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傍観者

作者: 一色 良薬

 早朝から騒々しいやり取りをヤクルト片手に野中はベランダから眺めていた。

 三階から見下ろす、アパートの出入り口には這いつくばる痩身──ガイコツ男。

 その男の胸倉掴み怒声を浴びせる巨体──ゴリラ男。

 そしてそれらを無言で傍観する男──死神で占領されている。

「おい木下ァ! テメェ返済日とっくに過ぎてんぞ! なんで返しにこねぇんだよ!」

「ひ、ヒィ! すみ、すみませ……ら、来週には、必ず……必ず返しますからぁ!」

「待つ訳ねぇだろうが!! 今すぐ延滞料と利息分を払いやがれ!!」

「も、もうお金ないです、許してくださ、い……!」

 壮絶な会話だな。

 一気に飲み干したヤクルトの容器をぐっと握り、冷めた様子で野中は観察し続ける。

 二人組の男は金融屋――おそらく闇金だろう。高利子で貸し付け、利息さえも払えなくなった男に“最終勧告”へ来たというところか。

 自分とは関わりのない程遠い世界だとぼんやり思案しながら、無言で立ち続ける男へ視線を移した。

 遠目からでも判断できる、異様な威圧の存在に「関わりたくない」と野中の本能が警告する。

 これ以上野次馬根性で見るべきではないと頭では分かっていた。

 しかし危険だと認識する男には、それを踏まえても妙に目を奪われるものがあった。

 爽やかさとはかけ離れた、蒸し暑い気温の中で長袖スーツを着ているからだろうか。

 汗ひとつ感じさせない冷めた表情で、ガイコツ男を見下ろしている。

 と、男の視線がぎょろりと上向いた。ばちりと視線があい、目を見開きながら野中を凝視した。

「うわっ!」

 声を出すつもりはなかったが、反射的にこぼれてしまう。やけに大きく響いた野中の声に、ゴリラ男の視線が上を向いた。

「おい、何見てんだ! 見せもんじゃねーぞ!」

 咄嗟に隠れるよう、ベランダに縮こまった。

「びっくりした」

 自業自得の借金男や二人組の金融組を見ていたわけではない。

 まさか本当の死神に会えるとは思わなかったのだ。

「誰の魂を迎えにきたのかな」

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