雨~理由・・・
優介は出て行く龍之介の背中を見ながら小さくつぶやいた。
「優香じゃないだって・・・・・・・フッ・・・・・笑える、同一人物なのにこんなにも容姿が変わるだけでこんなにも違うなんてりゅうちゃんも所詮みんなと同じなんだ・・・・・・・・・」
そういいながら龍之介の部屋の中で机の前にポツリと座ったまま動かなかった。
自分の部屋から出て行ってしまった龍之介は、近くの公園にいた。
「なんだよ・・・・・・男としてみろって言ったくせに俺を押し倒すって・・・・・・・・あいつ何考えてんだよ・・・・・・」
龍之介はそう呟くながら自分の頭を激しく掻きむしった。
「はぁ・・・・・・」
龍之介が大きくため息をつくとそんな龍之介の今の気持ちをさらに落ち込ませるように雨が降ってきた。
(ポツポツ・・・・・・・)
「雨・・・・・か・・・」
そう呟くと誰かが怒っているかのようにその雨は激しく龍之介の頭に降り注いだが家にはとても帰れないので公園の屋根のありそうなところを探すことにした。
「なんでこんな時に・・・・・・」
雨に打たれながら龍之介は木陰を探していると後ろから誰かが声をかけてきた。
「お兄さん・・・・・・雨が似合うわね」
「誰?」
龍之介の前に現れたのは赤い傘をさした髪の長い女だった。
「さぁ・・・・・・・・「キミのもう一人の幼なじみ」とだけ言っておこうかしら?」
「は?幼なじみは優香と煉夏しかいないぞ?煉夏は女みたいな名前だけど男だし、俺の知ってる幼なじみにそんなペチャパイの女いないし~」
すると、その赤い傘をさした女は不気味な笑い方をしながら龍之介にこう言った。
「じゃあその女の子みたいなもう一人の幼馴染が性別を変えていたら?」
「は・・・・・・・・い?ということは?」
「フフフ・・・・・・・お久しぶり」
そうクスクス笑いながら答えたのは元々男だった煉夏だった。
「煉夏・・・・・・・なのか?」
「そうだけど?まさか優香も同じことしてるとは思わなかったわー」
「いやいや・・・・なんでだよお前らなんだ!性別変えるのが流行ってんのか?!」
そう龍之介が焦りながら言うと煉夏は馬鹿にするように冷静に答えた。
「そんなわけ無いでしょ!理由があるのよ、馬鹿。」
「お前ら理由、理由って・・・・・・」
「それにしても私でもあの子がなんで性別を変える必要があったのかしら?」
「ってかお前もなんで性別を変える必要があったんだよ!!」
「あほ!鈍感だから優香の気持ちにも気づかないんだよー」
元男の煉夏に言われる言葉に龍之介は意外と傷ついた。
「でも・・・・・・わかんねーもんはわかんねーんだよ」
「あっそ。ってかあんたこんなとこで何してたの?」
「家帰れないから・・・・・」
「ふーん」
そう言うと煉夏は向こうの方を見て少し微笑んだ。
そして、煉夏は龍之介の背中をたたいて慰めた。
「大丈夫よ。もうすぐ迎えが来るから・・・・・・」
「迎えなんか来るわけないだろ・・・・」
「じゃ、私ー今日海外からこっちに帰ってきたばっかで疲れてるから帰るわー」
「おい!置いて帰んのかよ!!」
「大丈夫だって!!迎えがちゃんとくるからー」
そういい煉夏は公園を後にした。
公園を後にした煉夏は大雨が降ってきたので龍之介を迎えに来た優介こと優香と対面した。
「優香・・・・・・」
「誰?」
「煉夏。」
煉夏は自分を指差しながら答えた。
「嘘・・・・・でもやっぱり・・・・・・煉夏もりゅうちゃんのために?」
優介は手で口を抑えるほど煉夏の性別が変わったことに驚きが隠せなかったが、優介はなんとなく気づいていたのだろう意外と飲み込みが早かった。
「もちろん」
「そっか」
「まだ気づいてないんか?あのドアホは・・・・」
後ろの公園を指差し煉夏は歪んだ顔を見せた。
「ふふっ・・・やっぱり性別変えても煉夏は煉夏だね・・・・・・僕は・・・・・」
そんな煉夏の言葉に優介は懐かしくなって笑いがこみ上げてきた。
「優香も変わってないよ・・・・・」
「よかった!」
優介は喜びながら胸に手を当てながら喜んだ。
「変わったんは・・・・・・・あいつだけ」
「そ・・・・・・・だね。」
一番変わっているはずがない龍之介が昔と変わったとふたりの意見が綺麗に一致した。
「龍之介は変わっちゃったけどそれでも優香は変わらない?」
「うん。りゅうちゃんがたとえ変わっても僕はりゅうちゃんでないとダメなんだ」
「私もー!じゃー優香とはライバルだなーでも、ライバルでも幼馴染だからよろしく」
煉夏はそういい優介と握手をし自分の家に帰っていった。
優介は煉夏にライバル宣言をしそのまま分かれて優介は公園にいるびしょ濡れの龍之介がいる元へ走りながら駆け寄った。
「りゅうちゃん大丈夫?」
「は?なんだよ・・・・・なんで迎えに来たんだよ」
「だって雨・・・・・・降ってきたし・・・・」
「ほっときゃいいのに・・・・・」
すると、優介は初めて龍之介に怒った。
「バカ!!心配だからに決まってるでしょ!!」
「ゆっ・・・・優介?」
「りゅうちゃんがいなくなったりしたら僕………死んじゃうよ」
その言葉を言いながら優介はその場に崩れるように座った。
そんな崩れるように座った優介を上から見下ろしながら龍之介は優介のことを見つめていた。
「死ぬって・・・・・・そんな大層なこと・・・・」
そうつぶやきながら龍之介の心の中では優介が冗談で言ったようにはとても言えず、初めて優介に怒られた龍之介はなんだか少しだけ優介が性別を変えた理由がわかった気がした・・・・・・・・・・が多分気のせいだろう。