ネット上で善悪なんて、存在しない。存在するのは、『善であるふりをする人』『悪になって拡散したがりの人』だけ―。
初めまして、湊りょうと申します!
今回は処女作として、『正義法廷』を執筆させていただきましたっ♪
ネット社会の世界観をリアルに描けるよう、頑張った作品なのでぜひご覧ください!
なお、本作品は『エブリスタ』『アルファポリス』でも連載していた作品ですので、一度ご覧になった方もいらっしゃると思います!が‼『小説家になろう』執筆に当たり、大幅に改訂いたしました!
新しくなった『正義法廷』もお楽しみいただければ幸いです♪
今ってネットがあるしすごい便利だと思う。連絡だって簡単にできるし、感想とか考えとか自分をネットで拡散することもできる。でも、そんな「便利さ」だって、もし―悪用されたら?自分を容易に出しすぎて、危険な目にあったら?この話は、僕と麻織だけが知る、少しだけ長い物語だ―。
ジリリリリ・・。僕の朝は、騒がしい目覚まし時計で始まる。「うるせ・・」僕は足を使って目覚まし時計を止めると、布団の中にもぐりこんだ。
日曜日は好きだ。学校に行っていないという罪悪感にさいなまされないし、「仕事」だって短い。平日の睡眠時間を、日曜日に解消する―というのが僕の普段の生活。社会不適合者に堕ちた僕にとっては、これは普通のことだった。昼夜逆転、それは自分のために作られた言葉かってくらい、よく当てはまった。これで安眠できる―誰にも、邪魔されない。現実はいろんな人に邪魔をされる。僕の弱い心が、心の中に潜む悪魔が、僕を虐める。けれども、夢では―人でいられるし、邪魔は入らない。僕だけの楽園には僕だけしか入れない。だから―僕は夢に逃げ込んでいたんだと思う。
時計の針は10時を指し、あれから5時間たった。さて、ここから僕は別人になる。今までの弱虫が、一気に別人になるような―そんなイメージだ。ネットは便利だ。身元は勿論、顔も名前も明かさずに人とかかわりあえる。かつて僕を虐めていた奴らだって、今では僕を他人、寧ろあこがれているくらいだ。そう感じると、心の闇がとても晴れ晴れする。そしていつか、僕の正体を明かして、馬鹿にするんだ―。そう、お前らが僕にやっていたことを返してやるからな―。
話を戻そう。僕のいう「仕事」、それはアンチメディア、いわゆる炎上系ユーチューバーを叩き、アカウント停止させるグループだ。親には秘密。お給料は、リーダーの栞が払っている。お金持ちだけあって、悪くはない金額だった。これを知れば、ほとんどの人が羨ましいと思うだろう。でも、そんなに甘い仕事ではない。まず、大体、炎上系ユーチューバーはみんなの反応を楽しむ馬鹿が多い。だから、すぐ降参する奴もいれば、極限まで楽しみたいドMまでいる。めんどくさい仕事だけど、何より給料が悪くないし、仲間だって優しい。だから、この仕事を1年半続けていられたんだ―。
「あ、大和ー?繋がった」リーダーの栞は、電波が届いているか、確認しているようだ。「OK」「じゃあ、始めよう。アンチ対策会議を」秘書となる美紅は、仕切る役だ。「今回の議題は―デビルズ、という人についてです。知っている人は手を挙げてください」僕はさっと手を挙げる。このくらい当たり前だ。夜の時間を費やして、できる限りの情報を得ておく。「では、斎藤さん―簡潔に述べてください」「はい。まず、このデビルズという人は、人や物を差別する人です。以前、問題となった『佐村博差別事件』についてご存じの方もいると思います。ニュースでも大々的に取り上げられ、動画を見ていなくても名前だけ知っている―そのような人もいらっしゃると思います」「続けよ」「そんなデビルズの厄介な点としては―何を言っても応じない、という点です」「ただの餓鬼じゃない」栞は笑いつつ真面目な顔をして言った。「警察が捕まえるぞ、と脅しても―捕まえてみれば?って返されるだけで、まるで相手をされていません。時間と労力が必要になる手ごわい相手です。以上です。詳しくは、このリストを見てください」僕は自作のリストをチャット画面で送信する。「さっすが、大和頼もしいな」栞は晴れやかに笑った。僕は、頬を紅潮させる。「ほかに情報を提供してくれる人はいますか?」美紅ははっきりと言い放った。そこで、真面目そうなメガネ少年―楓が手を挙げる。「一ついいですか」「どうぞ」コホンと咳払いした後―「はっきり言って、デビルズは、ただ者じゃないと思います」楓はたまに不思議なことをたまに言う。「―というと?」「まず、何を言っても応じない―これだけで十分精神力が強いと思われます。それに一番気になったのは―デビルズが過去に虐待されていたことを明かしていた動画の時、目線が左上になっていました」「目線―?」意外な答えに皆戸惑う。「はい。母が心理学者で昔からそういうのを観察してきたので・・。要するにおそらくですが虐待されていた、というのは事実だと思います」
このメンバーの中で最年少だが、観察力は楓が優れているというのは今の発言で分かった。「でもよぉ。心理学なんて俺は信じねえぜ」過激派ヤンキーの鉄は、鼻で笑った。「・・つまり関係ないと?」「あったりまえだろ。そんなの嘘に決まってるだろ」癪に障ったのか、楓は―「では、例を挙げてみます」と意地を見せた。「例えば、待ちきれないことがあったとします。するとそわそわして、じっとしていなかったり、足で地面にリズムをとったり―それを計算して発言している人は、よっぽどです。これを踏まえている人ですら一般人はいないと思いますし。ちょっとした癖でもその人の性格などが見えてくる、と言えるでしょう」皆黙った。意地を張るようなのである程度は付き合おうと覚悟していたが、あまりにも完璧な説明なので沈黙が下りた。
パン、パンッ!美紅が手を打ち合わせる。「えー、では以上で・・、会議を終了いたします」いつの間にか3分経っていたようだ。「ご意見がある人はいますか?」誰も手を挙げない。「いないですね―?それではレポートは私がまとめるので、皆さんは解散してください」無言のまま、会議は終わった。原因は明らか。あの、楓の言った内容が―あの発言が皆の返事を困らせたみたいだった。「・・さーて」僕は大きく伸びをした。「吉野家の牛丼でも買ってくか」僕は階段を降り、靴を履いた。ドアを開けると、目の中にまぶしい光が飛び込んできたのだった―。
お読みいただきありがとうございます!
どうでしたか・・?拙い文章で大変恥ずかしいのですが・・(笑)
ネットで起こる『炎上』をテーマに描いた作品でしたが、反響が解らないため
コメント・いいね数にて作者の気分は変わる、かもしれません。
とりあえず、これからもよろしくお願いいたします!