1/18
プロローグ 赤の女王
白い息を吐き出す
赤い唇。
赤い瞳。
豊かな黒髪は艶やかに緩やかに波打つ。
雪のように白い頬。
美しい曲線美で構成された体。
何処か憂いを帯びた瞳に見詰められれば
美の神でさえ裸足で逃げ出すだろう――。
その気になればどんな男でも簡単にオトせるだろうに。
それをしない謙虚さがまたいい。
これが世の男共に耳打ちされた我が女王閣下の評価。
流石は我が国の象徴、と鼻が高いのが普通なら僕はとっくに常識から外れてる。
女王を誉められて
嫉妬するなんて。
同時に僅かな優越感に浸る事が出来る。
彼女はオトさないのではなく、オトす必要が無い。
正しくはオトす気なんて無い。
彼女が見詰め続けるのはただ一人。
今も昔も
――アリスだけ。