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4月6日(土) 今日から娯楽部部員だ!

「今日は暇だなー」

「そうですね」

 外は大雨。 豪雨とまではいかないが傘無しでは大変な目に遭ってしまう雨だ。 全員がテーブルに集まり、真彩は外を見、楽と詩子は読書、円は編み物をしている。

「って、言ってもいつも暇じゃないですか」

「ははは、お前って面白いこと言うなー」

 真彩の棒読み染みた笑い声と白い目。

「……噛むぞ」

「……すいませんでした」

「まぁまぁ。 たまにはこういう日があってもいいじゃないか」

「ですよねぇ。 のぉんびりしましょうよ」

 二人の言動に対し、いつもと何が違うのか楽には全く理解出来ない。

「そういや相良も入部して六日目か」

 寝転んだ真彩が思い出したかのように呟く。

「はえーなー……もう六日目とか、時間が経つのは本当にはえーわー」

「じゃあ、『あれ』をしないとね」

「『あれ』?」

「『あれ』は『あれ』だよ、相良君」

 部員達が口々に言っている『あれ』が解らない。 楽は自分を見つめる部員達の視線に恐怖を感じていた。

「相良 楽!」

「はっ、はい!」

「今日からお前を娯楽部部員として認定する!」

 そう叫ぶと真彩は制服のポケットからピンバッジを投げて渡した。

「これは……」

「見ての通りの部員バッジだよ」

『娯』と刻まれた金メッキの丸いピンバッジ……なのだが、誰も付けていない。

「あの、どうして誰も付けてないんですか?」

「無くした」

「家に置いてある」

「鞄につけてまーす!」

 詩子と円はともかく真彩がバッジを失くしてどうするんだ、と楽は考える。

「とにかく、これでお前は公認された部員だ!」

「じゃあ、今までは何だったんですか?」

「……仮入部員だね」

 詩子がひっそりと呟く。

「でも、これで相良君を名前で呼べるんですよね!」

「な、名前?」

「これは娯楽部の伝統でな。 部員は互いを名前で呼ぶことにしてるんだ。 今までのお前は仮入部員だったから苗字で呼んでたのさ」

「そうだったんですか……あれ? ということは……」

「ボク達が君を名前で呼ぶように君もボク達を名前で呼ぶんだよ」

「そっ、そんな! それは失礼過ぎます!」

 思わず後ずさりしてしまう楽。 だが、彼女達がそれを許すはずもなく……

「おら、楽! 名前で呼ぶまでは帰らせねぇぞ!」

「早くやっちゃった方がさっぱりするよ、楽君」

「ほーらー、楽君! ズバっといこうよ! ズバっと!」

 三人に近づかれ後に引けなくなってしまった。

「わ、解りました。 真彩さんに詩子さん、円さん……こ、これでいいですよね?」

「おぉぉぉぉ…… 『さん』付けとはいえ、異性から名前で呼ばれるとゾクゾクするな!」

 恍惚の表情の真彩が嬉しそうに楽の頭をポンポンと叩く。

「ふふふ……確かにこれは相当なものだな。 いやぁ、先代はなんて素晴らしい慣わしを作ってくれたのだと感謝せねばなるまい」

「これで良いお友達同士に一歩前進だよ、楽君!」

 左右から詩子と円に握手をされ、嬉しいやら何やら複雑な気分になる。

「よぉし! では、楽の部員公認を祝して今日は五時まで騒ぐぞー!」

「い、いいんですか!? 部活は四時までって決まってるし……」

「細かいことは気にすんな! 練習で夜遅くまで野球部だって残ってるんだし、職員室に『部室使用許可』を申請すれば使えるんだしよぉ!」

「そんな簡単に許可してくれるかなぁ……」

 不安になる楽だが上級生達のこの様子だとあっさり通ってしまいそうなのは確かなので深く考えないことにした。

「水にジュースにコーヒーになんでもあるぞ!」

「真彩、あまり飲み過ぎないようにね。 前にコーヒー飲み過ぎて眠れなくなって……」

「わー! わー! そんなこと言うんじゃねーよー!」

「真彩ちゃん、かっわいー!」

「真彩さん、何やってるんですか……」

 その後、楽が真彩に激しく噛まれたのは言うまでも無い事実。

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