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中古屋探偵  作者: 小田川アキ
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探偵事務所 その3

「英国風だか何だか知らないけど勝手にうちの店から、この辺の置物とか棚とか持ち出して使ってんじゃねぇよ」

「勝手ではない。君の母上に許可は貰っている」

探偵事務所の室内は瀬尾の好みでもある英国風に纏められているのだが、平良の店に時々流れてくる掘り出し物を目敏く見付けては事務所に持って来ていた。


「店主は俺だ。俺は許可してねぇ。だいたい事務所をこんなに飾り付けたり、そんな高そうなスーツ着たって客なんて誰も来ねぇじゃん。見せる相手もいないのに格好ばっか気にしてアホか」

「この服装はポリシーだ!よく見たまえ、このスーツをイギリス生地特有のこのハリとコシ。現代的でありながら古き良き伝統を感じるだろう」

誇らしげに語りながら、身に付けているスーツを恋人の様にうっとりと撫でる


「で、それで腹は膨れるのか?今月の収入は幾らだったんだ?言ってみろよ」

「……それは」

都合の悪い質問に口篭り言葉が続かない

「僕だってちゃんと、その事については考えている」

思い出したようにそう言うとサイドボードから紙の束を取り出して平良の前に叩き付けた。

「なんだぁ?」

1枚手に取ると訝しげに視線を落とす


"瀬尾探偵事務所 どんな難事件も解決いたします

お気軽にご相談ください"

文言と共にこの事務所で撮影された瀬尾の爽やかな笑顔が添えられていた。


「なんだこれは?」

「手配り用のチラシだ。なんと僕は昨日このチラシを

駅前で配ったんだよ。だからもう大丈夫だ」

何が大丈夫なのか全く理解が出来ないが、目の前にいる男はチラシさえ配れば客が大挙して現れると言わんばかりだ。


「おい、この"どんな難事件も"ってなんだよ。」

「言葉の通り、国家機密や陰謀をさっそうと解決するって事だよ。」

瀬尾の目指す探偵とは子供の頃に映画や小説で見た、怪事件や国を揺るがす陰謀を解決していくアクションヒーローだった。お気に入りの話しが英国を舞台にした物が多かったせいで、英国かぶれの自称探偵が出来上がってしまったのだ。


「配る時はちゃんと裕福そうな人を選んで渡したから報酬も見込めると思うよ」

得意気に語る姿に、このチラシを受け取った人間はごく僅かであると平良は推察した。


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