トラック島
三日後我々の艦隊はバーク少将の指揮下で横須賀を出航し輸送艦と合流しつつ先行しているフレッチャー提督の第11任務部隊本隊を追って行くことになり、南下してオーストラリアへと向かうことになった。
輸送部隊はは給油船や輸送船等100隻余りの艦隊であり、私達の艦隊では護衛しきれていないが戦争は終わり局地的な戦いにそこまで必要ないと思われているのかと考えていると、バーク少将からイギリス海軍の空母26隻を含む艦隊が合流してくるとだけ言われ艦橋から自室へと戻っていく。私は僚艦に知らせるように伝えると葛城に哨戒機を予定通り発進するように伝えると一番上にある対空監視所に登り青空を見上げながらこの先の事を考えていたが、いずれにしてもアメリカ海軍が主力、第2線がイギリス海軍であり私達日本艦隊は彼らにとっておまけであり輸送船団の護衛が丁度いいとバーク少将からの相変わらずの発言にため息しかでなかった。
その間にも敵は首都アデレードにせまり、グアムから移動させたB29を投入して焼夷弾や爆弾を次々と落として戦い、海軍もハルゼー艦隊の生き残りを統合し空母を主体とした攻撃を繰り返し行いドレッドノートをかなり減らしていってと言うことであったが航空機の補充が間に合わずシドニーから離脱せざる終えない状況にあり、海軍は抵抗のためガトー級潜水艦をありったけ集め攻撃を繰り返し撃退したと言うことをノール中尉が知らせてくれる。
私はトレッドノートの主砲はいくつかと聞くと30cm2連装とノール中尉答えてくれ、ミズーリや他のアメリカ海軍の戦艦に傷つけることが出来たのはなぜかと言う話になり何処に何発命中して何れだけの破損を与えたかを調べてほしいと伝えた。
四日後に大阪湾から出航したイギリス海軍の艦隊が合流すると護衛はイギリス海軍が主体となり我々の艦隊は後方へと下がることになりバーク少将からの無能めと言う嫌みをもらいながら進んでいると、翌日から気圧が下がり嵐になることがわかり艦隊の間隔を大きく広げ荒れるのを注意していると、夜半から荒れはじめ夜明けの頃には暴風雨に突入する。
長門から葛城や酒匂を見てみるとかなりの波をかぶり駆逐艦は波の間に揺れる小舟であり監視を怠らないようにと伝えていると、先行している第11任務部隊の本隊や我々の前にいるイギリス艦隊は次々と嵐により破損していき我々に収容してあとで来るようにと言う通信をおいて先行していってしまった。
バーク少将はフレッチャー提督からの指令に怒りを爆発させ
「日本の艦隊は本当に荷物でしかないな、戦いではなく傷付いた僚艦を収容する病院艦隊か」と言い幕僚から「金谷艦長あとは頼む」と言いつつ作戦室へと下りていった。
私はフレッチャー提督宛に浮きドックと工作艦をトラック島に回航するように頼み、艦隊の速度を落としながら艦艇を回収していく。
破損した艦は軽空母1駆逐艦12輸送艦8航空機は100機以上が海上に落下してしまい、駆逐艦の破損がひどく曳航していくが10ノットほどしかだせず10日ほどかかりようやくトラック島がある諸島に入ることができた。
珊瑚礁のなかは波がほとんど立たないので自然の良港でありハワイからの工作艦と浮きドックが先に到着しており順番に入渠していく。
ここで3日ほど待つ事になり私は1日ずつ半交代で休憩をバーク少将に取ると私はランチに乗って残っているトラック島司令部を伺うことにしたのだが、何を考えたかバーク少将が一人私の横に座って苦虫を噛んだような顔で座っている。
港に到着するとバーク少将が先に降りて行き私はゆっくりと降りると何故かバーク少将はそこにおり「連れていけ」それだけ言うと私が並ぶのを待って歩き始める。
私は困惑しながら司令部に向かうと草鹿任一元中将が迎えてくれ、
「現状がどうなっているのか」
と聞いてきたので
「上官の了承があればお伝えする。」
そういいながらバーク少将を草鹿中将に紹介した。
バーク少将は何か有るのか少し話がしたいと言うので元司令部の中に草鹿中将は招待してくれる。
テーブルをはさんでバーク少将と草鹿中将が座りニュアンスが伝わらないときのための通訳として私が真ん中に座ったが、草鹿中将の英語は堪能であり通じない事はなかった。
どうやらバーク少将はここに進駐しに来たアメリカ海軍の同僚から草鹿中将と言う将官がおり興味をそそると言われたので会いに来たと言うと、お互いの事を話始め私は聞いているだけであり途中コーヒーのおかわりなどを私がウェイターのかわりに行き来することになり、話し合いの最後には二人から礼を言われ明日もまだ話す事になり、草鹿中将は我々二人に個室をあてがってくれその夜は陸上で寝ることになる。
翌朝も朝からバーク少将と草鹿中将は話し合いを行い、お昼も一緒にしながら話し合い夕方にはバーク少将がお名残惜しそうに私と共に長門へと戻り、翌朝シドニーへと出航した。
バーク少将は入港前とは違いすっかり親日派になり幕僚からも各艦長も驚きながら航海を続けていると、フレッチャー提督の第11任務部隊とイギリス艦隊はシドニーへ陸軍を下ろすと南下をはじめ、二日後メルボルンはすでに黒い霧に包まれておりグランドクロス作戦を作戦通りに行うことになり、先ずは航空隊による水平爆撃と魚雷攻撃を行った。
今回敵の艦影はなんと沈んだウエストバージニア級によくにており対空防御はドレッドノートとは段違いであり数は3割程だったが次々と落とされていく、しかしながら数と潜水艦からの雷撃により半数近くを沈め作戦成功かと思われたが、敵は霧の中に包まれ航空攻撃も出来ずに手をこまねいており打開策をとれずにいると闇夜に紛れ敵は反撃を開始した。
フレッチャー提督は旗艦ニュージャージーとウィスコンシンとアラバマそしてインディアナのアメリカ海軍の最強と言われた戦艦と重巡洋艦10隻を率いて迎撃する。
敵は昼間の攻撃で減らしたと言っても10隻以上はおりフレッチャー提督はその点を気にしながら夜明後に迎撃するつもりで出航した。
しかしながら敵は速度を上げて進んできたので夜明までまだ二時間ほど前に砲撃が始まる。
レーダーに映ればアメリカ海軍の戦艦が一方的な攻撃を与えることもできたが、やはり写らず目視のなか迎撃をする。
敵からの攻撃は艦上部にはダメージが通らずさすがと思われたがフレッチャー提督は夜明前の戦いを嫌いロングレンジで撃ち合える間合いになるように取り舵を指示し、先頭のアラバマが横っ腹を向けたときに喫水線辺りで次々と爆発が起きると左に徐々に傾き速度が落ちていく。
インディアナは左に避けフレッチャー提督のニュージャージーは右へとアラバマを避けていき、前に出ようとしたときにニュージャージーにも着弾があり船体が殴られたように速度が落ちていき、ダメージ回復を行い反対側に注水しながら傾くのを止めなんとか逃れようとしたが歩くほどの速度でしかなく、上甲板が波で洗われながらも反撃をした。
夜明と共に航空機と潜水艦による雷撃を繰り返し行い、残りの黒い艦隊を殲滅することができたがアラバマはひっくり返り艦底をみせて徐々に沈みはじめ、ニュージャージーは応急修理を行いながらシドニーへと入港したと報告してきて、ノール中尉は報告しながら今回は上甲板より上のダメージはさほどではなくそれよりも近距離から中距離のときにバルジ部分に命中して破壊され海水が入ってきたと言いそれは日本海軍でも考えられた水面に石を投げて跳ねてバルジ部分に当たるものでそのダメージは魚雷の比ではなく、バルジが大和などとくらべスリムなアメリカ艦隊にはかなりのダメージを与えているようだった。
私はバーク少将にこの事を知らせ距離を取るように伝えると、
「黄色い猿と同じ考えをするとはあいつらは何者だ」
そう親日になったとはいえまだ言葉は抜けきれないらしい。
言った後に少し後悔したような顔をみせ、
「フレッチャー提督にロングレンジで戦うようにと送れ」
そう言いながら我々も加わることになり、夜戦では日本海軍のお家芸でありレーダーの利かないこの戦いで進化が問われると思いZ旗を掲げるように副長に指示してバーク少将にウィンクしてみる。
私がいきなりそんなことをするので大笑いをしてZ旗を掲げることをスルーしてくれた。
私は第一戦速まで増速させると前方のアメリカ艦隊と右奥にトレッドノートがおりフレッチャー提督は左へと進ませており、私は右へと進む。
最大射定程で砲撃を開始する。慣れ親しんで練習は昔に比べてがだが初弾が敵の前後に水柱をあげて監視員から「キョウサ」そう言うと次弾装填するとこちらに気がついたが射程外でかなり手前で落ちる。
次弾は命中して先頭のトレッドノートは船脚がとまり戦列から離れ始め、目標を次に向ける。
2隻目が轟沈したところで敵の砲撃が当たる。遠距離で上からの砲撃が当たるが装甲に跳ね返され落ちていく。
私は離れながら砲撃し、敵艦艇との間に駆逐艦を突撃させ酸素魚雷を一斉に放たせると離脱をすることにして離脱をはかる。
長門は致命的なダメージはないが両舷にある副砲は破壊されており本体以外は手数の攻撃により損傷をかなり受けていた。
古い戦艦が相手なので長門でも十分逃げ切れるため駆逐艦などを逃がしつつ最後に離脱を行い、フレッチャー提督の艦隊は同じように離脱を行っていた。
トラック島で修理と補給を指示され、フレッチャー艦隊に混じって移動を開始して1週間ほどで浮きドックに入渠する。
副砲は補充できないのでそのまま鉄板でふさぎあとは補給を受ければ戦線に復帰できる。
しかし長門の主砲弾を積んでいる輸送艦がなぜかトラック島に到着しておらず落胆してバーク少将は補給部に怒りまくっている。
長門が2隻、駆逐艦隊が3隻の計5隻を沈め余計に怒っており、何度も詰め寄ってもらったがアメリカの補給部大尉は肩をすくませるしか返答しなくなった。
士気はあがっており特別休暇が認められたが長門からは誰も降りず月月日水木金金と言う風にバーク少将が、
「お前らはクレイジーだせっかくビールを準備していて楽しめるのに」
そう言いながら自分も下艦せずに見ている。
フレッチャー艦隊は1日の休息の後押し返すために出港してしまいバーク少将を含め焦りすぎて怒りをどこに向ければいいかわからなかった。
数日するとトラック島の司令部に呼ばれバーク少将と共に向かった。
中にはハルゼー提督が苦虫を噛み潰したような顔をして私たちを見るとつまらんものをみたと言う感じで窓の方に椅子を回すと後ろから陸軍少将が入ってくると私に向かい敬礼をして命令書を読み上げる。
「大平洋方面司令官ダグラス・マッカーサー元帥から金谷大佐を長門の艦長から解任する。直ちに東京へ向かい別名あるまで待機せよ。」
そう言われ私は呆然として渡された命令書を何度も読みかえす。
私は代わりの艦長を聞くと、
「犬塚惟重大佐だもう長門に着任している。」
そう言われ肩を落とすとMPと共にそのまま飛行場へ向かいC-47輸送機に乗り別れを言わないまま機上の人となった。
グアムそして硫黄島を経由して厚木飛行場に降りると私はジープに乗り換え砂ぼこりの上がる道を走る。
バラックがたって人々が商売をしているのを何となく見ながら建物に到着する。
顔をあげながらジープを降りるとそこは日比谷のGHQではなくその前にGHQがあった横浜であり呆然としていると米海軍の大尉が敬礼しこちらですと私を一室に連れていった。
中へと通されると誰かが座っているが逆光で見ることが叶わない。
私は帽子を脱ぎ脇へはさみ敬礼をする。
座っている将軍はゆっくりと立ち上がり窓を見ながら、
「大佐、戸惑っていると思うが長門で見事な戦果を上げた事によりGHQのお偉いさんがご立腹しており大人しいMR.犬塚が送られたのだ。」
私は今まで後方に置かれていたのは戦力としてみられていたのではなく、敗戦国の日本が戦果をあげ統治が難しくなるのを嫌った様だ。
「そこであちらとは仲の良いとは言いがたい私がまた君に戦果をあげてほしいので一つプレゼントを準備した。クリスマスはまだまだ先だがな」
そう言いながら窓から少し移動するとその顔が見え、ドナルド・D・アイゼンハワー元帥でありいたずらっ子な笑顔でこちらを見ている。
私は呆然と見つめ、
「元帥閣下、私にとってのプレゼントは長門であれば幸せなんです。帝国海軍最後の戦艦であり日本人の憧れと言っても過言ではありません。」
そう言うと少し頷き、
「まあそう言うのは実際見てからにしてくれ、それと今日から少将だ将官としてのふるまいを希望する。」
そう言うと星の階級章を私の襟首につけてくれた。
ドルツ中佐に
「明後日にお迎えに上がるので自宅にお送りします。」
そう言うとジープに乗り後ろには気を使ってくれたのかチョコレートやパイナップルなどの食料を積んでくれていた。
車にゆられ夕方には品川につくと皆が迎えてくれる。
水兵が次々と食料を下ろしていき皆で受け取り近所を巻き込み大騒ぎになる。
ドルツ中佐に
「MPをまわしましょうか。」
そう言われたが大丈夫と言い久しぶりの我が家へと入った。
父も母も元気で妻も元気にしておりチョコレートを弟と妹達が嬉しそうに食べている。
父は襟に星がついているのをみて驚き、心配そうな顔をしたので特に問題ないことを伝え、近況などを聞きながら早々に寝ることにしたのだが今さら気がつく私もどうかと思ったがまことが妊娠しており、元気に育っていると言うことだった。
私はお腹をさすりながら寝てしまいいつもの癖で日の出の前に起きて縁側で東京湾の方角から朝日が上るのを眺めアイク(アイゼンハワーの愛称)のクリスマスプレゼントを考えたが長門以上のものは思い付かなかった。
気がつくとまことも起きてきてヨイショと私のとなりに座ると体を預けてきた。
子供の名前は何にするかと言うことになり、正勝か美和子と言う事を母親の朝食と呼ばれるまでに二人で決めてしまい朝食の時に発表する。
まことの弟妹も大喜びではしゃぎまわり私も嬉しくてお腹を何度も撫でてしまう。
食事の後食料の買い出しと言うことになり米ドル札をポケットに入れながら闇市で色々買い物をして、時々アメリカ兵に会うが私の階級章を見て信じられないように慌てて敬礼をした。
夜は豪華にすき焼きで皆お腹一杯まで食べて就寝をする。
翌日ドルツ中佐がジープで迎えに来て私と入れ違いに食料などをおろさせ私は感謝をして皆に別れを言って出発した。
行き先は厚木飛行場でC-47輸送機が待っておりそれにのって機上の人となる。
何時間か乗り続けるとようやく着地してタラップを降りるとそこは山の中の飛行場でジープが何台か待っておりドルツ中佐と共に乗り込むと出発した。
街に降りていくと東京よりひどい焼け野はらであり異様な臭いもしており何処かと見ていると見慣れたはずのドームが見えてきて広島にきたんだと認識すると気持ち悪さにジープを止めさせると路上に吐いた。
ドルツ中佐は心配したが車酔いしただけと言い訳をしながら中心部から呉に向かって走っている。
坂を下り呉のドックが見えてくるとその中でも一番大きいドックに何かが入渠しているようでそこを目指してジープは走っていってるようで、造船所の前の門を通りすぎてドックの横に到着するとその全容が明らかになった。