彼女は僕に好きな人がいることを知っていたはずだ。

 浅ましい女ときいている。そんな彼女から解放されたことを喜ばずにいられない。



 僕とエリアルは、学園卒業後、すぐに結婚をした。


 元婚約者と予定していた結婚式をそのままにして執り行ったのだ。


 身内だけの小さなものになった。

 それでも、僕らには不満はない。


 好きなもの同士の幸せな結婚式なのだ。


 それのどこに不満をいだこうか。


 僕は美しい花嫁に酔いしれた。


 


 


 僕らの結婚式を挙げて一週間して、王宮からエリアル宛に手紙がきた。


 中を見たエリアルの手が震えている。


「ケイカ!?」

「エリアル?どうしたの?」

「クロード、馬車を、ケイカの屋敷に馬車を出して」


 慌てるエリアル。嬉しいのか、喜びに満ちた顔で僕に頼み込んできた。


 僕らはケイカ嬢の屋敷に向かう。

 屋敷に着くと、そこにはカインゼル殿下もいた。


 僕らが来るの待って屋敷の侍女が部屋を案内してくれる。


 公爵家とは思えない薄暗い室内。人がいないのか物音一つしないのはどうしてなのか?


「どうしたの?いつもより人がいないわ?」


 エリアルが不思議そうに言う。

 侍女は、僕らを歓迎していないのか、目を合わすこともなく、無言で案内した。


 一室に案内される。

 部屋に入ると、金木犀の匂いが漂ってきた。


 窓から、金木犀の匂いが入ってきているのだろう。いや、金木犀の咲く時期はすでに終わっている。


 窓辺にエミリア嬢が立ったいた。


 真っ赤に目元を染めたエミリア嬢。


「待ってたわ」


 彼女の笑顔は冷たい物だった。


 

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