2+5 依頼2
テキストが表示されると別ウィンドウでRが開かれる。別ウィンドウの画面を見てみると、酔孤のユーザー名で自分とほぼ同じように表示されていた。
「なんだ、もう登録が終わったのか。紙で書く必要がないのは便利だな!」
確かに便利だが、恐ろしくもある。酔孤のあの言葉だけで、しかもマイク無しのPCで登録が完了したのだ。しかしそれとは別の恐ろしさが自分を襲っている。
「よし!登録も終わったことだし、下に降りるか。」
酔孤がそう言って階段に向かうのと同時に敬も席を立つ。階段を降りていくと、普段と階段の形が違うのに気づく。いつもは短めの螺旋階段のような形なのだが、直線状の階段に変わっている。しかし2階の部屋の扉の位置や階段の場所は全く変わっていなかった。
階段を一番下まで降りると、扉が目の前に現れる。扉を開けると自分が知っている空間とは別の場所に出た。きれいなカウンターの奥に見える厨房。テレビで見るような業務用冷蔵庫も見える。壁にはよくわからない文字が書かれたコルクボードが2枚、依頼が自由に貼れるようにか、釘が左下に刺さっている。テーブルも多くなっている。メニュー表もテーブルの上に置いてある。近くに寄ってメニューを開くと、扱っているものがすべて書かれていた。
「敬、とりあえず部屋のことは後にして開店するぞ。」
酔孤が開いた元玄関は、扉の目の前にマットが置かれているだけの簡単なつくりになっていた。
「お、開いた開いた。」「依頼は…まあ、さすがに初日には無いよな…」「ビール!ビール!」
「まずテーブル座ろうぜ!」「すいませーん。枝豆(小)くださーい。」「外の看板なんて読むんだろ。」
「依頼しに来たんですけどー」「村をどうか!どうか!」「ここの討伐者はどこだ?」
一瞬で騒がしくなる。もちろん2人じゃ何十人も相手にできない。こんな時にマアスがいればと思う。
「依頼をしに来た方は並んでください。受付を済ませてからそこのボードに依頼内容を書いてから貼ってください。依頼を受けに来た方はそこのボードから依頼内容の書いてある紙をとって依頼に向かってください。」
少し大きな声で話すと辺りが静まり返る。この内容はカウンターに書いておこうと考えているうちに、次々と依頼が来る。スライムやら、顔が青ざめた鳥人の退治、ゲーム序盤でレベル上げにお世話になるやつらの依頼は何十件も来たり、精霊がいるとかいう森の探索依頼。ほかにもたくさん来た。依頼が来るたびに、銀貨や金貨がカウンターに積まれていく。紙幣が一枚もないのが恐ろしく感じる。
時間がたち、だんだんと落ち着いてくる。ある者は会議をしたり、ある者は仲間を組んで依頼をこなしに向かっていった。
「なんだこれ―――」
目に留まった依頼を、軽く打ち付けられた釘から千切る。
内容 人食いの化け物を退治してほしいです。
起点ができたぁ!