第一話
あらすじ
電車の人身事故により、2080年に転生した「私」は、駅前広場で驚きとショックによる貧血で倒れる。
…………
「…はっ!?」
私は気づいたら、約4畳の一室にある、そこら辺の大型家具店で売ってそうな素朴なベットの上で寝ていた…
ここは誰かの家なのか?壁は木調で、眺めても何にも面白みがない…
その木調の壁に異様に立て掛けられていたデジタル時計を見たら、[2080年10月23日8:47]と表示されていた。
ああそうか…私は2080年の日本に転生したんだった…
近くには、服が置いてあった。
倒れる前に着ていた服は脱がされ、私は白地のシャツとパンツしか着ていなかった。
デジタル時計の隣にまたもや不自然に置かれている水銀が使われた温度計を見たら、そこには、[-2℃]と表示されていた。どおりでクソ寒いわけだ。
この状態では凍死確定なので、そこに置いてある、服を着た…
「何これ…」
何とこの服は地雷女子と呼ばれる人が着ている、いわゆるゴスロリというものだった。
これが、2080年に流行っているファッションなのか?いや、こんなファッションが流行っていたら間違いなく日本は崩壊するだろう。
でも、これ以外の服が無いので、渋々着る事にした…
スカートの丈が膝まであるのは不幸中の幸いなのかもしれない。
そして、ベットと時計の他に一つの木製の少し大きい本棚があった。
暇なので、この本棚にあるものでも読んでみることとした…
なんだこれは…"2080年度改定50000分の1スケール地図"だと?
取り敢えず、九州ら辺を見て見るか…
なになに?長崎新幹線が完成している…まぁ当然か…佐賀ら辺はミニ新幹線化したんだな…
これは、大隈線か?垂水市周辺にも線路がある…復活したんだな…
ん?県庁所在地のマークがなんか変なところにあるぞ…大分の県庁所在地は大分じゃなかったっけ?何で由布市にあるんだ?まぁ…60年もあれば県庁所在地も変わるのか…
そのような感じに、九州だけでも多くの変化が見られた…
他の地域はどうなっているのだろう…
と、他の地域も確認しようとした瞬間…
『トントン…』
ナニモノかがドアを弱めに叩く音が聞こえた…
「誰!?」
でも、そちらから開ける気配は一向に見られない。
待つのが苦手な私は自分から開けた…
「すいませーん、誰ですかー!!!」
『ガチャ…』
木製の年期が入っている扉を開けたら、そこには…
「あれ…?」
そこには、3日前、倒れる前に見た景色がそのまま広がっていた…
何処をどう見ても西新井駅前だった。
そして、駅前の時計には、[2080年10月3日9:10]と表示されていた…
「どうなっているんだぁぁぁぁぁ!?」
私は思いっきり叫んだ。
私の周辺半径200m弱付近を歩いていた一般人のほとんどが私に振り向いた。
叫んでいても、恥ずかしがっていても意味はないので、とりあえずドアを閉めた…
『シュゥゥゥゥ…』
ドアを閉めた瞬間、炭酸飲料が吹き上げる感じの音を立てながら、ドアが消えた。
「!?!?」
驚きすぎて声が出なかった。
2080年にもなると、皆が魔法が使えるようにもなっているということなのか??
ドアが完全に消えた後、ドアがあった所には、5枚の紙幣と、重し替わりの不格好な100カラットぐらいのダイヤモンド…いやこれは水晶か…
この紙幣は一万円札で、その一万円には渋沢栄一の顔があった。
どうやら、新紙幣の発行から56年経ったにも関わらず、紙幣のデザインは一切変わっていないらしい…
そもそも、完全キャッシュレス化していないのがおかしいのだが。
そこはともあれ、5万円さえあれば、1週間は生きていけるだろう…
これもアレだが、問題なのは水晶の方だ。
重しに水晶しかなかったから、水晶を使ったのだろうか?でもおかしい。いくら水晶であっても、このサイズだと、軽く5000円は超える筈、だったらそこら辺に落ちている石や本を使うだろう。
売れというのか?でも、5万渡して、さらに水晶を渡すのはあまりにも不自然すぎる…
若しくは、魔法石なのか?これで魔法を唱えろというのか?
よくわからないが何かの役に立つかもしれない、そう考えた私はこの水晶を5万円と共にポケットにしまった…
とりあえず、西新井駅周辺に留っていても仕方ないので、電車で移動することにした…
そう決まれば、エレベーターで2階の駅構内の改札口に向かおう…と思ったのはいいものの、問題が起こった。
なんと、[西新井~北千住間が信号故障により不通]と、駅構内の電光掲示板で表示されているのだ。
どうすればいいんだ…
振替輸送に大師線という名前があった。大師線は二駅しかない筈だが…
「何言ってんだ…いや?待てよ…なんか伸びてね?」
なんと、大師線はかなり伸びており、西新井から、大師前方面に関しては、赤羽や石神井公園を経由し、三崎口に伸びており、逆方向に関しても、京成高砂や北習志野を経由し、九十九里町まで伸びていたのだ。
「…」
その前に結構驚いていたので、もう慣れて大声で驚くことはなかった。
でも、石神井公園とか京成高砂はホームタウンとしては素晴らしい街だが、ここよりも都会とは言えない。
取り敢えず、北方向に行ってみるのが今の所最適解かもしれない。2080年にもなれば、越谷や春日部等は大都会になっているだろう。
私はこの駅を南北で貫く、とうb…いや、武蔵鉄道? 一体何があったんだ???
駅構内に路線図があったので見た。60年前の路線図と比べて明らかに一回り大きくなっている気がする。
なんと、池袋線や新宿線の存在があった。まさか、合併して、東と西の表記が消えて、武蔵鉄道になったというのか?
2080年にもなればここまでなるんだな…
まぁ、いちいち同様したら、それだけで日が暮れるので、早速、電車に乗ってみようと思う。
今回乗るのは、当駅始発の急行館林行、来たのは、恐らく2010年以前に製造されたであろうオレンジ色の通勤電車だ。まぁ、この鉄道は60年前にも、50年前の電車を普通に走らせていたし、それに関しては何にも違和感ない。
問題はこのゴスロリ衣装を着た状態で、電車に乗ることだ。
幸いと言うのはアレだが通勤通学ラッシュは終わっており、乗車率は50%くらいだ。
出来るだけこの衣装の状態で見られるのは避けたい。
そんな願いは虚しく、電車に乗ったら、他の乗客のほとんどは私に視線を向けた。
マジで恥ずかしい。今にでも爆発したい気分だ…
早く着いてくれぇぇ!!!!
続く…