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トラブル・トラベラーズ!  作者: 安楽樹
8章 魔術師の塔編
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6.ん、何となく分かってきたぞ

赤の扉の奥、ヘビを倒した最後の部屋には、奥に一つ水晶球が設置されていた。

何の飾りも無いシンプルな台座の上に、手の平よりも少し大きめの水晶が乗っている。

それ以外には、何も見当たらないようだった。


「ふう……。これだけか?」

「そう……みたいですね」


一通り、各自の状態を確認し、おっさんが癒しの呪文を唱える。まだまだ問題なく、万全の状態が戻った。

一応全員の様子を確認した後、イセルは恐る恐る」水晶球に触ってみる。

すると、水晶球は淡い光を放ち出し、一瞬だけ眩い閃光を放つ。

……思わず目をつぶった一同がゆっくりと目を開けると、そこは扉を開ける前の元の部屋だった。


どうやら最初の部屋に戻ってきたらしい。

ただ周囲を見回してみると、先ほどとは一部分だけ変化している箇所があった。

中央にある魔方陣のうち、赤い部分だけが先ほどの水晶球と同じような淡い光を放っていたのだ。


「……ん、何となく分かってきたぞ」

「うむ。……次は青じゃな」


うっすらとこの部屋と、その周りに仕掛けられたカラクリが分かってきた。

誰も口に出しては確認しなかったが、各色の扉の課題をクリアすれば、中央の魔方陣に光が灯る、という仕組みのようだ。

皆の準備を確認してから、おっさんが青の扉に触ると、一行の体はまた別の空間へと移動する事になった。



今度は何が出てくるのかと身構えていた一行だったが、転送されたその場所には、怪物モンスターの姿は無かった。

何も存在しない緩やかに右へカーブしている通路が延びているだけであり、何かが起きる気配も感じられない。


少しの間、警戒していた一行だったが、何事も起こらないのが分かると、隊列を組んで通路に沿って進み始めた。

どうやら周囲の様子を見るに、塔の外周に沿って通路が設けられているようだったが、どこにも窓は存在しないようだ。

代わりに、外壁とは反対側の塔の内側に向いた方向のちょうど肩の高さの辺りに、小さな窓が取り付けられているのを発見する。


「……ん?何だこれ?」


それに気付いたイセルが腰を屈め、窓から中を覗いてみると、……そこには幼い赤ん坊の姿が映っていた。

意味が分からずにしばらく眺めていたが、目の前の赤ん坊(もちろん本物ではない事が雰囲気で分かった)は、ただ真っ暗な中をひたすら這い這いをしているだけのようだ。

彼はすぐに飽きてしまい、窓から身を離す。


「……何だった?」

「さあ?赤ん坊がいたぜ」

「へ?赤ちゃん?」


その言葉を聞いたベルが代わって窓を覗いてみたが、やはり見えた映像は同じようだった。

気になった他のメンバーも順番に覗いてみるが、一人として別の姿が見えた者はいなかった。

誰もがみんな、這い這いする赤ん坊の姿を見ていたようだ。

……これだけでは意味が無いのかもしれない。

彼らは先へと進んだ。



そこからカーブに沿って二十歩ほど進むと、同じように窓が設置されていた。

今度は先に見てみたいとシャルルが懇願し、仕方なくイセルは抱きかかえて窓を覗かせる。

「俺は父ちゃんかよ……」とぼやくイセルの前で、急に彼女は、素っ頓狂な声で驚くのだった。


「ありゃ?……シャルルわたしだ」

「ん?どれ。……あ、俺の子供ガキの頃が見えるぞ」


横から覗いたイセルには、自分の子供の頃が映っているのが分かった。体のあちこちに擦り傷を作って、生意気そうに駆けている。

おぼろげにしか覚えてはいないが、間違いなく幼い頃の自分だった。

続いてまた順番に見てみるが、どうやら窓の向こうには、覗いた人間の子供の頃が映っているようだった。

となると、もしかしたらさっきの赤ん坊も自分の小さい頃だったのかもしれない。

確かめるためにおっさんとベルに聞いてみると、確かに赤ん坊のドワーフとエルフがそれぞれ見えていたとのことだった。


何となく次のカラクリが見えてきた一行は、また先へと進んでみる。

同じように現れた覗き窓は、今度は大人になった彼らが映るものだった。

窓の向こうを見ても、ただ一人だけを除いて「なるほど」とすぐに窓から離れる。

なかなか離れなかった唯一の人間が、髪の毛がフッサフサに生えていた頃の自分を見てしまったイセルだったのは……まあどうでもいいことか。

……少し感激しながら、窓をじっと覗いていた。



程なくして最後の窓が現れる。

そのすぐ先には、先ほどの赤の扉の奥で見た水晶球が同じように、沈黙したまま彼らを見つめていた。


まずは窓の奥を見てみる。今度は、よぼよぼの老人になった自分たちが映っていた。

イセルは剣を付き、それ以外の者も斧や杖など、持っていておかしくなさそうな物を地面に付いて歩いている。

それが全員の証言を総合したまとめだった。


あまり見たくは無いとすぐに窓から離れるベルとグラムルをよそに、シャルルだけが面白そうに何度も覗いている横で、う~んと考え込む一行。

だが例によって答えは出ないので、大人しく水晶を触って元の部屋へと戻った。


……予想通り、魔方陣の青い部分が輝きを発していた。


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