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僕は別に次元の壁なんて超えていないんですけど……

作者: 凩

恋愛ジャンルにぶち込んでしまいましたが、見当違いかもしれません。

同じようなお話がありましたら申し訳ありません。調査不足であります。

ジャンルを迷い、もし続きを書くなら恋愛に成りそうという事でこのジャンルにしました。

深く考えず読んでいただけたら幸いでございます。





 東京都、秋葉原――その地名に貴方は一体どんなイメージをお持ちだろうか?


 恐らくだが、オタクイメージの強い場所と言う認識をお持ちではないだろうか?

 確かに今の秋葉原と言う場所は、アニメショップ、アイドル、メイド喫茶なる物が数多存在するとても個性的な都市だと言えるだろう。


 だからきっと、そのイメージも間違いは無いのだろう。


 かく言うところ、都市に割と頻繁に通っている僕というニンゲンは所謂オタクと言う人種だ。


 ただ、此処で一つ注釈を入れるとすれば、冒頭で上がったオタクイメージの其れとはちょっとだけ外れる人種でもあった。


 そもそもオタクと言う単語は、自分の好きな事柄や興味のある分野に傾倒しすぎる人の呼称である。


 だから、僕がオタクと言ったところで必ずしも、アニメ、ライトノベル、アイドル好きかと言うと、実はそうでもないのだ。


 確かに漫画は其れなりに観るし、好きな作品がアニメになったら凄く嬉しく思う。

 ただ、今期のアニメを片っ端からチェックしたりだとか、追っかけているアイドルがいるだとか、そういった事はない。

 

 ならば、どんな分野に傾倒しているかと言うと、それはレトロゲームであり、尚且つ弱電関係にであった。


 今でこそ秋葉原と言う都市はとても個性的で多様性にあふれる場所だが、ひと昔前までは電気・電子街というイメージの場所だったという話。

 故にそれに準ずる店舗は未だ多く点在し、だからこそ、僕はこの都市に割と頻繁に訪れているのだ。



 ……――思えばあの日も、僕は電子部品を求めて秋葉原へと赴いていた。



 主に僕を取り巻く環境が変わった日。


 僕が変わったのではない、これは本当に何の前触れもなく……

 否、前触れ自体はもしかしたら存在していて、ただ僕がそれに気が付いていなかっただけなのかもしれないけれど。


 兎にも角にも、世界の方がガラリと変わってしまって、それに伴って僕を取り巻く環境が変わってしまった話を、何となくしてみたいと思う。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ――五月初頭の某日


 大型連休が始まり世間が浮つくそんな中、僕は何時もの休日よろしく、何時もより少しだけ遅い時間帯に目を覚まし、寝る前に枕元へと置いたメガネを手に取り、あるべき場所へ誘った。


 都心近郊にある小さな戸建て、それが僕が住む家。

 父と母との三人暮らしであることもあり、別段不自由を感じる事は無い。


 眠気が残る為、多少ふらつきながら台所へと赴いてみれば、新聞を広げる父さんと今まさにコーヒーをカップに注がんとしている母さんの姿があった。


 世の中が大型連休に突入している事もあり、普段なら仕事の為に家を出ている父さんもその例に洩れず、のんびりと朝食を楽しんでいた。



「あら? (れん)、おはよう――って、あんた、寝癖で髪の毛凄い事になってるわよ?」



「あー、うん、そりゃ寝起きですから、おはよ」



「朝ごはんパンで良い?」



「――うん、それでいいよ」



 母さんとの他愛のない会話――きっとだが、パンが嫌だと言ったとしても、メニューが変わることはないだろう。

 もし変化があるとすれば、「じゃあ食べなくてよろしい」となるくらい。


 今日は出かける用事もあるので、出来れば何かお腹に収めておきたい――となればここでこの人に逆らうのは得策ではないだろう。

 此処は従順にしたがって置くのが吉である。



「飲むものは何かいる? コーヒーと、あと牛乳ならあるけど、いる?」 



「どっちも要らない、パンだけでいいよ」



「牛乳は飲んだ方が良いんじゃないのか? でっかく成れんぞ?」



 このタイミングで父さんの方が今日初めて会話に加わってきた。

 父さんがそんな風にちゃちゃを入れてくるのには、もちろんの事訳がある。


 まあ、簡単に言えば僕の背丈が、高校二年生の男子学生の平均と比べてもだいぶ低いからなのだが……


 新学期が始まってすぐ身体測定があったから、僕の知る自身の身体データの信憑性は抜群に高い。

 詳細なデータは言わないが、四捨五入をすれば百六十センチになる位という大雑把なことだけ言っておこうと思う。



「別に僕的にはこのままでも全然いいんだけどね。特に困ることもないし」 



「……普通男ならでかく成りたいと思うもんじゃないのか? でかい方が女の子にはモテるぞ?」



「蓮は綺麗な顔してるから、そのぼさぼさな髪の毛と野暮ったい眼鏡さえ何とかすれば、割とイケルと思うなーお母さん。その眼鏡が特別なモノだってのは分かるんだけどさ」



 言われて僕は何となく、眼鏡のツルを押し上げた。

 割と酷い近眼である僕にとって、このメガネは無くてはならないものである。


 コンタクトレンズが嫌いという訳では無いけれど、其れよりも圧倒的にこのメガネに愛着があった。


 傍から見れば一昔前の野暮ったい黒縁眼鏡――レンズだって今のモノに比べれば度の割に厚みだってある。

 正直機能性と言う面で言えばそこまで良くはない。


 ただこの眼鏡、フレームは総鼈甲の高級品―― 一点もので、同じ物を用意しようとすれば二十万円位かかるらしい。


 しかもこの眼鏡は大好きだった祖父が、生前使っていたものだ。

 

 祖父は亡くなる直前、この眼鏡を欲した僕の為にわざわざ度を入れ替えて僕にプレゼントしてくれたモノなのだ。


 正直何と言われようと、僕はこのメガネを変えるつもりは微塵もなかった。


 母さんもそれを分かっている為、あまり強くは言ってこないのだった。



 ――僕が押し黙った事で、我が家の台所は若干だが微妙な沈黙となってしまった。


 

 僕はそんな空気を換えるため、父さんへと話題を提供することにする。



「そういえば父さん、例のあれもうすぐ直りそうだよ」

 


「本当か!? かなり古いはずなんだが……因みに治すのにいくら位かかった?」



「そんなにかかってないね。ダメになってたのは電源用のアダプターと各カセットの電池、それと本体のコンデンサ位だから千円いかない位だね。昔のゲーム機ってこれでもかってくらい頑丈で正直びっくりした」



 僕が振った話題は、庭の物置に眠っていた父さんの私物――SFCと呼ばれる昔のゲーム機の事だった。

 何でもそいつは父さんが学生時代にお小遣いをためて購入した思い出の品らしい。


 母さんに言われて渋々庭の物置を掃除した時に発見したものだ。


 有名なハード機で、差し込み式カートリッジのゲームソフトが何本も一緒に出てきた時は、正直埋蔵金を発掘した気分だった。


 レトロゲームが元々好きで、中古のSFCハード基を買おうかどうか本気で悩んで矢先の出来事だったので喜びも一入だったのだが、如何せん年代物のゲーム機である。


 そのままテレビにセットしてみてもウンともスンとも言わず、レストアが必要だったわけだ。


 だが、実際ゲーム機の中を覗いてみて驚いた。

 最新のゲーム機なんかと比べると頼りなくなるくらい部品密度スッカスカの基板が一枚。

 だからこそ不具合原因の発見も驚くほど簡単だった。

 所謂ところのコンデンサの容量抜け――二十年近く前の代物であるからこればかりはしょうがないと言えばしょうがない。

 

 逆に言えば本体の不具合はそのくらい、逆にこのハード機の頑丈さにも同時にビックリである。



「俺的には治る事にびっくりなんだがな、お前の機械いじりも凄いもんだな――そうか、直るのかあれ」


 

「うん、コンデンサだけはまだ交換してないから、今日あたり秋葉に買いに行くつもり、多分明日には直ると思う」 



「じゃあ明日の夜あたりに久しぶりに遊んでみるか! おい蓮、志乃(しの)ちゃんにも声かけてみろよ? あの子も好きだろゲーム」



 志乃は我が家の隣に住む明石(あかし)家の姉妹の妹の方だ。

 俺より一つ下で、世間一般で言うところの幼馴染という奴である。

 家族ぐるみの付き合いさることながら、志乃は僕の影響もあって結構なゲーマーだった。


 まあ、元をたどれば俺がゲーマーなのは志乃の姉の明日香(あすか)姉さんの影響なのだけれども……


 歳の離れた姉さんは、そのゲーム好きが高じてゲームの製作会社に務めるまでになっていた。



 ――閑話休題。



「志乃には父さんより先に言ってる、乗り気だったから多分来ると思うよ」



「そうか! いやー今から楽しみだな!」



「折角の連休なのにこの親子ときたら……もっとどこかに遊びに行きたいとか無いの? 蓮も、其れこそ志乃ちゃん誘って遊びに行きなさいよ」



 流石に高校二年生ともなれば、家族旅行などに魅力はあんまり感じない。


 それに、何故我が母親はそこまで志乃と関わらせようとしているか知らないが、そっちも実は不可能案件であることを僕は既に知っていた。



「志乃なら多分家から出ないと思うよ? 何でも四月の終わりに待望の新作ゲームが出たみたいで、篭り切りでゲームしてるみたい」



 しかも相当ハマっているらしく、連日のようにどのシーンが良かったやら、誰々が良いキャラしてるなんて連絡がスマホの連絡用アプリを通じてひっきりなしに届いている。

 初めの方でさえ結構大雑把な返信をしていたけれど、今の段階ではほぼほぼスルーを決め込んでいた。



「は~、ヤダヤダ、揃いも揃って良い若い者が引きこもって! こんな調子で日本はどうなっちゃうのかしら! もう知らないっ、私は今日お友達と出かけてくるから、もう行くわ!」



 そう言って母さんは台所からフェードアウトしていった。

 そういえば今更ながらに気が付いたけれど、そんな母さんはよそ行きの恰好を決め込んでいた。



「いや、だから僕は今日出かけるってさっきから言ってたと思うんだけど……」



 そんなどこか子供っぽい母さんの言動に、僕と父さんは思わず顔を合わせる。

 父さんは僕を見ながら「ダメだこりゃ」とでも言わんばかりの表情で肩を竦めていた。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 結局のんびり支度をして、件の秋葉原と言う街に到着したのはもうすぐお昼に差し掛かろうとする時間帯だった。

 流石と言うかなんというか……普段の休日でも人の溢れかえっているこの街だが、世が正に大型連休の真っただ中という事もあり、大いに人でごった返していた。


 ……――季節は百代の過客にして、行き交う人もまた旅人なり。


 おっと、何となく思い出しただけなので本当に何でもない思考である。


 それはさておき、沢山の人溢れているが、小柄であればこういう時に便利である。

 人と人の隙間を通り抜けるのは案外容易いし、小回りも効く。


 まあ、逆を言えば隙間もないほどごった返した人並み(例:満員電車等)となると、それがアダとなって人並みに流されやすくもあるのだけれど……

 今回の人並みではまだすり抜けられるだけの余裕があった。



 本日は実に晴天なり――近年五月の初頭の秋葉原で天気が晴天となれば大体の場合結構な気温になる。


 冬季の間お世話になった上着の出番も今日は無し、出かける間際、衣装箪笥からジッパータイプの半袖パーカーをチョイスしたのは正解だったと言えるだろう。


 服装は割と無頓着な僕だけど、この半袖パーカーはお気に入りで種類は違えど、暖かくなれば外出時には何時も身に付けていた。


 

 パーカーのフードを揺らしながら勝手知ったるなんとやらと言わんばかりに、人波をすり抜けて目的の電気街へと歩みを向ける僕。



 しかしながらその軽快だった歩みは、駅を出てそんなに立たないうちに止められることになった。



「あのっ! すみませんっ!」



 唐突に投げかけられる声――

 この人波であるためその声の対象はもしかしたら僕ではないのかもしれないけれど、その声を聞いた僕は反射的に立ち止まっていた。


 声のした方へと振り向いてみれば、そこにいたのは大学生か、はたまた新卒社会人さんか――

 恐らくだが、僕よりも四、五歳程度年上のお姉さんがいた。


 ファッションの事は良く分からない僕だけど、初夏かと言わんばかりのこの陽気の中、トレンチコートを着込んでいたことがやけに印象的だった。


 ――ばっちり目が合った。


 貴方が呼んだのは僕かと、自分の事を指さしてみれば、お姉さんは嬉しそうな顔をしてコクコクと小さく頷いている。


 何事かと思いそんな彼女に近寄ってみれば、彼女は右手にスマートフォンを握りしめていた。



「あのっ、写真、いいですか?」



 この状況が指し示すこと、それを一瞬だけ考えて、ああなるほどと思った。

 と言うのも、僕たちが今いるこの場所と言うのが、一時期結構な話題になった場所だったからだ。


 確か、タイムマシンが主題となったアニメがあって、目の前のビルが舞台となったとか。


 正確にはそのビル自体は老朽化か何かで立て直しになってしまって、今の其れとは違うらしいのだけれど、そのアニメが好きな人にとってはこの場所は感慨深くあるのだろう。


 つまり、このお姉さんも、観光地で道行く人にカメラのシャッターをお願いするのと同じような理由で声をかけてきたのだと、そんな風に思ったわけだ。


 ――そういう訳なら別段断る理由もない。



「あ、はい、別に良いですよ。あのビルをバックで良いですか?」



 そう言ってお姉さんのスマートフォンを受け取ろう手を伸ばした僕。

 

 だが、そのスマートフォンは僕の手に渡される事は無く、するりとお姉さんの手をすり抜け、アスファルトの上へと落下した。


 普通自分のスマートフォンを落下させてしまったとしたら、慌てて拾うのが普通だろう。

 ――少なくとも、僕はそう思う。


 だが、そのお姉さんはどういう訳か、スマートフォンを落としたその状態のまま固まっている様だった。

 そんな奇妙な行動を疑問に思い、顔を上げる僕。



「えっ?」



 だが、目の前のお姉さんは目を見開き、驚愕を露わにした表情で僕の事を見ていた。

  


「えっ、うそ……、声までまんまレン君じゃん……」



「……確かに僕の名前は蓮ですけど、どうして貴方が知ってるんですか?」



 内心とても戸惑いながら、右手で首を撫でる。

 小学生でもあるまいし、自分の持ち物に記名シールを張り付けている訳など無い。


 

「!? 名前や戸惑う仕草まで同じっ!! あれ、これは夢? それとも画面から出てきちゃった系? どちらにしても尊い――」



 いよいよ涙目にまでなってくる目の前のお姉さん、もう少しで拝みだしそうな気配すらあった。


 ――正直ドン引きである。

 


「あの、すみません。僕用があるので何もないなら失礼しますっ」



 得体のしれない人には関わらないのが吉である。

 慌てて僕は踵を返し早歩きで歩き出した。


 ――後ろで、「待って!?」という声が聞こえた気がしたが、僕は聞こえないふりをしてその場から離れた。  




 ……


 …………


 ………………



 奇妙なことはあったけれど、その後は特にこれと言って変わった事もなく予想通り購入した電子部品でゲーム機が直った事もあって、そのことをすっかり忘れてしまっていた。


 今思えば、翌日志乃がうちに来た際、僕を見るなり「お姉ちゃんいい仕事してるなぁ」やら、「でもやっぱり本物の方が良いなぁ」なんて事を言っていたのも、それに関連する事だった。


 偏に大型連休中に僕が殆ど外出しなかったが故に気が付かなかったことだった。


 だがまあそれは、気が付かなかっただけであって、既に世の中には出回った後の事。

 逆に言えば、知らなかっただけ大型連休の間はある意味幸せだったのかもしれない。



 ――だが、その事実を気が付くときは唐突に訪れる事になる。


 ――そしてそれは大型連休終了後の初日の登校日の事だった。




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 ――大型連休終了後、登校日初日


 夏休みや冬休み等の長期休業の後は、始業式なるイベントがあるためになんだかんだで授業の時間が少なくなるものだが、五月の大型連休の後と言うとそれが無い。

 故に、休みでだらけ切った後に訪れるフルタイムの授業に打ちのめされ、殆どの生徒がグロッキー状態とされたと思われる。


 少なくとも、僕はそうだった。


 それでも何とか授業を乗り切った放課後、その疲れた体を引きずって所属している部活動の部室へと向かった。


 普通教室棟から渡り廊下を通り、特別教室棟へ――部活動で文科系の部室は、大体がこの建物に密集しており、僕が所属している部活もそれに習っていた。


 ――だが、それも後一月持つかどうか。


 僕が所属する部活動――弱電部は所属部員一人という、名前の通り弱小部活動である。


 元々もの作りを主体として活動を続けていた我が部は、昨年めでたく四人の諸先輩方がご卒業されて、廃部の危機にさらされていた。  


 この五月末日までにある程度の新入部員を確保できなければ、その事実は免れないものになってしまうのだが、正直今から部員が確保できるとも思えない。

 故に静かに終わりの時を待つ――それが現在の我が部の内情だった。


 まぁ、廃部になったらなったで別にいいかと、現部長である僕自身が思ってしまっているあたり救いようが無かったりする。



 ――それはさておき、折角部室に来たので活動を行おうと、僕は部室の工具棚から半田ごてを引っ張り出した。



 去年の今頃だったら、今年の文化祭に向けて展示物の内容を話し合っていたものだが、今は昔。

 今年は別に決める必要の無い事であったから、個人的な作業を行っても別に構わんだろうという事で、SFCのゲームソフトカートリッジの交換していなかった電池交換をすることにした



 カートリッジ式のゲームソフトの場合、その中にボタン式の電池が内臓されていて、この電池の電力でセーブデータの保持を行っている。

 だからロールプレイングゲーム等のレトロゲームを行う場合は、この作業が必須になってくることになる。


 だが、専用ドライバーを使ってカートリッジ内部の基板を取り出し、いざ電池交換を行おうとした矢先、我が部室を強襲した乱入者によってその作業は強制終了させられることとなっ


た。



「先輩っ、赤羽(あかばね)先輩っ!! やっと見つけましたっ!!」



「ん? ――ああ、芹沢(せりざわ)さんか、どうしたのそんなに慌てて――、そういえば休み時間中も僕の事探してたみたいだね」



 部室の扉を勢いよく開き、同時に飛び込んできたのは一つ年下の後輩で、お隣のPC部所属の芹沢夏希(なつき)さんだった。


 芹沢さんは志乃のクラスメイトで、同じくPC部に所属してる志乃と仲が良く、そのこともあって僕とも顔なじみだった。 



「もうっ、何度教室を訪ねてもいないんですから避けられてるのかと思っちゃいました! って、それはいいんです。それより先輩っ! どうして教えてくれなかったんですか!!」



「え? 教えてくれなかったって何のこと?」



「またまたっ! とぼけちゃって、先輩もお人が悪い! したんでしょう? 声優(・・)デビュー( ・ ・ ・ ・)っ、先輩かなり美声ですから、私的には大満足です。ようやくその気になってくれて私は嬉しいです」



 頬を上気させながら迫ってくる芹沢さん。

 緩く編んだ三つ編みに眼鏡姿という、典型的な委員長スタイルの彼女はしかし、独特の情熱を秘めている人だった。


 自分では良く分からないが、彼女や幼馴染曰く、僕の声は其れなりに良いらしく、良く話のタネに声優になってみればと言われた事を何となく思い出す。


 とは言え、芹沢さんの言動の真意がさっぱりと分からず、こちらとしては困惑するばかりだった。



「えっと――ゴメン、何の話か本気で分からないんだけど……」



「いやいや、これですよこれ! 初めて見た時は我が目を疑いましたよっ!? まんま先輩なんですもん、事前には全く情報が無かったのでノーマークだったんですけど、先輩のルートはシナリオも神がかっていて最高でしたよっ」



 そんな事を言いながら取り出してくるのは、彼女のスマートフォンだった。

 何やら操作をしたかと思うとテレビ画面を移した画面が映し出された――如何やら、何かしらの動画らしい。


 僕は首を傾げながらもその動画に目をやった――



 ――


 ――――


 ―――――――


 

 ……――なんだこれ?



「……――なんだこれ?」



 思わず思った事をそのまま言葉に出してしまった。


 画面の中には僕がいた(・ ・ ・ ・)

 

 正確には、僕に()似た何か( ・ ・ ・ ・)がいた。

 3Dのポリゴングラフィックで、アニメ調にデフォルメされているけれど、それでも僕っぽいキャラが、僕と同じような声でしゃべっていた。



「あれ? 先輩のデビュー作じゃないんですか? このキャラ主人公の弟で、攻略出来ないのが残念って思ってたら、まさかの義弟設定で隠し攻略ルートが発見されて、結構巷じゃ大騒ぎになってますよ。って、声入れした本人には言うまでもないのかもですけど、おっとそういえば――ちょっと失礼!」



 茫然としていた僕に対し、凄く嬉しそうに話しかけてくる芹沢さん。


 あまりの事態に魂が抜けかかってた僕は、突然の芹沢さんの行動に反応できなかった。

 

 ――瞬間、眼鏡を奪われ前髪をかき上げられる。



「えっ、やばっ!! 初めて見たけど、本当にそのまんまだこれっ!! あれ? 先輩って画面から出てきたんですか? ん? この場合は画面に入ったの方が正しいんですかね?」



「んな訳ないでしょ!? ちょっ、眼鏡返してっ!! それと、このゲームってどこの会社で作ってるの!?」



「ああん、それで隠すなんてもったいない!? ってあれ、割とまじな反応ですね? って事は本当に先輩関係ないんですか? ソフトは○○社から出てますけど……」



 会社名を聞いて疑問が線でつながった気がした。

 聞き覚えのあるなんてものじゃない、その会社は他ならない、明日香姉さんが務めている会社だった。



 僕は慌てて自前のスマートフォンを取り出し、件の人物へ電話をかける。

 まだ定時前で、普段であればこんな行動をすることは無いのだが、知った事じゃない――!


 

『――お掛けになった電話は現在電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為かかりません』



 ……――くそっ! 



「――ゴメン芹沢さん、僕は急用ができたから帰らなくちゃいけないからっ、それじゃっ!」



「あっ、ちょ、先輩っ!? 鍵とかどうする――」



 背後で騒いでいる後輩を尻目に、僕は駆けだした――

 



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ――後日談


 あの後お隣の明石家を強襲した僕だったが、肝心の明日香姉さんは捕まらなかった。

 だが、代わりに捕まえた志乃から詳しい話を聴き出すことに成功する。


 ――なんでも僕そっくりのキャラクターは想像通り、姉さんが企画しねじ込んだキャラクターであるらしい。


 そのキャラデザから始まり、シナリオを試行錯誤したとのこと。


 キャラクターはフルボイスとなっていてどうやって用意したかと思ったが、これについては何と、完全オリジナルの合成音声で作り出しているらしい。


 ――もはや狂気の沙汰である。


 志乃曰く――明日香姉さんは僕の事を大いに好いており、僕と言う存在を世に広めてたいと思っていたとのことらしい。


 マジで勘弁してほしい。


 ……――これって間違いなく訴えたら勝てるレベルの案件ではないだろうか?


 人の噂も七十五日と言うけれど、これって七十五日程度で沈静化する案件何だろうか?







 ――因みにこのゲームソフトはと言うと、僕の期待を裏切り空前の大ヒット作となって後にアニメや実写化ドラマ化が為されることとなる。


 その折、噂が広まり――僕と言う存在が明るみになって、頼みもしないのにアニメ声優やドラマ出演を打診されるのは完璧な蛇足であったことをここに記す。



 ――本当に勘弁してほしい。



 そう考えながら、僕は今日もそのことで言い寄ってくる人たちにお決まりのセリフを口にするのだった。





「――いや、だから、僕は別に次元の壁なんて超えていないんですって!!」





 ――to be continued?



後日、各人物紹介等追記するかもしれません。

あとネタ的な話なので多分続きませんのであしからず。



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