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プロローグ
梅雨前線の影響から昨夜から激しい雨が降り続けている。時刻はまだ昼過ぎだというのに空は分厚い雲に覆われ辺りは随分と薄暗い。周囲の木々は猛烈な風に煽られ延びた枝がぶつかり合い、獣の唸り声にも似た音が人影の無い墓地に響き渡り、一つの影に足を竦ませる。
怖じ気付く心に抗い一歩、また一歩と踏み出す。小道は降り頻る雨水によって、まるで川のようだ。足を踏み入れると行く手を遮るように絡み付いてくる。
何かを確かめながら奥へ進むと、ようやくある墓の前で動きが止まった。白い指先はゆっくりと墓碑のくぼみを辿っていく、やがて影は大きくなり容赦のない雨が強く打ちつけた。