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(1) 第一発見者

私は今、都内にあるK高校に来ている。


K高校は文武両道を掲げており、部活動にも大学進学にも力を入れる進学校だ。


警察官である私がなぜここに来ているのかというと、この高校で女子生徒が死体で発見されたからだ。


現場も確認したが、事件性有りと判断され、犯人が未成年である可能性もあるため、世間へ情報は流れていないが、今の時代、騒がれるのは時間の問題だろう。


現場は旧校舎にある今は使われていない教室で、普段生徒が立ち入る理由はないような場所。


凶器は一般的な家庭にあるような包丁であったこと、また家庭科室にあるものではなかったため犯人が持ち込んだものと考えられ、死因は背後から首の頸動脈を切られたことによる出血死。


状況的に計画的な犯行、加えて被害者が背後を見せるような相手ということもあり、親しい友人、すなわち学校内の人間であることが有力だ。


大方犯人に目星はついているが、慎重に捜査を進める必要がある。


犯行の動機を知るため、亡くなった生徒の素性や、日々の学校生活、交遊関係を事情聴取しに来た。


今日初めに話を聞く人物は、第一発見者の川本(かわもと)楠男(くすお)


彼は生物の授業を担当している43歳の教師で、この高校に赴任して半年だ。


彼が現場を発見した日、彼は旧校舎の見回り当番だった。


使われていない旧校舎に生徒が忍び込み何かしないように、教師たちは生徒たちの登校前と下校後に見回りを行っているらしい。


彼は不運にも、朝の見回りの時間に、いつもは閉まっている教室の扉が開いていることに気付き、中を除くと壁一面の血飛沫(ちしぶき)と、女子生徒の亡骸を発見した。


応接室に通され、私と部下の二人で川本から話を聞く。


大抵の人は、そんな現場を目撃するとトラウマになり、話を聞くのは容易ではないのだが、彼は割りと落ち着いており、曰く、グロテスクな映画をよく見るからだそうだ。




まずは死亡推定時刻である遺体発見の前日午後10時に何をしていのか。


「家で家族とテレビを観ていました。その日は夜八時には帰宅して、お風呂とご飯を済ませて、テレビを観た後12時には寝たと思います」


川本のアリバイは確認済みだが、一応訊くのが決まりのようなものだから訊いた。


次に、亡くなった女子生徒について。


「実は私は生物担当の教師でして、授業を取っていない生徒とはほとんど接点がなくて……顔くらいは見たことがあるのですが、その程度で」


このK高校では、生物以外でも受験で使わない科目は取らなくても良いことになっているらしい。


「でもそうですね、ちゃんとした中身は知らないですが、見た目と印象はさほど大きく変わらない子だったと思います。廊下で見かけた時は大きな声で騒いでいませんでしたし、制服もきちんと校則を守っていましたので、真面目な子だったのではないかと」


確かに彼女の生前の写真をいくつか見たが、真面目そうな子という印象だった。


しかし、外見的特徴に釣られて本質を見失うことは多々ある。


多くの場合、事件の加害者も被害者も、周囲からどうしてあの人が、そんなことする人だとは、と言われるものだ。


人間は決して一面的ではなく、状況に応じて態度を変えるものだ。


加えて言うなら、彼らの言葉は決して間違いではない。


温厚そうな人が交際相手を殺害、仲良さそうな夫婦が喧嘩の末に片方を殺害するなどよくある話で、この人たちが異常なのではなく、人間誰しもそうなる可能性を秘めているのだ。


川本はただ第一発見者というだけであまり事件について有益な情報は得られそうにない。


私は部下に、ある一枚の集合写真を机に置くよう指示した。


「この生徒については何か知りませんか?」


部下に促され、川本は写真を手に取りまじまじと見てから、申し訳なさそうに首を横に振った。


「この生徒については刑事さんたちも話を聞いたかもしれませんが、見た目のようにやんちゃであまり学校に来ていなかったようです。私の授業にはそもそもいませんでしたし、見たことも数回しかありません」


川本から写真を受け取り、恐らくもうないが、また話を訊くかもしれないと言っておいた。


川本に退出を促し、部下と話し合う。


部下はそれにしても運が悪かったですね、と第一発見者が出ていった扉を見て同情した。


「この川本はシロですね。まあわかってましたけど」


その後部下が私に顔を近づけてコソッと呟いた。


「一応これ鑑識に回しときますね」


違法だとはわかっているが、操作を円滑に進めるため、先ほど写真に付着した川本の指紋を念のため調べさせてもらう。


「次は担任の先生ですね。これは少し有益な話が聴けるといいですね」


今の川本よりはさすがに亡くなった女子生徒の担任教師の方が知っていることは多いだろう。


私は部下と立ち上がり、その担任教師を呼びに職員室へ向かった。





この時はまだ、私は普通の事件、程度にしか考えてなかった。

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