プロローグ
面接にしては広すぎる室内。
鏡のように磨かれた大理石の床、天井に煌めく豪勢なシャンデリア。壁際には名だたる画家達の名画がバランス良く飾られている。
座り心地のとびきり良さそうな、格調高いデザインの椅子に堂々と座るダンディな男性は、読んでいた1枚の紙から顔を上げるとゆっくり口を開いた。
「君、ええっと……なんて名前だったっけ?」
「レオナルドと申します」
「ああそうそうレオナルドくんね。おめでとう。君、採用だから」
「ほ、本当ですか!?」
目の前でニコニコと人当たりの良い笑みを浮かべているのは、なんとこのヴァルト王国を治める国王、アルフレッド・ウィル・カーティス様だった。
「あ、ありがとうございます! 王様の名に恥じぬよう、精一杯頑張ります!!」
そう言って、俺はオデコが膝にくっつくんじゃないかという勢いで頭を下げる。良かった!! これで家族5人、安心して暮らしていける!!
「さっそくで悪いがレオナルドくん。……いや、勇者レオナルド」
「はい!」
国王様は口元の前で軽く両手を組むと、真っ直ぐに俺を見つめる。その威圧感に、俺はごくりとツバを飲んだ。
「うちのお姫様を迎えに行ってくれないかな? 魔界まで」
国王はこてん、と可愛らしく首を傾げながら言った。
「…………は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、俺はその場で石のように固まった。