一色≪5≫
「世界が白なら、君たちは何色なんだろうね」
白一色の世界。
全てが死に絶えてしまったかのような無機質な白い世界。
その世界に何色ともつかない不気味な色が広がる。 発光元は男の手にある一枚のカードだった。
「きゃあ!」
紗枝の悲鳴が鼓膜を揺さぶる。
「……っ! 何だ、これ!!」
状況を理解できない苛立ちを即座に吐き出して、玲斗は男を睨みつけようとした。
だがそこに男の姿はなかった。
カードだけが宙に浮き、不気味な世界に不気味な光を放っている。
「君なら期待に応えてくれそうだ」
男の言葉だけが空気を震わせ全てが黒色の光に包まれていく。
玲斗と紗枝は光に包まれ、消えた。
〜〜〜〜〜〜
男は墓石の裏から姿を表す。
「無事に扉を抜けたね。表界も捨てたもんじゃないな」
男は親指と中指をくっつけて、弾く。小気味好い音が無音で白い世界を崩す。
一瞬にして世界は元の姿を取り戻していた。青い空に緑色の葉、心地よい初夏の風。
「眼帯の彼……きっと上手くやってくれる」
うん、と一つ頷いた男は霊園の外に歩を進めた。スキップでもし始めるのではというくらい軽い足取りの彼は、はたと何かに思い当たったらしくゆっくりと減速。
入口の脇にある自販機前で足を止めた。
「そういえば、彼と一緒にいた少女はどこに飛んだのだろうか?」
口元に手を当て、片方の手は自販機に小銭を投入している。体に悪そうな色のスポーツドリンクのボタンを押し、出てきた商品をまじまじと観察。
「まあいいとしよう。扉だってこの機械のようなものだし、僕の知らないとこには出れないんだから」
気負いなく結論づけることで、彼は霊園をあとにした。