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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
13歳

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38:お隣の領地へ

 最近知った話だが、近頃のハークス伯爵家の求人倍率はものすごく高いらしい。

 コックが作る美味しいまかない料理に、自由に使える温泉、子供の教育もできるし、運が良ければ試作品の石鹸や化粧水をもらえる。

 などなどの特典が、人々の目を引いているようだ。

 従兄のリュゼが質の悪い使用人の入れ替えを行なった後は、使用人たちとの関係も比較的平和である。


 借金が増えてしまったが、友人のノーラの領地で取れた泥や鉱石を使って、私は新たな化粧品開発に勤しんでいた。

 今度作るのは、ノーラの領土と共同で作るボディーパウダー。

 滑石という鉱石を砕いたものと、トウモロコシから取れるでんぷん、精油を混ぜると作ることができる。これを使うと、汗のベタつきを抑えてサラサラした素肌を保てるのだ。


 もう一つは、ミツロウを使ったリップクリーム。ミツロウとは、蜂の巣の材料で、ミツバチが分泌する成分の一つだ。蝋燭や床のワックスがけに使われているが、保湿成分に優れていて化粧品としても使える。

 過去に自分用に一つ作ったことがあるが、ブリトニーのガサガサでひび割れた唇さえプルプルになったので、きっと売れるだろう。


(今は、ハチミツを直接唇に塗っている人が多いみたいだけれど、やっぱりベタベタするものね)


 夜は、夢遊病で厨房にたどり着くのを防ぐため、とりあえず両足を縛って眠ることにした。

 今のところ、拘束を解いてまで厨房に入った気配はない。しばらくは様子見だ。

 リュゼのレモン畑の方も順調で、きちんと伯爵領に根付いているとのこと。

 私の希望していたレモンヨーグルトもできた。さっぱりした後味で、売れ行きもまずまず好調らしい。


 あれから、マーロウ王太子やアンジェラからの連絡はない。リュゼと王太子は手紙を出し合っているみたいだけれど、私に関しては諦めてくれたようで何よりだ。


(うん、そっち方面に関しては平和だな)


 しかし、別の方面では完全に平和とはいえなかった。

 祖父の借金の相手……お隣の領地のアスタール伯爵に会わなければならないのだ。

 伯父と伯母がまだ使っていないぶんの金は、リュゼが回収して返済したが、まだまだ返せていない金がある。従兄曰く、一度、顔を出しておいた方が良いとのこと。


(たしかに、お隣の領土とは良好な関係を保っていたいものね)


 というわけで、私とリュゼは、お隣のアスタール伯爵領へ向かうことになった。

 アスタール伯爵領の次男、リカルドは現在王都の学園に通っているので領地にはいない。

 馬車の中、向かい合わせに座った私とリュゼは、これから行く先について話をする。


「ねえ、リュゼお兄様。私まで、お隣の領地に行く必要はありますか?」

「あるよ。屋敷に引きこもってばかりだし、そろそろ外の世界を見て回った方が良いと思う。外といっても、行ったことのある隣の領地だけれどね」

「アスタール伯爵とは顔見知りですし、安心ですね……」

「ついでに、あそこの長男にも会っておくと良いよ。僕と同い年で、ちょっと繊細な男だけど……独身だし」

「……嫌だわ。リュゼお兄様の節操なし」


 次男の代わりに長男を狙えとでも言うのだろうか。


「彼の名前はミラルドというんだ。病弱で部屋に引きこもっていることが多いから、結婚後はブリトニーが伯爵家の実権を握れるかもしれないね」

「……それが狙いですか、リュゼお兄様。そんなことをしても、私がお兄様に有利に動くとは限りませんよ?」

「ふふふ、言うようになったねえ、ブリトニー」

「ぐふふ……」


 ……言うのは自由だ。

 

(とはいえ、リカルドの兄だから、女性の好みも似ているかもね)


 結婚以前に婚約すら拒否されるに違いない。


(私は太ったままだし)


 夜中に足を縛って眠るようになって、少しは痩せた気がするけれど、外見はまだ白豚令嬢だ。


「そういえば、リカルドに授業内容の横流しをしてもらうらしいね」

「……よくご存知で。数日前にさっそく手紙が来ましたよ、興味深い内容でした」

「リカルドは、僕に色々相談してくれるから。なんでも筒抜けなんだ」

「……左様でございますか」


 約一日後、私とリュゼを乗せた馬車は、アスタール伯爵家に無事到着したのだった。

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