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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
16歳

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140:カミングアウトと面倒な二人

 あの後、再び松葉杖を確保した私は、避難したノーラたちから話を聞いた。

 それからすぐ、自分の過去の記憶について知っている身近な人物に連絡を取る。

 今回は、リカルドにリュゼ、そしてエミーリャに集まってもらった。

 事情を知らないリュゼには、私から説明する。


「……というわけで、メリル殿下は、街道関連で良からぬことを考えていた輩に遭遇してしまったんです。街道を是が非でも自領に通そうと、有力者に圧力を掛けている貴族の話も聞いてしまったみたいで。中には悪質な脅しもあったとか……ノーラは、彼女に巻き込まれました」


 私の簡単な報告を受けて、リュゼが端正な顔をしかめた。


「なるほど」

「捕らえられた兵士は、アンジェラ様経由で尋問官に引き渡されましたけど」

「……ああ、彼女、尋問官とは親しいらしいね」

「そうみたいです。グフフ……」


 過去に色々やらかしていた関係で、アンジェラと城の尋問官は割と顔見知りらしい。ハークス伯爵家のコックと私のような間柄だ。

 今は理不尽なことで捕らえた相手を尋問したりしないが、過去のアンジェラは、自身に絡んできた酔っ払いを拷問に掛けるとヒステリーを起こし、マーロウに止められていた。


「今後、メリル殿下やノーラが狙われる可能性があるんです。メリル殿下は目撃した貴族を何人か挙げておられましたが、あの部屋には他にも複数の人物がいたらしく、とっさのことで全部は見られなかったと。そして、彼女自身、まだ貴族の顔と名前が一致していない部分もあり……」

「なるほど、それは危険だね。目撃したのはメリル殿下だけというわけか。何人も取りこぼしているみたいだし」

「はい、お兄様。それで、メリル殿下が犯人捜しに意欲的になっておられます。あの場にいる全員で止めたので、一旦納得されている様子ですが」

「好奇心旺盛な方みたいだから、勝手に動かれる可能性が?」

「……そうです」


 リュゼとの会話に、一緒にいたエミーリャが補足する。

 彼は最近アンジェラとさらに仲を深めたようで、彼女と名前で呼び合うようになっていた。


「アンジェラが厳重注意をしていたけれど、メリル殿下の正義感は甘く見ない方がいい。どこにでも首を突っ込みたがる性質だと兄が言っていたし」


 そう言って、私を見つめるエミーリャ。

 やはり、彼は兄のセルーニャから少女漫画の知識を一部授けられている可能性が高い。


「実は、そのことで、私の過去を知っている皆さんに、ご相談があります」


 私がそう告げると、リュゼが微妙な表情でリカルドとエミーリャを見る。


「……彼らも?」

「そ、そうです、お兄様。エミーリャ殿下はセルーニャ殿下から、リカルドは私から話を……」

「ふぅん?」

「急ぎの用件でしたので、この方が早いと思って……すみません」


 そこで、私は少女漫画の原作のことや、この後起こるであろう展開をざっくりと話した。

 正直言って、少女漫画のくだりはかなり説明が難しかったが、エミーリャのフォローによってなんとか切り抜けた……わけではなかった。


「……というわけで、ブリトニーや俺の兄は、前世でこの国の未来を見ていたんだ。いやあ、『他国の未来を予知していた』なんて、さすがセルーニャ兄上だ」


 その目は、セルーニャへの尊敬でキラキラと輝いている。

 もはや信仰と言っていいレベルかもしれない……


(エミーリャ殿下は、まともな人だと思っていたけど……セルーニャ殿下が絡むと豹変しすぎじゃない? というか、あの第二王子は弟にどんな説明をしたの!?)


 彼らの兄弟愛は凄まじい……

 ところどころ行き過ぎた面もあったが、エミーリャの説明により、なんとか少女漫画でメリルが一人で動き、マーロウは倒れる可能性があるということを理解してもらった。

 現実が変わりすぎているので、実際にその通りにはならないと思うが確実ではない。

 リカルドは、内容を信じられないようで、困った表情を浮かべている。


「あのね、リカルド。すぐには信じられないって気持ちはわかるよ。上手く説明できないし。確かなものでもないから、私も今まで黙っていたわけだし。でも、現実が私の知っていた情報と似た形で動き出したから、このままでは駄目だと焦ったんだ」


 リュゼの方も不審げな目をしていた。彼にはエミーリャが説明している。


「北の伯爵。君だって、本当なら北の国との戦いで亡くなっているはずだったんだよ? それを回避できたのは、ブリトニーが動いたからだ。これは兄の予測だけれど……彼女がいなければ、おそらく君は、仕事の疲労と敵の挟み撃ちが原因で倒れていたんじゃないかな?」

「…………へえ?」

「あれ、思い当たる節があった?」

「ふふっ、少し驚いただけです。セルーニャ殿下の予想では、僕が亡くなっていたなんて」


 にこにこ、にこにこ互いに微笑んでいるが、リュゼとエミーリャは、あんまり合わないような気がした。


(この二人が組めば、結構最強だと思うんだけどな)


 視線をそっと戻した私は、リカルドへの説明を続ける。


「あのね、たとえ未来が予想できても、何もできない場合もある。結果を知っていても、どうしてそうなったのかわからないことの方が多いんだ。リカルドについても、そうだったし……」

「ちょっと待て、ブリトニー。俺がなんだって?」

「……私が過去に見た情報では、リカルドはマーロウ様の側近になっているんだよね。でも、私はミラルド様の行動を予想できなかった。あなたが側近になった理由を知らなかったんだよ……ごめん」


 少し落ち込む私を、リカルドが支えてくれる。


「断片的な未来しか知らないのなら、お前がそんな風に気にする必要はないだろ」


 そう言うと、彼は話の続きを促した。

 どうしようもなく胸が締め付けられた私は、わかる限りの情報を伝える。最終的に、話は一年後の未来の内容まで続いた。


「……で、私は色々あって処刑されるんだけど」

「処刑!? ど、どういうことだ!? 前半もだが、後半は聞き捨てならないぞ!?」


 先ほどとは打って変わり、リカルドが動揺し始める。


「ええと。私に関しては、そうならないよう動いてきたから多分大丈夫。それに、処刑までは、あと一年も猶予があるし……」

「あ、あと一年だと!?」


 目をむいて叫んだリカルドの表情は、蒼白だ。ここまで余裕のない彼は、久しぶりに見た気がする。

 横から、エミーリャと会話中のリュゼも口を出した。


「それは、僕も聞き捨てならないね、ブリトニー。エミーリャ殿下、あなたもご存じだったんですか?」

「あ、ああ、もちろん?」


 恐怖のリュゼスマイルを前にしても、エミーリャは割と普通だ。


「ブリトニーは、北の伯爵にも自分のことを話していなかったんだなぁ……」

「…………」


 この二人が並ぶと、なんだか面倒だ。

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