カヌレ
「いよいよ、三つ目の罪ですわね」
クローディア=デピスは、そう本題を切り出した。
「はい、エリカ嬢に自ら危害を加えた事、ですね」
「魔法戦闘大会の試合の後ですわねぇ」
ベラ=クベルドンとアビゲイル=ベグネがそれぞれ応じた。
「あの時は、闘技場の階段から突き落としてしまいましたものね。止めとばかりに高笑いまでつけていたはず」
クローディアは、重々しくため息をついた。
「思い返せば、わたくしはかなり酷いことを……」
「やり直し前は、完全に悪役令嬢で通っていましたものねぇ」
「反省できるなんて素敵ですよ、クローディア様」
「そうですわね。自己嫌悪している場合ではない、ですわね」
クローディアは、取り巻き二人のフォローで、なんとか自分を取り戻したようだった。
「でも、今回は比較的簡単ですわ。わたくし自身が、階段から突き落としたりしないよう気をつければ良いだけの話ですから」
「クローディア様が突き落としても、わたくしの風魔法で受け止められますわぁ。前回の特訓はまだ忘れていませんものぉ」
「突き落として助けて――罪に問われる可能性が残りそうです」
アビゲイルの提案を、ベラがやんわりと却下した。
「とにかく。エリカ嬢を突き落とさない、できれば、魔法戦闘大会の後で顔を合わせもしない。これで、三つ目の罪を回避しますわ」
クローディアが仕切り直した。
そこで、待ってましたとばかりにアビゲイルが声を上げた。
「それでは、本日のスイーツですわぁ!」
三人の目の前に用意された、今日のスイーツはカヌレだ。
「カヌレはなんと言っても、このゴツゴツとした型で焼かれた外観と、このもっちりとした歯ごたえですわぁ」
早速一口目を頬張ったアビゲイルの言葉通り、カヌレは弾力のある歯ごたえが魅力の一つである。
「そして蜜蝋によるこの独特の風味。硬く香ばしい外側と、しっとり柔らかな内側が、絶妙なハーモニーを生み出すのですわぁ」
「私もカヌレ大好きです」
いつもなら一人でお菓子大好き世界を繰り広げるアビゲイルの横で、珍しくベラも幸せそうに相好を崩している。
「まぁ。幸せそうで何よりですわ」
そんな二人を眺めながら、クローディアは紅茶を飲むのだった。