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金木犀の香る頃  作者: 彩華 (あやはな)
4/14

4.

「スマへ


 少しだけ、愚痴を書かしてもらうね。

 君には以前、僕に好きな人がいると書いたから、知って欲しくて・・・。

 彼女の婚約者は今、他に好きな人ができていて、彼女を蔑ろにするんだ。僕は悲しむ彼女をみていられない。

 彼女の暗い顔をみるのが、つらいんだ」



「ラッキーさん

 

 女性は誰かが側にいてくれるだけでも嬉しいものです。

 身分があり、婚約者がいる相手なら距離も必要とは思いますが・・・。

 その方のお相手を諌めることはできないのですか?」




「スマ

 

 アドバイスありがとう。


 彼女の婚約者には、幾度か注意をしてはいるけど、注意をすればするだけ燃え上がると言うか、夢中になっているようで聞き入れてくれないんだ。周りも困っている」




「ラッキーさん


 そうなんですね。力になれなくてごめんなさい」




 



 「クロード、明日の休み少し付き合ってくれない?」


 カインゼル殿下の婚約者である、エリアル嬢が言ってきた。


「付き合う?どこにです?」

「親友の誕生のお祝いの品を選びたいの。殿下は・・・その、ねっ・・・」


 うつむき悲しみに溢れた表情。

 カインゼル殿下は、ソフィア・クローレンス伯爵令嬢と常にいるようになっていた。


 なぜ、殿下はこんな素晴らしい方を放っておかれるのだろう・・・。


「殿下に相談したら、貴方なら相談に乗ってくれるだろうからって・・・。ダメかしら」


 殿下・・・。

 

「構いませんよ」


 僕はにっこりと笑った。

 内心では飛び上がりそうなほど嬉しくて仕方ない。

 

 次の日、学園が終わってから僕らは街に出かけた。

 護衛は少し離れたところに幾人かいたが、ほぼ二人きり。近くにエリアル嬢がいると思うとドキドキした。


 制服だと言うのに、エリアル嬢が可愛い。

 高貴な雰囲気が抑えきれていないものの、素の彼女が隣でいる。


「ご親友はどんな方ですか?」

「私の幼馴染で、大切な子なの。でも、身体が弱くて、いつも屋敷で過ごしてるわ。まっすぐないい子なの。私の大切な親友だわ」


 その顔は、慈愛に満ちていた。

 本当にその子のことを大切に思っているのだと感じる。


「その方はどんなのが好きなんですか?」

「オレンジよ。大好きな花の色ですって」


 僕たちは学園の話をしながら、店を回った。


 小さな宝石展に入る。


 目移りしそうなほどの装飾。


「エリアル嬢は何色が好きなんですか?」

「私?私は・・・紫かしら」


 とくんと胸を打つ。

 紫は・・・、殿下の瞳の色。


 ーやはり、彼女は殿下が好きなんだな・・・


 心臓が痛い。

 気のせいだ。気づかれてはならない。


 自分の心を隠し、二人で見て行く。


 羽根の形を模した銀のペンダントがあった。羽根の根元に小さな宝石がついている。


「これ、はどうですか?」 

「綺麗ね・・・。オレンジ宝石もついてる。これにしましょう。・・・紫のもあるのね・・・」


 色違いのがあった。


「・・・こちらは、僕があなたに贈ってもいいですか?」

 

 気づけば口走っていた。

 慌てて、弁解する。


「いや、深い意味はないですよ。折角なんでお揃いの物を持てば、その方も喜ぶんじゃないかと思いまして。なのに、男の僕が黙ってみてるだけでは、気が引けて・・・。エリアル嬢。男の僕に名誉をいただけないでしょうか?」


 改まって申し出てみる。

 

 エリアル嬢は、クスクスと笑った。


「では、クロード。貴方に名誉を授けますわ」

 

 僕は彼女にブローチを贈った。

 

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