開封
「読めませんでした」
はて、マニュアルとは一体どれほどの殺傷能力があるものなのか。10ダメージ未満の分厚さなら読まんこともないが。どこにあるのか。
「コホン、自分の名前言える?」
マニュアルについては見放されたようだ。流れるような、それでいて大胆な話の切り替えに驚きを心で叫ぶ。いや、それよりも。
なんですか、神といえどあまりなめないで頂きたい。
「波流です」
「よろしい。次に、なぜ「神の名前は?」」
やられたので、僕が話を切る。するとどうだろう。一瞬ムッとされたが、だんだん顔がほころぶようだ。不思議。
それはよくて、自分だけ名乗るのはフェアじゃないからね。個人情報だから、個人情報。…いつまでニコニコしてるんだ。
「そんなに神っぽいかな~?」
それはそうだろう。後光の差してますし。羽衣来てるし。多少幼いかもだけど、おそらく年上のオッサン。…ん?
気づいてしまった。
「ねえねえ、何処でそう思ったの~?」
では、そのリクエストにお答えしよう。耳を澄まして聞くといい。
「ねえ~!」
「後光の差したオッサンだから」
おお、オッサンと言う瞬間、神が萎むようだ。「オッサン…オッサン?オ(↑)ッサン…」などと呟き始め、かなりのパニックに見える。いや、オッサンうるさい。だってそうだろう。僕の神というもののイメージがそれなんだから。それに、後光さして、はらりしそうな服来てる変質なただのオッサンかもしれないだろう?その可能性を考えると、なんとも言えなくなってきたな。
「私はオッサンじゃない!」
「年齢は?」
「肉体年齢7歳、霊魂年齢約1050年だよ。」
「やっぱりです」
「正真正銘神だよ!!」
大切なのは中身を知ること。改めてそう思います。外見だけならただの男の子だからね。危ない危ない。
「もう…はいこれ。ちゃっちゃと書いて!」
フレンドリーな神はどこえやら。例えるなら、友達から店員になった感じだろうか。いや、態度は逆か?
渡されたのは、アンケート用紙を1枚。項目の方はと言うと、【名前】、【何故ここに来たのか】【使うならどれ】【欲しいものほどれ】などなど大半がもしもの話で…いや、名前と最後以外はすべてそれ系のものだった。
「書いた?」
「はい」
二つ返事で返せば、神は、用紙を僕の手元から優しくぶんどった。それとほぼ同時に用紙を燃やした。そんな馬鹿な。僕の心情などしらぬと言わんばかりに神は遠くを見つめて…ん、抜け殻?
「なるほど。じゃあマニュアルはいらないね」
「っ!」
いきなり喋らんでください。心臓に悪い。
「合格!それじゃあ、またね!」
「あ、どうも、また。」
…………え
目の前が真っ白になった。…そういえば名前聞いてないな