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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
18歳

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229/259

229:未来の夫、ダイエットプランを提案する

 そうして、真珠の件で責任者との話し合いが始まる。

 彼らが日常的に使用する応接室へ呼ばれ、私はリカルドに相談していた話を切り出した。

 最初はランク分けが細かいと文句を言っていた責任者だが、きちんと説明した甲斐あり、最後には折れてくれた。

 

 真珠貝にはいろいろな種類があるが、アスタール産の真珠貝は「あこや真珠」と「淡水真珠」という二種類だそう。一つの貝からたくさん真珠の採れる「淡水真珠」よりも、「あこや真珠」の方が希少で価値が高い。

 

 真珠は真ん中に核が存在し、周りを層が覆っている。

 この層は、真珠が貝の中に長くいればいるほど厚くなり、中心の色が濃く見えるようになるのだ。光沢が強く、厚ければ厚いほど価値が上がる。

 傷や突起がある真珠は、価値が下がる。

 色つきの真珠は、色によっては希少で高価なものになる。

 そういう基準を設けた。

 

(そして、形が悪く商品にならない品はより分け、アクセル様に売りつける……。侯爵家だし、お金は持っているだろうから、安売りはしない)

 

 責任者やリカルドから許可が下りたので、屋敷に戻ってアクセルに手紙を書く。

 こちらの窓口は、私がアクセルと会うことに断固反対したリカルドだ。

 やってくれるのなら、彼に任せよう……

 事務処理を終えたタイミングで、リカルドが部屋に来た。

 

「ブリトニー、運動の時間だ」


 私のダイエットをサポートしてくれる彼は、運動や食事にも気を配るのだ。

 とても心強い。

 

 今は、苦しくなく手軽に続けられる体操や、無理のない範囲でのランニングが中心。もう少し痩せてきたら、激しい運動に移行できるけれど、まだ足に負担がかかるので。

 運動をするのも、食事をするのも、一人ではないので耐えられる。

 リカルドが痩せすぎにならないか心配だけれど、彼は食事を自分用に調整しているので今のところ大丈夫だった。

 

「ふぅ、今日のノルマ達成! 部屋に戻って黒豆茶でも飲もう」


 農業が盛んなアスタール伯爵領は、黒豆まで採れてしまうのだ。黒豆は美容にいい。

 血を補い、血行をよくしてくれるし、シミやソバカス予防にも効くのだ。気分を安定させる働きもあり、むくみを予防する漢方にもなる。

 

(西の国で栽培していなければ、売ってみようかな)

 

 アスタール伯爵領では、まだまだ私の働きは評価されておらず、リカルドの婚約者にすぎない一令嬢だと思う人も多い。

 リカルドが改善してくれているものの、ハークス伯爵領でのようにはいかない。

 私自身、もっと領地の人から認められる必要があるのだ。

 

(そして、結婚式までに痩せなきゃ……しんどいな)

 

 小さくため息をつくと、まるで私の心を読んだかのように、リカルドが話し始めた。


「どうした? 運動がきつかったか?」

「ううん、違うの。さっさと痩せなきゃと思うと気が重くて……また、リバウンドしないかも心配で」


 長椅子に腰掛けたリカルドは、何かを考えるように目を細めた。


「ブリトニーが、何度もリバウンドを繰り返すのは、今までのダイエット方法に限界が来ているからだ。お前は完璧主義が過ぎる」

「私、適当だけど」

「毎回、自分の限度ギリギリの高い目標を設定しすぎていると言うべきか? だから、それを達成できない危機が訪れ、想定外のことが起きたとき、焦って混乱する心を静めようと過食に走る」

 

 身に覚えがありすぎるぞ……


「その結果、自己嫌悪に陥り、ダイエットを投げ出して、ストレスから大量に食べてしまうんだ」

「リカルド、私の心が読めるの!?」

「読めないが、ブリトニーの行動は間近で見てきた」

 

 確かに、彼はハークス伯爵家へ来ていたので、私の行動パターンを毎日目にしていたはず。

 

「俺はダイエットの目標値を下げることを勧める。挫折や、想定外の事件が起こる可能性を予め含め、無理がなく確実に成功できる範囲にするんだ。今のブリトニーに足りないものは自信だから」

「自信?」


 確かに自信は持てない。もう、ずっと昔からない。

 自分で決めたルールさえ守れず、すぐ太ってしまう意志の弱い私なんて大嫌いだ。

 

 今までの私は、ストレスに耐え、急激に痩せる苦痛なダイエットを続け……そして、気が抜けたりストレスに晒されたりしては、リバウンドを繰り返してきた。


「複雑だな。俺はこんなにもブリトニーを頼りにしているのに、お前本人が誰よりも自分を認めていないなんて」


 そう言われても、何度ダイエットに挑戦しても、白豚に戻っている事実は覆らないわけで……自分の惰弱さに、ほとほと嫌気がさす。


「今回のダイエット、全面的に俺に任せてもらおうか」

「で、でも……」

「とにかく、今までのような、心に負担のかかるダイエットは止めて欲しい」

「リカルド……」


 わかったな、と言う彼は、私が反論する隙なく口づけてきた。


(喋れない~!)

 

 まんまと彼にしてやられた私は、「了承だな」と笑うリカルドを前に、はくはくと声にならない声を上げることしかできなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自信の無い傲慢穂満令嬢に転生してしまった「私」の変化と物語の中で生き生きと活動する搭乗者の行動が目に浮かびます。 [気になる点] 危機を脱出したブリトニーは、幸せで充実した生活を遅れるのか…
[良い点] コミックから入って最新話まで一気に読ませていただきました。 主人公が努力で少しずつ歴史(ストーリー)を変えていってるのが好きです。特に元設定では自分を窮地に陥れたはずの相手にざまぁ展開が無…
[一言] 楽しい楽しいリカルドブートキャンプの始まり始まりー!(笑)
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