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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

シタイなワタシ

作者: 二越十呼

シタイなワタシ/人依 蛙



学校からの帰宅途中、私は数人の何者かに襲われた。


何者かに後ろからいきなり両脇をロックされ、さらに待ち構えていたもう一人に薬的なおそらくクロロホルムを嗅がされそうになり、とっさにこれは拉致された挙句の強姦パターンっと脳裏をよぎったので、まず後ろにいた一人にヘッドバンキングの要領で頭を思いっきり振りかざし頭突き。そいつは頭突きを額にモロに喰らったのか、そのままよろけてロック解除。次に薬の奴の腹に蹴りを一発入れた。間髪入れずに後ろのよろけている奴に回し蹴り。薬にももう一発蹴り。どうだ見たか、空手部の実力。まさか女子高生にここまでボコられるとはこいつらも思っていなかったのだろう。しばらく腹を抑えてその場で蹲りぴくぴく震えていた。薄暗い所で襲われたのではっきり見えたわけではないのだが、そいつらは100円ショップで売っていそうな馬のマスクを被り、後ろにいた馬はデブ、薬の馬はガリ、っという事ぐらいしか解らなかった。

ここで「うわー、このJKきっと空手部の主将かなんかで俺らじゃ太刀打ち出来ねえ。ずらかるぞ!」ってなれば、私もさっさと帰宅して、LINEで友人の恵なんかに「さっき馬二頭に襲われたので撃退した(笑)」「リアル蘭姉ちゃんか(ツッコミの顔文字)」みたいな冗談めかしたやり取りが出来たかもしれない。出来なかった理由は至って簡単。

勝利を確信し自身の強さに酔いしれている隙を付かれ、後ろで蹲っていたはずのデブに鈍器で思いっきり殴られた。目の前が一気に赤に染まる。自分から出たおびただしい血液に驚愕し、口がああああってなって痛みより先に恐怖が来ている所にもう一発。

ドコッ!

さらに止めのもう一発。

ボコッ!

意識が完全にシャットダウンし、私は闇に落ちっていった。


…私はあっけなく、死んでしまったようだ。



よりにもよってこんな形で人生の最期を迎えてしまうとは。勝てる相手だと思って、完全に油断し、なおかつ自身満身していた。情けない。

走馬灯というやつなのだろうか、私は女子空手部入部早々に先輩に喧嘩を売り、コテンパンにされたのを思い出していた。ああ、懐かしい。見た目はいかにも病弱気質な女子だったから余裕で勝てるでしょって思ってたのに、技の切れは抜群に良く、小柄で小回りの聞いた動体視力、まさに唯先輩には言葉通り手も足も出せなかった。帰りによく激安のコロッケを奢ってくれた優しい唯先輩。真面目そうにみえてエッチな話題が大好きな唯先輩。ああ懐かしいな。そういや先輩は今頃ちゃんと大学生やれているだろうか。噂では、彼氏が出来たにも関わらず、腹筋割れている女はやっぱり気持ち悪いと言われ三日で振られてしまった可哀そうな先輩。こんな事になるなら、もう一度顔見たかったな…

「……おい………あ…場で……やっち……と血の…が残っちゃう……うが…!」

「仕方…いだろう…!まさか………反撃してくだな……思いもしなかっ……、逆に殺し……きゃ俺達がやられてたかもしれないし」

あれ?なんだ。なにか聴こえる。

「ったくよ!どうすんだよ!これじゃあ、いつもみたいに動画撮れないじゃないか!死姦するにしても、こんな頭が凹むまで殴られて、しかも血まみれのグロ死体なんかといちゃつきたかないぜ!俺は!」

頭が…殴られて凹んだ死体?何それ?まるで私の事言っているみたい…


…あれ?あれれれれ?私、意識が…ある!?生きてる!え、え、でも凹んでるんだよね?頭。


うっすらと目を開ける。う、相変わらず目の前が赤色に染まってる。頭、激痛なんですけど!目の前には…男性二人の脚…と、馬の生首!?…じゃなかった、デブとガリが付けていた馬マスクだ。ここはどこだ?かなり埃臭い。あとなんか薬品の臭いもする。工場?違う。なんか、複数の台の脚が見える。…ベッドか。それとボロってるけど各ベッドに仕切り用カーテン。病室?あ、解った。病院だ。たぶん××町の廃病院だ。最近、恵と秋穂ちゃんと恵の知り合いの男の子三人…名前忘れた…と肝試しに来た所だ。確かあの時は秋穂ちゃんが入口入った所で「ここは駄目、いる。奴らがいるー」ってイタコみたいに叫んだから恵もびびっちゃって結局肝試しは中止にしてカラオケ行って合コン的な事したんだったけ。…あの合コン、男子達の自慢話ばっかでつまんなかったな。

「とりあえず、この死体をなんとかしなきゃな」

男二人がこちらに振り向いた。やば!っと思い目が合う瞬間を察知し目を瞑る。

「あーあ、何回見てもおぞましいぜ」

「だ、だね。ちょっと殴りすぎちゃったよ」

…そんなにヤバいの?あの、ちょっと、自分で見て触って確認したいんだけど。あ、でも駄目だ。ここで生きてるってこいつらにバレてしまうと間違いなく留めを刺される。

「た、竹ちゃん、どうする?もう解体しちゃう?」

「その方が良いかもな。ちょっと待ってろ」

え?解体?解体するって、何を?

「あー!しまった。包丁忘れた!」

「え!な、何やってんの竹ちゃん!」

「しゃーねーだろが!いっつも何回も犯して、弱り切った後に殺してるんだから!この時点での包丁は論外なの!」

「えー、じゃあ、俺のパールでやってみる?」

「あほか。パールで切断は無理ゲーだ」

…とりあえず解った事が二点。まず一つ、私を襲ったこの竹ちゃんというガリと名も解らないデブが最低最悪の男共という事。こんなクソ共がいるから、世の中から犯罪が消えないんだ。もう一つ、このままここで死体のフリをしていても、私はバラバラに解体されてしまい結局は死んでしまうという事だ。


ファック。ふざけるな。


あれか?解体した方が死体を運びやすいからか?バッグに詰めやすいってか!?知ってんだぞ!私はミステリなら江戸川乱歩から西尾維新まで熟知してんだぞコラ!そんな安易な理由で死体をバラすってか?殺された家族の身にもなれクソ共が!遺体面会の時にバラバラで、しかも凹んだ頭の娘を見たらお父さんもお母さんも妹もぶっ倒れるぞ!


ってそんな事言ってる場合じゃない!


どうする?生き返っても「死」。死に続けても「死」。…駄目だ。結局、私の人生はここで終わりだ。例え生き返ってこいつらと対峙しても、こんな弱った身体で勝てる見込みもない。逃亡出来る自信もない。…詰んだ。


…いっそ、舌を噛み切るか?今、楽になれば、少なくてもこいつらに嬲り殺されたという事実でなく、舌を噛み切り自殺した私という形で幕を引ける…

本当にそれでいいの?

いや、良くないよ。だって…死にたくないんだもん。

だったら頑張ってみようよ。

頑張れって、こんなの無理じゃん。

無理って、まだ足掻いてみないと解らないじゃん。唯先輩も言ってたでしょ?「最初から諦めるな。どうせなら徹底的にやってみてからそういうのを考えろ」って。

唯先輩そんな事言っていたっけ?あの人、猥談しかしゃべってるイメージしかないんだけど…

い、言ってたよ!他校との試合の時はいつも。その言葉を励みにして、私自身も頑張ってたじゃん!思い出して!

…確かに言ってた…かな?うん。そうだよね。先輩が言ってたんなら、信じてみよう。それに自殺なんて私らしくない。

その意気よ!頭が凹んでいても、考える脳みそはちゃんと機能してるんだから。だから負けちゃ駄目。

うん、解った。私頑張るよ!


って自問自答したが、解決策が思いつかないのが現状。

「とりあえず、包丁持ってくるわ。車で行けば20分で戻って来れそうだし。だから矢島、お前はしばらくここにいてくれ」

「え!?ちょ、ちょっと待って。一緒に行かない?」

「万が一、ここに誰か入ってきた時の対処はどうする?解体する前に死体だけ目撃なんかされちゃすぐさま警察呼ばれるだろうが。見張りがないと駄目だ」

「そんなぁ。だってここ、噂じゃモノホンの幽霊出るって言われてるし…それにこんな血まみれ女子高生といるの嫌だよ」

そうしたのはお前だろクソデブめ。

「何言ってんだ。解体する時はいつもここでやってるから、最早慣れ親しんだ場所だろ?」

「一人でいるのと二人でいるのとじゃ違うよ!あ、じゃあこの死体も持ってくのはどうだろう?」

「あほか!それじゃあ本末転倒だろ!それに俺の車がそいつの血で汚れるだろが!ちゃんと解体してゴミ袋!計画性を大事に徹底的にする!これが俺達の掟だ。…今日、その掟を破ったのは誰だ?」

「う、解ったよ…」

どんな掟だよ!時代遅れの海賊かお前らは!その後、竹ちゃんと呼ばれたガリはどこかへ行ってしまった。遠くで車の音が聞こえ、静寂が病室内を包み込む。ここにはクソデブ、もとい矢島と私の二人だけになる。


これは、もしかしてチャンスか?


弱った私VS強姦魔二人だと勝ち目はないが、弱った私VSクソデブ一人だと勝ち目が…あるわけないか。相手はパール持ってるっぽいし。さすがにパール相手に素手じゃきつい。いや、待てよ。そうだ、このデブが隙をみせている内に警察に連絡すれば、クソ共は逮捕されて私は身の安全を確保されてハッピーエンド…でもその隙はどうすれば…私は思考回路を働かせ、様々な作戦を考えてみるが、いまいちぱっとしない作戦ばかりでモチベーションが下がっていく。とその時、静寂に耐えきれなかったのかデブが独り言を言い始める。

「はあ、早く竹ちゃん帰ってこないかなあ。薄気味悪いよ。幽霊とか出たら洒落なんないよ」

…なんなんだこいつ。人を思いっきりパールで殴っておいて幽霊にチキってんのか?は!そうだ!ゾンビの真似して襲いかかってやろうか!…てそんな事したらまた殴られそうだな。

「この子、けっこう俺のタイプだったのに勿体ないな」

そう言うと矢島は前かがみになり、私の顔を覗き込んできた。厚淵眼鏡、鼻横にイボ、そして臭い吐息。矢島は簡単に説明すると超が付く程のブサメンだった。お笑い芸人のガリガリなんとかに似てる…ん?あれ?なんで私、こいつの特徴解ったんだ?


あ、目、閉じ忘れた。


「あ、あれ?この子、死んだ時、目閉じてなかったけ?」


私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。アイム、デッドフィッシュ。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚。私は死んだ魚ぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「う、死体の目って本当に光沢ないな。まるで死んだ魚だ。生きてる時となんでこんなに違うんだろう…」


良かった!バレてない!暗示(?)のおかげで助けった!矢島はしばらく私の身体を見回してから隣に座り込んだ。そして、再び独り言。

「この子名前なんていうのかな?」

田中美佐って至って普通の名前だけど、てめーには絶対教えない!

「なんか美穂ってカンジだな。うん、じゃあ美穂ちゃん」

惜しい!それは妹の名前だ。てか何勝手に命名してんだこのクソデブが!

「美穂ちゃんは友達何人いるの?え、全然いないの?可哀そうに…」

いるわ!…少ないけど。

「俺と一緒だね。将来は何になりたかったの?うん、あ、そうか。のけ者にされてたから、自殺する予定だったのか。じゃあ俺に殺されて逆に良かったね」

うう、さっきから何死体と会話してるんだこいつは…気持ち悪い。つか、血まみれの女子高生と一緒にいるの嫌とか言ってたくせに、なに死体に愛着持ち始めてんだ。

「こうして話してると俺らは似た者同士だね。もし、生きてたら上手く交際も出来たかもね」

うげ!死んでもお断り!

「付き合ったら、キスしたり…××したり…あそこもあんな風にしたり…ふふふ…」

全身に寒気が走る。や、やばい。こいつイカれてる。これがサイコパスって奴か。初めて見た!

「…はあ、気を紛らわしてはみたものの、やっぱ一人でここにいるの、恐いな…え?『私もいるでしょ?』って?そうだね。二人なら恐くないね」

そう言うと矢島は急に私の手を握る。私はビク付くのを我慢し、手と全身に力を抜く。うう、奴の手が汗でベタっていて気持ち悪い。でもここで鳥肌を立てるわけにはいかない。これは…そうだ、新商品のジェル性ハンドクリームと思いこめば…

「え?美穂ちゃん、エッチしたいの?駄目だよぉ。そんなグロテスクな姿じゃ竹ちゃんに叱られちゃうよ」


え?今、なんか不吉なワード聴こえたんですが…


「え、俺だけを楽しませたいの?ふふふ、だ、だったら…仕方がないなあ…」

矢島は待ってましたと言わんばかりにズボンを下ろし、さらにパンツを下ろし…


ってちょっと待てぇぇぇ!これは…やばい。やばいやばいやばい。本当にやばい展開だ。こいつ、私を死姦するつもりだ。


「俺はね、全然ね、そんな姿の美穂ちゃんでもアリだと思うよ。竹ちゃん、動画撮りに拘りすぎなんだよ」

やばい。まさか。そんな。嫌。嫌嫌嫌。絶対嫌。

「さっきは一緒にいるのが嫌だとか言ってごめんね。でもね、ああ言わないと竹下に馬鹿にされると思ったから…」

許すから、そのイチモツをないないして!

「大丈夫だよ…アイツが帰って来る前に済ますし、それに生きてた頃以上に楽しませてあげるから」

そう言うと矢島は自分のナニを私の目の前にチラつかせた。悲鳴を上げたかった。泣きたかった。逃げ出したかった。家に帰りたかった。ちゃんと好きな男性のおチ○ポを見たかった。こんなお粗末チ○ポ見たくなかった。私の願望を無視し、矢島は一人盛り上がる。

「さ、まずはくわえて」

矢島の指が私の下顎を捉え、口を開かせようとする。


絶対、させるものか!


私は歯を噛みしめ、顎全体に力を入れる。

「あれ、もう死後硬直しちゃってるのかな?開かないぞ」

全身から汗が吹き出す。もしかしたら生きてるってバレるんじゃないかとか思ったけど、矢島は矢島で私の口を開かせようと力を込め、汗をかき始める。その汗が私に飛び散り、私の汗か矢島の汗か解らなくなっているので問題はないみたい。…いや私的には大問題なんだけど!そもそも矢島は私の口に意地でもナニを突っ込む事にベクトルが向いているので、そんなの微塵も気にしている様子はなかった。

「うう、駄目だ。完全に開かなくなってる。もうちょっと早くしておけば良かった。くそ、竹下があん時さっさと行ってくれれば…」

勝った。なんとか、難を逃れた。しかし、そう思うのも束の間だった。


もみっ。


今度は胸を揉まれた。

「げへへ、美穂ちゃんは中々の豊満だな。Dはあるなこりゃ」

ぐぬぬ、く、屈辱だ。Cだよ馬鹿野郎…違う。こんなブサメンに私のおっぱいを…私のおっぱいを…

汚らわしい手が、私のおっぱいを撫でまわしていく…やめて~。

「形はどんなのかな?」

矢島は私のブレザーを掴み、それを脱がせようとしたいのか私の腕を万歳の形に持っていこうとする。さ、させるかー!

「ああ、もう、くそ!腕も硬直してんのか!もう!美穂ちゃんは意外と我儘だな!」

くそ、今すぐこいつをぶちのめしたい…!

「上が嫌なら…じゃあ、こっち!」


その言葉と同時に下半身がすーすーする。


……やりやがったこいつ。パンツ、脱がせやがった…越えてはいけないラインを越えやがった。矢島は私の股間部に自分のナニを持っていき、戦闘準備に入る。

「さあ、一緒に気持ち良くなろうね!美穂ちゃんもこんなに濡れてるし…え?濡れてる?」


「いい加減にしろクソ野郎!」


私はついに我慢の限界を超え、生き返り、そして怒りのまま矢島の脳天に踵落としを喰らわせた。「はぐぅッ…!」と奇声を発し、矢島の頭は床にゴム鞠のように跳ねた。そして痙攣しながら、私の股下に倒れ込む。矢島はまるで外敵に襲われた蟹のように口から泡を吹き気絶していた。ざまあみろ、サイコデブめ。と、こいつがのびている間に行動しよう。


私は久しぶりに立ち上がる。う、なんかバランス感覚が掴めない。私はふら付き、立っているとしんどいと思いベッドに座る。血が頭から吹き出し零れる。殴られた所をそっと触り確認。…畜生、めっちゃ痛い。さっきまでも痛みはあったけど、立ち上がったから余計に痛みが増した感じがする。触った手を見ると、血でべっとりして寒気が走る。改めて、この状況が最悪なのを確認する。さっさとこんな所からは脱却すべきだ。私は制服のスカートポケットにいつも入れてあるスマホを取り出そうとする。が、ない。右ポケットにも左ポケットにもない。ち、証拠隠滅でパクられたのか…だったら脱出だ。ここを出たら、誰でも良いから助けを求めよう。頭凹んだ女子高生がいきなりしゃべりかけてきたらビビるだろうな。思い立ったら即行動。私はふらつきながらも立ち上がり、病室を出ようと扉を開ける。左に壁があり、右には闇に伸びる廊下がある。どうやらこの病室は奥部屋だったようだ…


ブォーン、ブロロロロ……バン。


私は何故か動けず、その車の音に聞き入っていた。


コツン、コツン。


これは…足音。廊下の向こうから誰か来る…!ってあのガリか!もう戻って来たのか!やばい!鉢合わせする!窓から逃げ…駄目だ!板で塞がれてる!私は病室に再び引っ込む。どうする?戦うか?いや、デブは不意打ちだから倒せただけ。真正面から包丁を持った相手と対峙なんてこちらに部が悪すぎる。そうだデブのパールだ!パールで応戦すれば!そのパールはどこ!?探す。ない!戦うの却下!じゃあ、隠れる?いやいや、血の跡でバレて殺される。てか、この現場見たら即バレじゃない!?気絶したデブ、血の滴った跡…さっきの現状との間違い探ししたら、五歳児でも解るレベルだ。ど、どうする?そうだまずはデブをベッド下に隠して…ってこのデブ重くて動かない!は!私、履いてない!パンツは?違う!それは後回し!


コツン、コツン。


足音が近くなってきた!やばいやばいやばいやばい!大パニック。


コツン、コツン。


い、一か八か!


私はデブに馬マスクを被せた後、重い身体を私の身体に重ね、屈辱ではあるが奴の下半身を両太ももで挟み込み再び死体となった。

「おい、持って来たぞ…っておわ!」

ガリから死角になっている右手を使い、デブを揺らす。おそらくガリが見たその光景は、デブ馬が下半身裸の死んだ女子高生を死姦する画…


…うん、我ながら最悪だ!くそったれ!


「お、お前マジかよ…とんでもない性癖持ちだと思ってたが、ここまでとは…」

なんだかその台詞、私に投げかけられているようで非常に嫌なんですけど!

「お、おい。いつまで続けるんだ?」

う、誤魔化してはみたものの終わりが見えない。むしろ状況悪化してないか?どうしよう…

「無視かよ!おい!」

どうする?このままじゃデブが気絶してんのバレちゃう!え、えーい!やけくそだ!私は喉をきゅっと絞め、口を開く。

「…い、逝くまで待ってくれ」

「?」


…とっさに口真似したけど似てなーい!男子の声色とか無理!しかもなんか変な空気になってるし!こ、これは…さ、流石にばれた!?


「…ったく。しゃーねえな!さっさと済ませろよ!」

え?い、いけたー!よっしゃー!あいつ馬鹿なのか?それとも度の超えた難聴なのか?どっちにしろ助かった。しかし問題はこれからだ。なんせこの作戦、オチがまったく見えない!それに凌げたとはいえ、ガリはその場に立ち尽くし、煙草を吸い始めた。

「お前は本当にイカれた野郎だな。まあ、そんぐらいの狂喜さがないと、こんな事やってられねーもんな」

ガリは高みの見物でもしてるのか、デブと私の偽造セックスを眺めている。み、見世物じゃねーぞこん畜生!揺らすだけとはいえ、デブの圧力と無駄な運動で少し疲れてきた。

「…ふむ、最初はグロいから抵抗あったが、うん、血まみれJKが馬の怪人に襲われる…これ、けっこうアリだな」

え?

「待ってろ、どうせならその構図撮影してやるよ。今カメラ持って来る」


…『類は友を呼ぶ』ってか。ガリは興奮し、急ぎ足で病室を出て行った。


ガリがその場にいなくなったのを確認し、一旦デブを揺らすのを止めブレイクする。

「どうしよう…」

と知らぬ間に言葉が零れていた。この隙に逃げようとも思ったが、疲れがピークに達し、立ち上がれるどころかデブをどかす気力もない。…ていうか…なんだか…ぼーっとしてきた。ふと目を横にやると、血の池が徐々に広がっている。まさかあの下らない運動によって、傷口が開いたのか。やばい…これじゃあ……本当に…死んじゃう。

「おい!持って来たぞ!まだ逝ってないよな?」

その言葉に無条件反射し、再びデブ揺らし行動開始…したけど、さっきより気力が…

「おっほう、なんだ逝ったのか?なあ?」

五月蝿い…確かに、このままじゃ天国には逝けそうだけど…

「どうせだったら××しろよ!その方がそれっぽくて良いだろ?」

もう嫌。こいつらも、こいつらを生みだした世の中も、なにもかも…消えちゃえ…ああ、意識が…朦朧としてき…た

「ん?うほ!お前、気持ち良すぎて泡吹いてんのか?ちょうど馬マスクの口から出てるぞ!ははは、面白いねえ!とんだクレイジー野郎だな」

もうなんか全てが馬鹿馬鹿しい。こんな奴らに関わったがために死ぬ。…憎い。本当に…憎い。ブサメンが憎い。デブが憎い。ガリが憎い。馬マスクが憎い。男が憎い。憎い憎い憎い憎い。

「お、おい?どうした?」


「ワタシは…お前達が憎い」


そこから、私はまた闇に落ちていった。







矢島という男が泡を吹き始め、竹下が何事かと思い近づいた瞬間…奴は動きを止め小刻みに震え、うつ伏せに倒れ動かくなった。「おい、大丈夫か?」と竹下は矢島に問いかけたが彼からの返事はなかった。…突如、竹下は異変を感じる。何か…聴こえる。


「ワタシは…お前達が憎い」


微かに、そう聴こえた。竹下はその少女の死体を見た。頭は凹み、まだ傷口からは血液が溢れる、変わり果てた少女。もしかして、まだ息があるのか?包丁を手に持ち、ゆっくりと死体に近づく。死体の目と、自分の目が合う。光沢を失われた瞳。首の脈を確認する。冷たい肌を感じ、他には何もない。「ふ、なんだ驚かせやがって」。そう言い放ち、少しでも恐怖を感じさせられた死体に腹いせを立て、憂さ晴らしに顔面を蹴飛ばす。「…さっさと解体するか」。早く作業に取り掛かりたかったので、再び矢島に問いかける。「おい、お前どうしたってんだ?」馬マスクを外す。見慣れた矢島の汚い顔が現れる。「おい、矢島!」

「…ん」「何寝てんだ?起きろ!」「…あれ?竹ちゃん?」「たくなんなんだよ、昇天してそんまま寝ちまったのか?」「へ?なんの事?」「なんの事って…お前さっきまでそこの死体を死姦してたの忘れちまったのか?」「げ、み、見てたの?いつから?」「見てたのって…お前、夢中になりすぎて俺に気づかなかったのか?どうだった、こいつのアソコは気持ち良かったか?」「何言ってんの?俺、まだ突っ込んでないよ」「は?さっきまでやりまくってたくせに…お前こそ何言ってんだ?」「いやいや、やってないよ。これからだって時に、突然意識を失っちゃって…ん?あれ?なにがあったか覚えてない」「誤魔化さなくていいよ。そういう性癖持ってても馬鹿にしないから」「ほんとだってば!」「ワタシハオ前達ガ憎イ」。



その言葉に二人は反応し、それを見てしまった。


自分達が夜道で襲い、反撃で蹴られ、頭にきてパールで殴り、死姦し、その光景を撮影しようとし、あらぬ噂に恐怖した腹いせに顔面を蹴った…少女…ではなく、それは…まるでゾンビのように白目を向き、頭から血を垂れ流し、天井から紐で吊るされたマリオネットのような機会な動きをし、その場に佇んでいた。


「ワタシハオ前達ガ憎イワタシハオ前達ガ憎イ…殺ス殺ス絶対殺ス…ニクイ…コロス」


壊れたラジオのように繰り返す不吉な言葉。「う、うわああ!出たああ!」「ひい!よ、寄るな!」包丁を向けても動じず、それは彼らに近づいてくる。「来るなあ!」「ワタシモオ前達ガ憎イ」。壁の後ろや床から、無数の長い手が伸びて来る。それらは二人を逃さないように、身体に纏わりつく。「ひいいい!や、やめてくれ!」男達の懇願を無視し、無数の手により羽交い絞めにされていく。「悪かった!俺達が悪かったから!」「許サナイ」。最後に血まみれの少女の両手が竹下と矢島の頬に触れる。「…死ネ」。


「ぐわああああああああ」

「ぎゃああああああああ」


二人の男は泣き叫びながら病室を出て行く。最後に、それは力尽きたのか死体のように倒れ込んだ。






目が覚めるとまた病室だった。でも今回は埃臭くなく、安心する病院ならではの臭い。

「お姉ちゃん!良かった…目が覚めた」

ベッド横から妹の美穂とお父さんとお母さんが心配そうに私の顔を覗いていた。頭には包帯が巻かれている。意識はあるけど…なんだろう…ぼーっとしちゃう。

「本当に…心配したんだから」

お母さんが涙ぐむ。

「私は…どうしてここに?」

「帰りがあまりにも遅いし、携帯にかけても連絡がないから警察に電話したんだよ。そしたら××病院で美佐を見つけたって連絡が来てな」

「お姉ちゃん、災難だったね。それに危うく死にかけたみたいだし。私、ここでお姉ちゃん見た時死んでるのかと思った…」

「こら美穂!よさないか!」

まあ、ついさっきまでは死んでたけどね。フリだけど。

「娘さんの意識が戻ったのですか?」

謎の男性二人が病室に入って来る。何故か背筋がぞわり。

「田中美佐さん、私達はこういう者です」

と言い男性二人は警察手帳を広げる。

「つきましては、あなたが巻き込まれた事件について話を聞きたいのですが…」

「あのすいません。美佐はついさっき意識を取り戻したばかりなので、また聴取は今度にして貰えませんか?」

お父さんが男達を制す。

「しかし、娘さんを襲った犯人達は未だに逃亡中なので、出来れば早期逮捕に踏み込みたいんです」

「お願いします」

お父さんは頭を下げる。

「…解りました。こちらこそ、無礼な事をしてしまい申し訳ございません」

そう言って二人は病室を出て行った。



二日後。

私を殺そうとしていた男二人は逮捕された。デブは「矢島亮治(34歳)」。ガリは「竹下明則(36歳)」。ちなみに竹下は妻子持ちだったので、これには驚いた。共に工場勤めだったらしいが、工場が不景気の煽りを受け倒産。路頭に迷った二人は自分達の憂さ晴らしのために女子中高生を攫っては犯し、殺し、解体し、挙句の果てに山奥まで運びにそれを埋めていた。逮捕の決め手となったのは、主に私の証言だった。どうやら苗字を覚えていたのと体型と下手くそな似顔絵だけで犯人を割り出せたらしい。二人はあの後、それぞれの自宅に帰りずっと身を潜めていた。その際、犯人家族達の証言でずっと「あいつらに殺される…あいつらに殺される…」とぼやきながら恐怖していたとか。その事に関しても警察から質問されたが、私は皆目見当もつかず「それはちょっとなんの事だか解らない」という主張を一貫した。警察曰く、どんな方法を使ったのか解らないけど私は犯人達を撃退したと報告も受けた。これ聞いた時は「まじで?」と素が出てしまった。全然、覚えてないんだけど。火事場の底力で乗り切ったのかな?…死体の真似して生き延びたのは覚えてんだけど、うむぅ。考えても埒が明かない。


…一応、まだ安静にしとけとお父さんに言われたので私は入院している。入院中は恵達が見舞いに来てくれたりしてくれたが、やはり病院にいるとはつまらない事だらけなので、私はずっと携帯をいじっていた。

「あ、そうだ」

私はLINEを開き、唯先輩に連絡する。

『お久しぶりです(顔文字)突然、何言ってるか解らないと思うけど言いますね(ハート)』

敢えて分けて送る。

『先輩のおかげで、私生き残れました(笑)先輩の言う通り、最初から諦めず最後まで頑張ってみるもんですね!(顔文字)』

返事が来た。

『…?私、そんな事言ったけ?(笑)』

お前も忘れてるんかい。


(終)


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