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中古屋探偵  作者: 小田川アキ
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リサイクルショップタイラ その1

チラシの配布効果もなく、あれから数日経っても瀬尾の事務所へ依頼が舞い込む事は全くなかった

「こんな事なら、行方不明の猫でも探しとけば良かったんじゃないか?」

「…うるさい」

紅茶を啜りながら、ゆったりとソファーで過ごす。

代わり映えのない日々が淡々と過ぎていくと思われた

ある日、平良は店先に陳列されている家具に気休め程度の叩きをかける。よく見ると売り物のはずの本棚にはマンガや雑誌が並べられている。中高生達が通りすがりにイタズラ半分で本棚へ捨てて行くのだが、側に置かれたベンチに座り暇潰しがてらに平良が読んでいるのであまり迷惑がってはいないようだった


「あの~この間はありがとうございました~」

聞き覚えのある間延びした話し方に手を止めて声の主へ顔を向けると、背の高い平良を見上げるようにシルバー色の双眸が見据えている。その派手な化粧とシトラスの香りで数日前に瀬尾の事務所で顔を合わせた女だと直ぐに気が付いた、ノースリーブの黒いニットに花柄のロングスカートという服装のせいか事務所で会った時よりも女性らしい雰囲気に平良のテンションも上がっていく


「あぁ~猫の人。どうしたの?また依頼にでも来たの」

「覚えていて良かったです~。今日は~お兄さんにお礼に来たんですよ」

「お礼?俺に?」

「はい~」

「お礼を言われる事なんてあったっけ?」

平良は訳がわからず首をひねる

「あの時、お兄さんが猫を見つけたいならって色々と教えてくれたじゃないですか~それで、家に帰った後にやってみたら、何と帰って来たんですよ!それで~そのお礼に来たんです」

そう言うと、手に持っていたドーナツの箱を差し出した

「そんな大層な事してないと思うけど…」

「いいんです~それでもちゃんと帰って来たんですから。ぜひぜひ貰ってください~」

「そういうもんか…?」

「はい~」

「じゃあ、ありがたく頂戴するよ」

若干、気圧されながらドーナツの箱を受け取ると甘い匂いが鼻を擽る


「慎二、そろそろ約束の時間だから配達に謂って来てちょうだい」

店のガラス戸が勢いよく開けられると、恰幅の良い中年女性が声高に叫ぶ

「やだアンタ、昼間っからナンパかい?お嬢さん、この子は親の欲目かもしれないけど見た目も性格も悪くは無いんだけど、勉強は出来ないし、お金も持ってないし、足も臭いから止めておいたほうがいいわよ」

2人の姿を見るに付け一気に捲し立てる姿に平良は顔を真っ赤にして怒鳴り付ける

「ナンパなんてここでするか!いい加減なこと言ってんじゃねぇぞ、このクソババァ!!」

「いい加減な事じゃないわよ!お母さんいっつも我慢して、アンタの臭い靴下を洗ってるんだからね!」

「そこじゃねぇよ!もう黙れよ」

「黙れとは何よ!母親にそんな口を利いて良いと思ってるの?!」

鼻を膨らませ罵り合う2つの顔は誰が見ても親子と分かるのは遺伝子の賜物だ


「あの…2人とも、とりあえず落ち着いてください」

見かねた女が声を挟むが争いが止む様子は無く、売り言葉に買い言葉で益々ヒートアップしていく

その様子に女の纏う空気が段々と変わっていくが、喧嘩に夢中な2人は気が付きもしない

「あの!!!」

華奢な身体から発せられたとは思えない迫力のある物言いに、2人の口の動きはピタリと止まる

「私はナンパなんてされてませんから!!!それと!配達で時間が無いんじゃないですか?!喧嘩している場合じゃないでしょ!!」

「「はっ…はい」」

豹変した女の言葉に2人の身体は合わせたように跳ね上がった










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