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僕と僕

作者: 鷺沼 黒

不思議な夢を見た。


夢の中で僕を見る夢。





僕は僕を見ていた。

僕は空中から僕を、いや彼を見ていた。

僕と彼、どちらも同じ僕。


ただ1つ違うことは彼はこの世界に存在して僕はしてないということ。


僕は彼の部屋の天井付近でたゆたっている。要するに浮かんでいる。


彼から声が漏れる。目をこすっている。どうやら目覚めたようだ。


「お目覚めのようだね。気分はどうだい?」


僕はそう彼に近付いて問いてみる。しかし、返事はない。まあ、当たり前のことなのだが。彼からは僕の姿も声も何も()えていないのだから。


彼は今日の活動を始めた。僕は彼の行動に合わせて少し後方を常について回る。


彼は鞄を持ち、玄関に向かう。それに勿論僕もついて行く。


今日休日だった筈。一体どこに行くのだろうか。


僕の目の前で扉が閉まろうとする。でも、慌てて隙間をすり抜けようなどとはしない。僕にとっては扉一枚通り抜けることなど容易いからだ。


 完全に扉が閉まる直前、彼は見ていた。その目は自分を確かに直視していた。






 彼は散々歩き回った後、ある寂れた公園に足を踏みいれた。

人っ子一人いない。

公園全体が日陰で薄暗い。

申し訳程度に設置されているブランコも錆びついて今にも壊れそうだ。

遠くでカラスが鳴いている。


 不気味、そうとしか表現出来ない場所だった。


 ここはどこだ……?

 僕はこんな公園なんて知らない。


 見ると彼は公園のちょうど中央あたりにこちらに背を向けて立っている。


 僕はどこか、漠然とした不安を覚えながらも彼に近づいていく。


『ここがどこだか分かるかい?』


 突然頭に声が響いた。


 これは僕の声だ。


 そして彼の声。


『分からないのか。まあ、しょうがないのかな。』


 響く声は言葉続ける。


 彼は未だ僕に背を向けている。


『僕達は同じ存在だけど、存在する世界は違うから。』


声は一拍置いて、


『やあ、ようこそ。ここは時空の狭間だよ。』


その言葉と共に彼はこちらを向いた。


彼は僕のことをしっかりと見据えている。

彼からは僕のことは見えていないはずなのに。


僕は恐怖した。

目の前に居るのは同じ僕のはずなのに、僕は彼の考えが分からない。

何故見えているのか分からない。

分からない分からない分からない。


ナンナンダコイツハ


『そしてさようなら』


彼が右手を伸ばしてくる。


僕は身をよじって逃れようとする、しかし身動きが取れない。


それどころか僕の意思に反して左手が勝手に彼に合わせるように動く。


二人の手のひらが合わさる、その瞬間溶け込んだ。


意識が薄れていく。


最後に見たのは口角をあげにやりと笑った彼の姿だった。





目覚まし時計が鳴り響く。


「ああ、なんて良い目覚めなんだ。」


“僕”はそう言って笑った。

んー、短編初めて書いたけどどうなんでしょう?

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