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ゾディアック・サイン 5章・下「折鶴カプリコ」

星見町とは少し遠い場所「星見山」

そこに聳え立つ屋敷に迷ってしまう神崎由香・毒島裕太・鬼塚綾の三人。


屋敷の主「神倉雪音」はこの三人を

始末しようとするが思わぬ客人も現れて!?

一方カプリコとサジタリウスの対決もついに火花を散らすのだった。


「順位」を巡る星霊サバイバル第5章ここに完結!!



「では始めようか。サジタリウス」

「一対多も、悪くはないでござるな!」

大きな倉庫前。

そこにいたのは、忍者のコスプレをして、二丁拳銃を持った異様な格好の男。サジタリウス。

タキシード姿で、髪は白。とても気品を感じる立ち振る舞いで、その異様な男を見下す男。

そしてタキシードの男の眼下には、真っ白な紙で出来た『動物』が多数存在した。

「行け。」

その言葉と共に紙で出来た『動物』たちがサジタリウスに向かって突進を始める。

サジタリウスは無言のまま銃を向け、その紙たちを消し去っていく。

弾丸を放つたびに、高い銃声が響き渡っていく。

まるで舞うがごとく身体を蹂躙させ、弾丸を放つ。

獣の突進をいなし、確実に獣を潰し続ける。

流石こと戦闘力だけなら星霊TOPを名乗ってはおらぬか。

「そんなところで高みの見物たぁ!余裕でござるな!!」

すると、一瞬の隙をついたサジタリウスの弾丸が、こちらの心臓部を狙って飛んでくる。

その弾丸は、こちらの心臓を貫く。

「ふっ、貴様の攻撃など……。造作もないのだよ」

そう言った我、カプリコの身体は突如紙となり、バラバラと散っていく。

「ぶぶぶぶ、分身の術でござるかぁぁぁ!!?」

なぜかサジタリウスが、物凄くテンションが上がり我を無邪気な目で見ていた。



「ふっ、貴様は我の能力を知ってるだろう?」

我はサジタリウスの背後に回り、真っ白な剣を奴の腹部に突き刺す。

「―――っ!?」

サジタリウスは腹部を刺されたことによる激痛からか、口から赤い液体を吹き出す。

「お前が私の存在に気付けないのはどうしたものかな?」

我は不敵に笑みを見せる。

腹部に突き刺さった真っ白な剣は赤くにじんでいった。

「―――っ!?」

その直後、銃声が響き渡る。

「……て、手塚殿?」

「はぁ、サジよぉ。てめぇ忍者みたいな事されてテンションあがったからって、そんな隙だらけじゃダメだぜ?」

我は目を見開きながら、振り返る。自分の腹部を打ちぬいたのはサジタリウスじゃないからだ。

そこにはジーンズパンツに、柄のないただの黒いシャツを着て、帽子で顔を隠してる男が、ライフルを持っていた

「射手座の…占い師…」

「ご名答♪俺っちの名前は手塚隆吾。サジのパートナーで、射手座の占い師だ」

「……行け」

我は我らを囲んでいた紙動物たちをやつに突進させる。

手塚と名乗った男は無表情のままライフルを構え、銃声を響かせる。

「へぇ~紙で出来てるって言っても性質は一緒なんだぁ。頭撃てばすぐに死ぬじゃん♪」

にやりと手塚は笑った。こいつ…普通の占い師じゃないな?

「カプリコ殿!拙者を無視してはいけないでござるよ!!」

サジタリウスの声に驚き、我はバックステップで距離を取る。

その直後に響き渡る銃声。恐らく距離を取らなかったらもう一発次は心臓部にきていただろうな。

自分の弾丸が外れたのを確信したあとサジタリウスもステップの要領で動き、自身のマスターの横に着く。

「さあ、サジ!山羊狩りと行こうぜ!」

ライフルを手から肩に降ろしている手塚はサジタリウスに対していった。



「うむ!一対多ではなく…二対多になったでござるからな!」

そうは言うが、流石に不味いかもしれない。

サジタリウスも、我も致命傷を負った。向こうのマスター自体もどうやら戦力になりえるようだ。

二対多ではない。実際は二対一ではないか!

我は両腕を左右に大きく広げる。

現れた折り紙は、宙で自ら折りたたまれていき、紙飛行機の形になっていく。

「おぉ~すっげ。マジックみたい…」

「あれが本来のカプリコ殿の能力でござるよ。『紙私兵』…紙に生命を与え、武器にする能力でござる」

「なるほどねぇ~。後ろの化け物たちも紙で出来てるのもそのためか……」

「のたうち回っている場合ではないぞ!」

我はそう叫び、作り出した無数の紙飛行機を飛ばす。

まるでミサイルのように飛んでいくそれは、二人の弾丸では捕らえきれない。

「なら…こうすればいいでござる!!」

サジタリウスは拳銃を上空に放り投げる。拳銃は光に包まれ消滅し、代わりに巨大なハンマーが現れる。

「うぉぉぉぉら!!!」

ハンマーを手に取り、大仰に振りかぶるサジタリウス。

二人を狙って飛んでいた紙飛行機が、全てハンマーによって叩き落される。

これが、サジタリウスの能力である。

『軍事倉庫』…一定の場所にあるものならなんだって召喚できるというものだ。

拳銃の弾がなくなればまた違う拳銃を召喚すればいい。やつの武器は無限に存在するということなのだ。

サジタリウスはまたハンマーを消滅させ、拳銃に取り替えた。

「さあ、次はどうくるでござるか?」

「……くっ」

ここは撤退するべきか……。

いや、拳銃を使う相手に背を向けるのは一番愚かなことだ。

「・・・・ふ、ではこう行かせてもらおう!!」

我は再び、倉庫に眠っていた紙動物たちを散開させた。






--------------------------------------------------------------------------------




「ん~二人ともどこ行っちゃったのかなぁー?」

あたしは大きな廊下を歩いていた。一緒にきた毒島くんと綾ちゃんが勝手に行動するから迷子になった

二人を探すためにこうして歩みを進めているわけだけれども…

「あの二人いないなぁ」

さっきから歩いているんだけど、誰とも出会わない。

「あれ、なんだろ?」

そしたら目の前に、よくわかんないひらひらがいる。あれって、一反木綿?

「シンニュウシャハッケン。ハッケン」

「あれ!?言語は意外と近未来的!?」

あたしがそんな言葉を発しているのも無視して、一反木綿はあたしを追いかけてくる。

「やばい!どうしよ!!」

って言っても仕方ない!とにかく走ろう!!今は走ろう!!

きゃぁー!!意外に早いよ!あの一反木綿!走る筋肉がないじゃん!!どうしてなの!?

「ぎゃー!前からもきたぁー!」

前からもう一匹の一反木綿。なんてこったい!

と、とにかく部屋に…あった!!

「…ふぅー」

ドアを閉めて鍵を閉める。ドアにはまだバン!バンバン!!と音が響く。

改めて部屋を見渡すと……なんだろう。この部屋。すごい、モニターがいっぱいだ。

監視ルームなのかな?この屋敷のいたるところの映像が見える。

「あ!毒島くんたちいた!!」

あたしはモニターの一角に毒島くんと、綾ちゃんが映りこんでいた。

どうやらあたしが追いかけられていたよりも多くの一反木綿と毒島くんが闘っていた。

「あ……毒島くん、星術使えるようになったんだぁ…」

あたしは思わず嬉しくなってしまう。一度あたしが消してしまった彼の夢。ちゃんと叶ったんだね…。

「…どうして?」

「――っ!?」

どこかからそんな声がした。ここの家主!?

あたしはもしかしてやばい状況にあるのかもしれない

不法侵入した屋敷のモニタールーム。

絶対やばいじゃん!!

あたしは恐る恐る振り返る。そこには見知った人の顔があった。

「どうして…あなたがいるの?神崎由香…」

「え?こ、この家って、神倉さんの…なの?」

あたしは驚いた。

あたしの目の前には、驚いたような表情であたしを見つめるメガネ美少女。

ドレス姿だから一瞬焦ったけれど間違いない……クラスメイトの神倉雪音さんだった。





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しまった…。ただ私はそう思った。

少しお手洗いに行くだけのはずだった。だからパソコンも持って行かずに行ったのだけど…。

戻ってきたら、なぜか私の部屋に、神崎由香がいた。敵だ。

「……ちょうどいいわ。あなたをここで捕まえる」

私はそういいながら、懐に入れてあったカプリコに作ってもらった武器を取り出す。

この程度なら私でも使えると言ってくれた防犯グッズだ。

「え、ちょ…ちょっと待って!勝手に入ったのは謝るから!捕まえないでぇー」

ほぼ泣きべその神崎さんは慌てた感じで私に問いただしてくる。もしかして気付いていない?

「…捕まえる!」

「いやぁー!」

神崎さんは悲鳴を上げながら逃げる。

ドアの方に逃げるが、恐らく紙人形たちが前にいるはずだ。逃げられない。

「あっ、外さっきの怖いのいんじゃーん!!」

今頃気付いたの?本当にこの子はバカなのかも知れない。

「…大人しくして」

「ま、待って神倉さん!どうしてあたしを捕まえんの!?謝ってるじゃん!そんなので縛ろうとしないでよぉー」

彼女の問いに、私はあの人のことを思ってしまう。

いつもぶっきらぼうだけど、優しくしてくれる…彼。

「あの人のため。私はあの人を…一位にする」

「…え?」

どうやら彼女も今の言葉で気付いたようだ。うん、もうめんどくさい。いっそのこと名乗ってみよう。

「そう、あたしは山羊座の星霊『カプリコ』の占い師……。神倉雪音よ。獅子座の占い師、神崎由香!!」

私はそういいながら、カプリコから預かった捕獲ようの紙鞭を彼女に目掛けて振るう。





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やばい!神倉さん本気だ!!

まさか神倉さんがこんな金持ちのお嬢様だったなんて!しかも山羊座の占い師だったなんて!!

どうしよう!!あたし彼女に捕まっちゃう!!!!

「……あれ?」

あたしは怯えたまま目を背いたのだが、なぜか何も起こらない。

目を開けると、自分の鞭に引っかかってる神倉さんの姿があった。

「………っ!!」

慌てて解こうとしようとして、さらに絡まってるご様子。

もしかして神倉さんって……ドジっ娘?

相当恥ずかしいのか、あたしを目くじら立てて涙を浮かべながら睨んでくる神倉さん。可愛い…。

「あーちょっと。動いちゃダメだよ。余計絡まっちゃうから」

あたしは彼女の方に言って、その鞭を解く。鞭と言うよりかは、長い縄と言ったほうが正しいかな?

しかも少し粘着力がある。カプリコって星霊さんが渡したものなのだろう。

全てを解いて、また攻撃されないようにぶっ壊しておいた。

「…私はあなたを捕まえるの!」

彼女はあたしから逃げるようしたあとノートパソコンの方に向かい、片手でキーボードを叩く。

すると、バゴンッ!!と豪快な音と共に背後の扉が破壊される。振り返るとさっきの紙の人形だ。

「私はあなたを捕まえる!そしてレオンの人質にして自害してもらうの!!

 そうすればカプリコの相手は一人減るんだから!!」

彼女の目は本気だった。

本気で…あたしを捕まえる気なのは窺えた。

何が彼女をここまでやる気にさせているのだろうか?

「…あなた、獅子座のレオンは?」

神倉さんが、問いかけてくる。

「レ、レオンは……わかんない。探しにきたら、迷ってここに着ちゃって…」

「…そう。貴方たちが最近活躍してるのは知ってる。全て見ていたから…」

「全て…?」

「うん。全て。最初の闘いから、毒島くん達との闘い、エリーの闘いも見てた。全て……」

「そ、そんな…」

この子、もしかしたらすごいのかもしれない。このモニタールームもそうだ。この部屋全体が見えている。

情報量もものすごいものなのだということも窺える。私だけじゃない。きっと他の星霊たちのことも。

「だから、わかる。貴方達の信頼度が。あなた達はお互いの結束力がすごい。」

神倉さんが手を強く握り、なぜか悔しそうにしている。

「だからこそ私は貴方たちを倒して、証明する。私の彼に対するものを証明する」

あ、わかった…。この人、カプリコって星霊のことが好きなんだ。

あたし達を倒して、自分の愛する人を上位にするために。

クラスで彼女のことはちょこちょこ目に付いていた。

とても大人しい。無表情で何考えているかわからない子だった。

誰とも慣れあおうともしない。ある意味あたしとは正反対の子だった。

そんな子が今、目を赤くして、とても真剣で、感情を露にしてあたしを睨みつける。

これが彼女の本気なんだと…すぐに判断できた。

「これで獅子座は…チェックメイト」

彼女は、そう呟きながらインターキーを叩く。

その直後、止まっていた紙人形が一斉に襲い掛かってきた。



「あらら♪♪偶然きたらとんでもない修羅場に来ちゃったですわ♪」

「――ッ!?」

あたしは襲われると思っていたのにまたも驚く。紙人形が襲ってこないのだ。ってか今日驚くの何回目!?

「………リブラ!!」

神倉さんが悔しそうに下唇を噛み締めながら言った。



そう、今あたしたちの目の前に現れたのは―――天秤座のリブラなのだから。

「あなたの記憶……奪いにきましたわ♪」

彼女の微笑みは、何か恐怖が始まる予兆のように感じた。




                       ☆




「あなたの記憶……奪いにきましたわ♪」

あたしと神倉さんの目の前に現れたのは……。

レオンとパートナーになって初めての戦いのときに現れた…リブラだった―――――――。



「き、記憶を奪いにきた?」

神倉さんが怪訝そうな顔をしてリブラを睨みつける。

「えぇ、そうですわ♪わたくしの能力をご存知でしょう?」

「………他者と対象物を『平等』にする」

「正解ですわ♪そう、わたくしは触れた相手と何かを『平等』に出来るんですわ♪♪」

不敵に笑うリブラ。

ってか……あたし完全に蚊帳の外だなぁ…こりゃ……。

助けてくれたのは嬉しいけど…

「それで……私が目的?」

「えぇ♪そうですわ、はっきり言います。

 あなたの情報量は物凄いものですわ♪うちのマスターがそれを欲しがってしまいましてね…」

その話を聞きながら、神倉雪音はまたキーボードを叩く。

さっきもやっていたけれど、どうやらあれであの一反木綿を操っているのだろう。

リブラが壊した扉からうじゃうじゃと一反木綿が現れる。

「あらあら♪わたくし、あんまり戦闘は好まないのですが…」

そういいながら辺りを見渡すリブラ。既にあたしとリブラは四面楚歌状態になってしまった。

「えーっと、神崎由香ちゃんでしたっけ?あららぁ~李里香ちゃんにそっくりですわ♪

 妹さん…じゃあないようですし、こんな偶然あるんですわね♪わたくしのことはリブラさんとでもお呼びください♪」

なぜかあたしを見つめて独り言を呟いた。

そんなことをしている間に、神倉さんの操っている一反木綿が襲い掛かってくる。

リブラさんは笑いながら、一反木綿の頭部にその顔ほどの大きさの大きな鈴をぶつける。

まるで「舞い」を踊っている巫女のようだ。彼女の和服がより一層そう思わせる。

「……まずいですわね…」

「え…」

ある程度一蹴した後、また囲まれるあたし達を見かねて、リブラさんが呟いた。

「これ以上はどうしようも出来ませんわ……」

「ちょ、ちょっとリブラさん!?」

「わたくし実は弱いんですの…協力してあげますから……逃げますわよ!!」

「ちょ、えっ、えええええええええええええ!!!」

リブラに突然引っ張られて壊された扉まで走らされる。

ちょ!どういうことなの!?あたし間違って神倉さんの家に入って

そしたら神倉さんが山羊座の占い師で!そしたらリブラさんが来て、なんであたしリブラさんと逃げてるのぉ!?



あたしの叫びは虚しく、リブラさんに引っ張られていってしまった―――――――――。



--------------------------------------------------------------------------------




「くっそ!キリがねぇよ!」

僕は流星鳥に乗りながら向かってくる紙人形を『爆鳥』で破壊していく。

これは「星鳥」と同じぐらいのサイズで、なんとミサイル機能付きの爆弾みたいになってくれる。便利爆弾だ。

「おっしゃー!やれー!!毒島ぁー!!」

後ろで野次を飛ばす鬼塚の言葉に当てられながら爆鳥を生成しては放つ。

止まったらダメだ。止まった直後に流星鳥も消えて囲まれる。そうなったら大変だ。

「それにしてもお前すっげえな!!なんだよこの鳥!かっけぇ!」

鬼塚は僕の肩に首を乗せて、身体を僕に任せるような形でもたれかかる。

「そっ、そうだろ!?ってか鬼塚……当たってる…」

「ん?何が??」

「もう……いいや////」

「ん??」

どうやら気付いていないらしい…ってかその、結構大きい……


「お、おい!!毒島!前!前!!」

「えっ?あ、やっべ!!」

僕が何かぼーっとしてたら、鬼塚の声がした。意識を戻すと、壁に衝突する直前まで来ていた。

僕は慌てて流星鳥を右折させ、なんとか衝突を免れる。

「お、おい毒島!!」

「うわっ、やっべ!!」

右折したのはいいが、その前には大きな扉があった。しかも曲がり道がない!?

やっちまった!これは……ぶつかる!!

「鬼塚ぁ!しっかり僕に捕まってろ!!」

「お、おう!!」

そういうと、鬼塚はぎゅっと僕に身体を寄せる。

僕はそのまま扉で止まらないように、さらに流星鳥の速度を上げる。このままぶっ壊す!!



ドガンッ!と物凄い音と共に、大きな扉が壊れる。

壊れた直後、流星鳥は消滅して、僕と鬼塚は地面に放り投げられ、転がる。

「お、おいっ!毒島!?大丈夫かぁ?」

僕の胸から声がする。鬼塚だ。彼女を庇って背中を強打した…すっげえ痛い……。

「ふっ!来たな!!侵入者!!」

「「――っ!?」」

僕と毒島が身体を起こすと、どこからか声がする。

「ここだ!ここ!!」

そう急かされるので、辺りを見渡す。

どうやら一階と二階の境の屋根がない大広間のようだ。その上に、なにやら人影が見えた。

「はっはっは!!やっと気付いたか!侵入者よ!!」

そういうと、その人影はこちらに飛び降りてくる。

ってあれ?他のところからもなんか人影が来てるんだけど……。

「ペパレッド!」

「ペパブルー!」

「ペパグリーン!」

「ペパイエロー!」

「ペパピンク!!」

「「「「「我ら五人そろって!ペパレンジャー!!!!」」」」」

な、なんだ……こいつら…。

突然俺たちの目の前に現れた五人の紙人形。

いや、紙人形と呼ぶのは失礼か。紙で出来てるのはわかるのだが

その形状は、まるで本物の戦隊ものシリーズの衣装のような立体的で、複雑な形状をしている。

中に人が入ってるといわれても、何も疑問には持たないだろう………。

「貴様の情報は知ってるぞ!毒島裕太!!元スコーピオンの占い師だな!!」

目の前のペパレッドと名乗る男(?)が俺を指差し言ってくる。

こいつ……年間星座占いのことを知ってる?もしかして星霊か何かか?

「な、なあ毒島。どういうことだよ。占い師って……」

「悪い鬼塚。この屋敷出れたら神崎と一緒に説明してやる…」

「えっ!?その占い師ってのって神崎も噛んでるの!?」

「あぁ……」

「それであんたら最近やけに仲良かったのか…あたしゃてっきり出来てるのかと……」

「はぁ!?僕と神崎が出来てるわけないだろう!?

「そ、そうだよな!!はっはっは!!………よかったかも…」

「ん?なんか言ったか?」

「なんも言ってねぇよ!!」

なんか、ここにきてから鬼塚が変な気がする…気のせいか?

「お、おいっ!侵入者ども!我々を無視するでない!!」

そんで、なんかレッドがこちらに怒鳴り散らしてくる。あ、そうだ。こいつらいたんだ。

「あんたら……星霊か?まさか複数いて単体の星霊もいるんだな」

「ふっ,我々はカプリコ様の兵士!そして…雪音様の下僕!!よってぇ!貴様らをここで潰す!!いざ!!」

その言葉を合図に、ペパレンジャーの五人が僕達に目掛けて突進していく。

どうする?星鳥で捕獲か!?

僕はそう考え、目前に五匹の星鳥を生成する。

「GO!」

僕の合図で星鳥は飛ばす。全員の目の前まで来て、星鳥は解体し、ワイヤーになる。

そのワイヤーはペパレンジャー全員に絡まる。よし!これで終わりだ!!

僕は目前に。また『爆鳥』を生成する。絡まって動けなくなった奴らに爆弾を見舞いしてやる!!

手の合図で爆鳥もペパレンジャーに向けて放つ。これで爆破だ!

「ふっふっふ…。若造が。我らペパレンジャーを舐めるなよ!」

いきなりそう叫びだすレッド。すると彼らの身体はくしゃくしゃと動き始める。

そして、ただの紙に戻り、星鳥の呪縛から難なく逃げていった。

風に流されていく折り紙たちは、地面に落ちると、再びくしゃくしゃと折りたたまれていく。

「ペパレッド!!」

「ペパブルー!!」

「ペパグリーン!」

「ペパイエロー!」

「ペパピンク!!」

「「「「「五人揃って、ペパレンジャー!!」」」」」

折りたたまれて、元の形になった五人は、再び決めポーズを決める。

やっべえ、こいつら……ふざけてるけど、すっげえ厄介じゃねぇか…。


「な、なぁ…あいつら……よくわっかんねぇけど、変だな…」

「そ、そうだな……」

僕たち二人は、目の前の戦隊ヒーローに…絶句した。

「なっ!我々が変だと!?褒めても何もねーぞ!」

「「褒めてねーよっ!!」」

「いざ!参る!!」

再び五人は僕達に向かって走ってくる

もう一度爆鳥だな!!

あの五人なら避けられる恐れがある。だったら

「――――っ!?」

「ほぉ、十体も召喚されるか。それは厄介だな…」

レッドが冷静に俺を見て言った。そう、俺の前には爆鳥が10体いるのだ。これなら…!!

「いっけぇー!」

手の合図と共に十匹をミサイルのように放つ俺。

「全員!死ぬ気であの坊主に向かえ!」

「「「「ラジャー!」」」」

レッドの号令と共に全員こちらに向かってくる。なぁに、絶対俺たちまでは届かねぇ!

「―――――っ!?」

「慢心は行けないなぁ…。貴様なら同時にバリアを張ることも出来たんじゃないのか?」

レッドがにやりと笑いながら僕の腹部に拳を減り込ませる。紙なのになんて硬さだ…!

殴られた後、爆発音が響き渡る。どうやら爆発したようだ。

「…ふっ、奴らめ…流石は俺の仲間だ。爆発で屋敷が壊れないように身で護ったか…」

そう呟いた後、レッドが僕を蹴り飛ばす。

「毒島ぁ!」

「ふっ、俺は紳士なんでね。女性には攻撃しない。よかったな…」

叫ぶ鬼塚に物凄い顔を近づけて、レッドは言い放ち…また紙に戻っている仲間たちの方へ向かう。

「も、申し訳ありません。レッド……この衝撃では、修復に時間が掛かります…」

「あぁ、いいさピンク。たまには一人で闘うさ」

「本当に…申し訳ありません……出来る限り早く修復しますので…」

ただの紙が話しているのはなんともシュールな光景だが…この環境で笑えない。

ってかまずレッドに蹴り飛ばされてすっげえ痛い…。

「ぶ、毒島!毒島ぁ!!」

歪む視界の中で、鬼塚が叫んできてくれるのを感じる。

しっかりしろよ…僕……。目の前で女の子が泣きそうな顔になってんだぞ…!

せっかくレオンさんに貰った力なんだぞ……!!

「お、おい…!毒島!だ、大丈夫なのかよっ!」

僕は一度大きく目を閉じて、瞬きをする。視界が元に戻る。

そして僕は立ち上がり、今は一人しかいないレッドを睨みつける。

「お、鬼塚…聞いてくれ」

「な、なんだ!?」

「お、お前……剣道やってたんだよな…」

僕はそういいながら、脳内で術式を作る。

手に現れたのは、半透明で出来た剣だ。

「これなら、鬼塚も使える……へへっ、格好悪いけど、お前も闘ってくれ」

「え、それ出来るの!?」

「この剣なら、出来る。僕一人じゃああいつに勝てる気がしないんだ……悪い」

「いや、謝るなよ。燃えるじゃねぇか!!」

少し笑いながら、僕が作った剣を取る鬼塚。

「なら!二人で倒しちゃおうぜ!!向こうが戦隊ならこっちは悪の幹部とその子分だ!」

「その子分ってもしかして俺?」



鬼塚は剣を取って、格好をつけたポーズをする。

僕もどうせならとかっこいいポーズを取って、決めてやろう…。



「ふっ、面白い!我らペパレンジャーを倒せるものなら倒してみろ!」



こうして、俺と鬼塚VS,ペパレンジャーの闘いが始まった。



                      ☆


「困りましたわね…」

「あ、あの!リブラさん!?」

あたしは引っ張られながら屋敷の廊下を走る。

走る度に、顔ぐらい大きな鈴ががらんごろんと音を鳴らしている。

「あ、あの!この前のレオンとバルちゃんと闘ったとき強かったじゃないですかっ!」

あたしは彼女に向かって講義してみる。

あたしが始めて彼女を見たときだ。それはそれはすごかった。

あのレオンの拳を片手で止めて、バルさんの弦のスピードに追いついてその鈴で相殺していた。

あの時のリブラさんには少し恐怖を覚えるほどだ。



「そうですわねぇ。詳しく言ったらレオン君にわたくしの能力をバラすことになりますから

 少々ぼやかしますが、要はじゃんけん理論なのですわ。カプリコとわたくしはいわば「グーとチョキ」

 わたくしの能力とカプリコの能力では絶対に勝てないのですわ。だからこそ逃げているのです♪」

あたしは思わず絶句した。

彼女の言った言葉は丁寧で、あたしでもわかるものだったからだ。先生とか向いてるかもね。

「あ、そういう意味ではレオンはカプリコと相性は完璧ですわ。じゃんけん理論で言うならレオン君がグーで

 カプリコ君がチョキですわね。あれだけ多くの紙の兵士を作っても一体で暴走的に強いレオン君には無駄です

 それに彼はいざとなれば治癒能力もある『天使喰い』がありますしね♪あ、良いこと思いつきましたわ♪」

「ん?」

そういうと、突然リブラさんが足を止める。

あたしも、それにつられて足を止めた。

「えっと神崎さん。「CALL」は使えます?」

「『CALL』?」

「あらぁーどうやら知らない様子ですわね…。仕方ないですわ」

そういうとなぜか手であたしの頭をぽんっと叩く。

「わたくしと神崎さんの『CALLについての知識』を平等にしますわ♪」

そういわれた直後、あたしの脳内に何かが一気に駆け巡ってくる。

すごい。本当に流れてくるようだ。

「それが「CALL」ですわ♪星霊にとって占い師は弱点でもありますので♪こういう星術もあるのです♪

 まあそういう詳しいことは毒島君にでも聞けばいいですわ♪でも、「CALL」の仕方はわかってでしょう?」

そういうリブラさんにあたしはこくりと頷いた。

そう、さっきの流れてきた情報であたしは完璧に「CALL」が出来る。

えっと…脳内に術式を組むんだよね。あー結構めんどくさいな。

毒島くんって毎回これを頭の中でやってるの?ちょっと尊敬してきたよ…。

「…できた!」

「そう♪でしたら発動してくださいまし♪」

「『CALL』!!」

そう大声で叫んだ瞬間。

あたしは光を放ってしまう。その光は屋根をすり抜けてどこかへ飛んでいった。

「えっと…」

「まあ、簡単に言うSOS信号を星霊に送る術ですので,来るのに時間が掛かるかも知れませんわね♪」

「じゃあそれまでは…」

「逃亡になりますわ♪ただ…レオンに見つかると、面倒なのでここからは別行動ですわ♪」

そういうと、リブラは手を横に振りながら、あたしを見た後、あたしに背を向けて去っていった。





--------------------------------------------------------------------------------



「…さ、早苗?」

「―っ!?」

俺は寝ぼけ眼で見た、目の前の女性を見て、自然と言葉が出てしまった。

早苗。

過去の俺のパートナーであり、そして俺が殺した女性だった。

その彼女にそっくりの女性が今、俺の目の前にいるのだ。不思議でならない。

これは夢なのだろうか?早苗は確かに死んだ。あのとき、死んだはずなんだ…。

「どうして、あなたがいるの?獅子座のレオン…」

目の前のワンピースの美女は俺を見て言った。ん?俺を知ってるのか?

もしかして……星座占い関係者か?

「…てめぇこそ、何でここに来たんだ。一体何もんだぁ?」

俺は少し睨みを聞かせて目の前の美女を睨む。

早苗を睨んでいるようであまり心地よいものではなかった。

「…教えます。私は松原李里香。旧名は豊穣李里香と言うの」

「――っ!?」

俺はそのとき、寝ぼけていた眠気が一気に冷めた。

豊穣李里香?どういうことだ。早苗の苗字も豊穣だったはず……。

「動揺してるね。獅子座のレオン…私は松原李里香。現在の双子座の占い師よ」

「―っ!?」

「さらに言えば、その墓に眠る女性。豊穣早苗の妹なの」」

「い、妹…!?そうかぁあいつに妹が…」

「ん?貴方。お姉ちゃんとはどういう関係なの?」

次は向こうがこちらを睨んで問いかけてくる。

そうだよな。俺は答えなくちゃいけないよなぁ…。

「豊穣早苗は、俺のずっと前の占い師なんだ…。そして――」

そう言葉を紡いだ瞬間だった。

脳内に信号が走る。「CALL」か。

由香のやろう星術は使えなかったはずなんだが…。

ってか裕太のやろう何やってるんだ。あいつに保護役を頼んだってのに。

いや、裕太一人じゃあ処理しきれなくなったのか?ってことは…他の星霊と闘ってるのか!?

今すぐにでも由香のところに行ったほうがいいな。これは

「悪い。長い話は出来なくなった。けれど、これだけは言って……いや、謝っておく」

そう言って、俺は一度空気を吸い込む。こいつ。松原李里香には、はっきり言わないといけない。



「お前の姉、豊穣早苗を殺したのは、俺だ。本当に…悪かった。じゃあ、俺は呼ばれてるから」

俺は、いち早く逃げ出したかったという本音を隠して、彼女の下を去った。

あのままいたら

俺は罪悪感に押しつぶされて、恐らくあの場で彼女に殺すように言っただろう。

でもそれじゃあダメなんだ。今の俺は自分勝手に動いていい奴じゃない。由香を護らないといけない。

また、同じ過ちを、繰り返したくないから。




「そ、そんな…」

あたしは思わず持っていたケースを落としてしまう。

ちょうど十年前だっただろうか。あたしがこの木に来たのは。

両親が離婚した。あたしはお父さん側にお姉ちゃんはお母さん側についた。

そしてその後少しして、お母さんが死んだことを知らされた。


それからあたしは気になってお姉ちゃんを探した。

すると山の小さな小屋に一人で暮らしているというのを知った。

あたしはすぐに駆けつけた。けれど家にはお姉ちゃんの姿はなかった。

どこかにいるのかな?と辺りを探してて見つけたのが、この木だ。

この木に…お姉ちゃんの死体と、少しだけ掘られた穴があったのだ。

あたしはこのとき、思わず吐いてしまうほど泣いていた。恐らく死体になって数日経ったのだろう。

少し腐っていて、激臭がしていた。それがあたしの愛したお姉ちゃんだとはすぐ気付いた。だから泣いた



途中まで掘られていた穴をあたしが最後まで掘った。

そしてそこにお姉ちゃんを埋めた。この大きな木がお姉ちゃんのお墓なんだ。と。

死体だったお姉ちゃんの顔は、とても安らかで笑っていた。



レオンの一言で、あたしは全てを理解した。

あのときの少しだけ掘られた穴は、きっとレオンが掘ったものだろう。

星座占いのルールでは、占い師が死んだ場合も敗北とみなし消滅する。

きっと、お姉ちゃんが死んだことでレオンが消滅した。穴を掘る途中で……。

それだけでレオンがお姉ちゃんのために一生懸命なのはわかってる。

お姉ちゃんのあの顔でレオンに信頼を置いていたのもわかってる。

レオンが、ただ残虐にお姉ちゃんを殺したわけではないこともわかってる。



けれど―――「怒り」と「憎しみ」を抑えることは出来なかった。


「許せない…!獅子座のレオンッ!」


あたしの目は、涙でいっぱいとなり、その顔は恐ろしいまでに怒りに歪んでいた。




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「行け!」

「無駄でござるよ!カプリコ殿!」

紙で出来たミサイル弾を複数放つも、全てサジタリウスと、手塚隆吾と言う男に相殺される。

「サジ!そろそろ銃閉まって近距離系の武器で行け!」

「御意!」

そう言い手塚と言う男は自分の持つライフルで俺の紙ミサイルを打ち落とす。

さっきの一言。困ったな…。

我の行動先に読まれていた。サジタリウスも手強いが…あのマスターも只者ではない。


我は地面に降りて、即座に紙でナイフを二本作る。それを両手で持って、片方をある一部分に放り投げる。

これは最終兵器だったが、使うしかない!

投げたナイフの行き先はひとつのコンテナ。

我はそれを確認することもなく、やつらに突っ込む。

「くっ!来いでござるカプリコ殿!」

サジタリウスもクナイを構え戦闘準備に入っている。

我はもうひとつの持っていたナイフを勢いよくサジタリウスに目掛けて投げる。

やつはこれを簡単に払いのけてしまう。

再びナイフを四つ生成し、またやつに放つ。

ちらりと手塚の方を見る。まだ飛んでいる紙ミサイルに翻弄されている。



そして「ぐさっ!」と何かが刺さる音がした。コンテナからだ。

これで…勝機が見える!

「―っ!危ないでござる手塚殿ォ!」

俺の攻撃を避け、何かを察知したのか手塚の方へ走るサジタリウス。

これでいい。これで後は我も紙で防御壁を―――。

「――っ!?」

胸に激痛が走る。

弾丸を貫かれていたようだ。

苦痛に耐えながら、見てみると、手塚に一発お見舞いされてしまったようだ。




そしてその直後に、コンテナから大きな爆発音が響き渡った。




「はぁ間に合ったでござるな…」

爆発した工場。もはや建物の形を成していない廃墟。

そこで最初に声を発したのはサジタリウスだった。

奴らは、光に包まれて消えていった場所から姿を現す。

どうやら人が数人入るようの核シェルターのような物をサジタリウスが召喚したんだろう。

コンテナには大量の爆弾と、それを起動させるために配置していた紙の鳥を隠しておいた。

衝撃が与えられたら中の鳥が摩擦で火を起こして大爆発を起こすつもりだったのだ。

それを…少し早くサジタリウスに悟られてしまったのだろう。

「おぉ怖かった。マジサンキューなサジ」

「手塚殿は我の占い師!当然でござるよ!!」

そう一言言った後、倒れる我に手塚はライフルを向けてくる。

「最後の一発。どうやら致命傷になったらしいな?」

そう、我は一人あの大爆発に巻き込まれたのだ。

紙で防御壁を作るつもりだった。けれど、突如弾丸を打ち込まれたことで、作るのに出遅れ、巻き込まれたのだ

手塚は…笑っていた。



これで終わりか…と思ったとき、ポケットに入れていた携帯がなる。雪音からだ。

もしかしたら屋敷で何かあったのかも知れない。無理をせずに帰ればよかった。約束を破ってしまう。

身体はまだ動く。けれど…この二人から逃げることは出来そうにない。



「ちょっとーそこの悪の手先!僕のライバルに何をしようっていうんだい?」

どこからかそんな聞き覚えのある声がする。

手塚もライフルをこちらに向けたまま視線は声の主に向けられた。

「フィッシャートルネード!!」

その言葉と共に戦場を、大きな水の障壁に囲まれる。

直後、手塚の持っていたライフルが突然弾き飛ばされた。

「ちっ!誰だぁ!」

手塚は舌打ちをした後声の主に叫ぶ。

「誰だぁ!と言われれば正義の味方は名乗るのみ!とぉー!」

そういって、人影が突然我の前に現れる。

「助けにきたよ!僕のライバル。謎の執事!」

目の前の男は…過去に戦った男。FISHBOYだった。

「…ふっ、誰だそれは?我にはカプリコと言う名がある」

「ならカプリコ。あんたとの決着はついてないんだ。あんたは俺以外の奴にやらせない」

優しそうな青年の声だがそのマスクで隠れた目は明らかに手塚とサジタリウスを睨んでいた。

そしてFISHBOYの言葉に、我は少し微笑んだ。

「ふっ面白いことを言うな。我にはまだやり残したことがある」

「ならそれを済ましてきなよ。それから僕と堂々と勝負だ。それまで…こいつらで準備運動しとくからさ」

FISHBOYは確かに前あったときとは変わっていた。

前あったときはスィーを身体付近に浮遊させてただけで、ただの青年だった。

このヒーロースーツもコスプレじゃない。本当にスィーの力が流れてるのがわかる。

「…すまんな。その言葉に甘えさせてもらう」

我はそういって立ち上がる。決めた。我もこいつと最後に戦おう。

今まで色んな者を見てきたが、こいつは面白い。


「さあ、始めようかお二人さん。あんたらは悪事を働きすぎた」



こうして、FISHBOYと、サジタリウスペアの対決が始まる。


                   ☆



「はっはっは!少年少女よ…来い!!」

神倉邸大広間。

そこでは、カラー折り紙で出来た兵士「ペパレンジャー」と

僕、毒島裕太と鬼塚綾が対峙していた。

「鬼塚。大丈夫か?」

「あぁ、さっきから楽しいぜ…」

鬼塚に渡したのは『星剣』だ。

剣術に関しての知識ゼロの僕には必要ないかなぁーと思っていたのだが、覚えておいてよかった。

まあ星力などが強いものなら戦闘中に変えれるそうだが、僕はそこまで高くない。

昔は星霊と共有せずとも星力を持っていた人間が居たって聞くしその人はすごいのだろう。

「さあ……勝負はこっからだ!変態レッド!」

「お、鬼塚。変態はきついぞ…」

「ふっ、言わせておけばいいさ。他の四人は復活するとしても今日一日は無理だろうしな」

そういい捨てて、レッドは僕たちに向かって突進してくる。

「鬼塚!」

「あいよ!!」

鬼塚は楽しそうに笑いながらその剣を構える。

何度か見てるが構え方が特殊だ。あれも剣道にある構えなのか??

「喰らえぇぇぇぇ!!!」

すると突然鬼塚がレッド目掛けて刃先を向けて突き刺した。

レッドはもちろんこれを難なく避ける。

しかしそこから僕は驚いた。

鬼塚は一息の隙も与えず、剣の柄を握り締め、裏拳の要領でレッドの首に斬りかかる。

おいおいっ!鬼塚のやつそんなことまで出来るのかよっ!まんまマンガのキャラじゃねぇか!!


しかしレッドも流石としかいえなかった。

首が切られかかる直後、また一枚の折り紙に解体された。鬼塚の攻撃が空振りに終わる。

そのまま形を変えて、紙飛行機へと姿を変え、物凄い速度でこっちに向かってくる。

しまったっ!?こっちに来るのは予想外だった!!

僕は必死に足を動かそうとする。

咄嗟の行動が功をそしたのか、紙飛行機のレッドは僕の右腕を少し掠めるだけで上空に飛んでいった。

「毒島!」

攻撃を与えられた僕に、鬼塚が駆けつけてくる。

「ふっ、侵入者。お前はまだ戦に対しては初心者のようだな。

 あそこはいつきてもいいように防御体制を取るべきだった。」

嘲笑うレッド。

けれど僕も掠れてしまった右腕を押さえて、仕返しのようにレッドを嘲笑った。

「悪いね。僕も昔のパートナーはスコーピオンだったんだよ。

 はっきり覚えてないけれど、あいつならこういうだろう……『防御すんなら罠を張る!』って」

僕の言葉にレッドと鬼塚はきょとんとしていた。

それでそうさ…。相手にバレてたら罠じゃないんだから!

「さあ、降りてこいよ。レッド!僕はお前なんかに……『防御』は使わない!」

「ほぅ……面白い!!」

レッドは再び一枚の紙に戻り、瞬時に紙飛行機に姿を変え、僕に襲い掛かってくる。

鬼塚には行かないのか。まあ、僕を始末すれば彼女の武器は消えるし、妥当だろう。

あいつも「女性には手を出さない」とか言っていたしな。

僕は何もせず、レッドは突進してくるのを睨みつける。

「ふっ!防御しないのと逃げないでは意味を履き違えてるんじゃないのかぁ!?侵入者ぁぁ!!」

その叫び声とともに、レッドの先端が、僕の身体を貫いた。

「ぶ、毒島ぁ!!」

貫通して、元の姿に戻るレッド。僕は何も発せず倒れてしまう。

「ふっ、愚かな星術使いよ。貴様の心意気だけはカプリコ殿にも報告しよう」

「毒島ぁ!おいっ!!毒島ぁ!!」

……やっべ、鬼塚のやつちょっと泣きそうになってる。

あんなに僕のこと毛嫌いしてたのに…まあ知り合いが目の前で死にそうになってたら誰でもそうなるか。

そろそろネタばらしと行こう。

「It’s a Magic♪…なんてね」

僕は、二人の死角から声を発する。レッドも鬼塚もこちらに振り返る。

「き、貴様!どうやって!!」

「防御はしないけど逃げはした。幻影性の星術さ♪」

そう僕が宣言する直後、レッドに苦痛が走る。

それもそうだ。彼の背中に大量の星鳥を追撃させたのだから。

「…貴様の死体が消えている……そういうことか」

「あぁ、さっきの死体は全部僕の「星鳥」をベースに作ってた」

「ふっ、面白いじゃないか!!」

レッドは憤怒と喜びを交えた声を発して僕に向かってくる。

「もうもう一回言う!僕は蠍座のスコーピオンの占い師。毒島裕太だ!」

「だからどうしたと言うのだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

僕の言葉に完全激怒したのだろう声だけでそれがわかる。

僕はその威圧に怯えず、指をぱちんと鳴らす。



「ぐふっ!!」

その直後、レッドは内から何かが爆発したかのように身体を膨らませ、地面に膝を付く。

「……毒性星術。「ポイズンメーカー」。」

「っ!?貴様…それはスコーピオンの能力ではないか!!」

レッドが悔しそうに僕を睨み言った。

どうやらこいつはカプリコってやつの部下なところを見てそういうのも詳しいのだろうか。

「うんそうだよ。あいつの能力だ。時間も掛かるし精神力も使うし難しいけど、僕はあいつの能力を使える」

「…ば、ばかなっ!」

悔しそうにひれ伏しているレッドを見ていると、急に視界が眩む。

「お、おい大丈夫かよ毒島」

「あ、うん。毒を使うと僕は抗体がないから反発が来るんだよ。悪いけど、止めは鬼塚がしてくれ…」

「あ、あぁ…わかった」

鬼塚は少し怖気づきながらも、その持っていた星剣でレッドの釘刺した。

一見グロいように見えるが、ただ紙を切っているだけなので、鬼塚も躊躇なく出来たのだろう。

僕はそれを眺めながら胸に手を当て、治癒星術を掛ける。

これも精神的に疲れるけど身体の毒とかをとってくれる術だ。

古来の星術使いは、スコーピオンと対峙したパートナー星霊を助けるために使っていた術だろう。

「…よし、毒抜き完了…」

毒抜きは完了したけれど、まだ身体がふらふらする。

「大丈夫かぁ?」

「え、あ…うん」

「ほら、これでも飲め」

そういって鬼塚は水を渡してくれる。僕はそれを口に運んだ。

「はぁ……ったく。無茶すんだから」

最後にそんな言葉が聞こえた気がしたが、流石に傷口から血が流れすぎたようだ。



そのまま僕は意識を失った―――――――――。





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「そ、そんな…ペパレンジャーがやられたなんて…」

彼女はモニタールームで見ていた。毒島裕太と鬼塚綾とレッドが戦っているのを。

まさかあそこまで毒島がやるとは思わなかった。

いまだに神崎由香とリブラは逃走中。見つかってないらしいし……。

「―っ!?」

あたしはモニターの一室を見て驚愕してしまった。

屋敷一回の壁が大きく破壊されたのだ。そこにいたのは――――。

「由香ぁぁぁ!!どこだぁぁぁぁぁぁ!!!」

そ、そんな…。

彼女はもう絶句するしかなかった。

壁を破壊して入ってきたのは獅子座のレオンなのだから。

「由香ぁ!どこだぁ!!」

叫びながら屋敷内を走り回る。

途中に現れる変な髪人形は全部ぶっ潰している。

「くっそぉ…マジでどこだぁ…確かにここらでCALLを発動されたはずなんだけどなぁ」

何か言っている。とにかくこのままではやばい。

カプリコに貰っていた「紙私兵」が底をつき始めてきた。


そんなとき、携帯のメールがなる。どうやらさっき送ったカプリコへの返信のようだ。

【済まないが、ダイニングに来てくれ。】

本当に淡々としたメール。

それでも私は嬉しかった。

彼の一言、一文字が嬉しかった。

けれど、こんなときにどうしたのだろう?



カプリコのお願いだから、それに従うけれど……。



そのとき私には、何か不吉なものを感じたのだった―――――――。




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「はぁ…堅実な人間だなぁ…」

僕はただ一人呟いた。

カプリコを逃がしたあと、サジタリウスと言う星霊と手塚隆吾は隙を見て逃げてしまった。

僕が調子に乗ってフィッシャートルネードを解いちゃったのが原因だけど……。

「まあいいさ。さ、カプリコの所にでも向かうか。スィー」

僕はアーマーに向かって話かけ、そのままカプリコの場所まで走っていった――――――――――




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「由香ぁ!どこだぁ!!」

ったく。あの野郎どこにいやがる。

せっかく人がCALLで呼ばれてきてやったってのに。

あの女…。松原李里香ともう少し話がしたかったのにな…。

それにしてもなんであいつこんな屋敷に?何かに巻き込まれたのか?

それにこの屋敷も何か怪しい。さっきからうねうね動く紙人形が続々と現れやがる。

全て倒していっているが……。この能力、カプリコだな。

「……あ。」

俺が走ってると、人影を見つける。

向こうから走ってきている。紙人形共に追われてるみたいだ。

「あ!レオン!!」

走っている少女は間違いなく、神崎由香だった。

半泣き状態で俺に縋るように飛んでくる。

俺は飛んでくる由香を受け止めて、その反動を利用して由香を追っていた紙人形に回し蹴りをかます。

紙人形達はビリビリ!と音を立てて破れ、機能停止になった。


「うぅ~怖かったぁ~」

俺の胸の中で泣いている由香。うっわ…鼻水付いちまった…。

俺は嫌な顔をしてしまうも、すぐにやめ、由香の頭に手を置いた。

「はぁ…ほんとよかったぜ。それで?なんでこんなとこにいんだぁ?」

「えっとねえっとね。レオン探してね、電車乗ってね、美人のお姉さんに会ってね、

 迷ってね、屋敷入ったらね、神倉さんがいてね

 そしたら紙人形に追われてね、リブラさんに会って、レオンをCALLしたのぉ」

あぁ~泣いてる幼稚園児かお前は。

言ってることが簡略的すぎて頭に入らない。

わぁーっとバカ面で泣いてる由香に問い詰めても無駄なのだろう。

「はぁ…まあ事情は後で聞くから、とりあえずこの軍団なんとかすっぞ」

「う、うん…」

そういえば、こいつがここまで泣きじゃくってるの見たことなかった気がする。

よっぽどこれに終われるのが怖かったのだろうか…。まあ不気味だししゃあねぇか。

周りを見ると四面楚歌と言う言葉が似合うほど、紙人形に囲まれていた。



さぁ……長時間ぐっすり寝てたんだぁ…ここらで暴れさせてもらうぜ!!


そして俺は、周りを囲む紙人形共を相手した。




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「カプリコ?どうしたのぉ?」

私はダイニングの扉を開けてカプリコを呼ぶ。

目の前には食事用に用意された無駄に長い机。一人しか食事しないのに。

そこの私が座る席の横で立っているカプリコ。そして机の上には料理が置かれていた。

時計を見る。確かにもう夕方の食事時だ。

「……何のつもり?」

「まあ、座ってくれ」

カプリコはそういいながら私が座れるように椅子を引いてくれる。

私はその場に向かって、静かに座った。目の前には美味しそうな料理。

いつもと、同じ料理。いつもカプリコが作ってくれる料理…。

「用事ってこれ?」

「否。違うが、まずは食事だ。喰え」

「……そ」

私はそういって食事を取る。

本当に、美味しい…。気のせいか。いつもよりも丹精に作られている気がした。

気のせいかも知れないけれど…気持ちが籠もってる気がした――――――――――。

「こうして雪音に食事を出すのも、何回目だろうな」

ぼそりと、カプリコは言った。




私、神倉雪音は企業者の娘だ。

父、神倉雄三と言えば経営者なら誰もが知る名であり、大富豪とも呼ばれた。

私を生んですぐ母さんは死んだらしい。それから父は忙しく、私の面倒はいつも家政婦達だった。

中学まではまだ父と一緒に住んでいた。けれど高校になって私はこの家に来た。

『神倉家足るもの、自立していく人間になれ』

それが父の言葉だった。私有地としてここを私にくれた。

父から送られるのは「金」だけだった。それ以外は何もない

人と接するのが苦手な私は家政婦を雇うということも出来なかった。

このPCがあれば、ある程度はなんでも出来た。食事もここから送ってもらったりして生活していた。

それに、警備システムも自分で作れた。父には私のそういうところを評価してくれてこの土地をくれたのだろう。


けれど――――私は一人だった。

学校に言っても、友達は出来なかった。

自立と言うことで普通の学校に言ったがどう話していいかわからなかった。

ただ頼まれた宿題をして、義務である勉学に励み、ただそれだけの生活。

常に冷静を装っていたけれど、内心寂しかったのかもしれない……『一人』に。

そんなときだった。1月1日。私はカプリコと出会った。

「お前は我のマスターか?」

その言葉を聞いたその日から、私の日々は劇的に変化した。

彼は言葉遣いは偉そうだけど、とても優しい人だった。

「毎日そんなものを食しているのか?健康によろしくない。」

彼に言われたその一言に私は少しきょとんとしていた。

いつも美味しいと評判の店の料理を食していた。少なくとも「そんなもの」呼ばわりさせるようなものじゃなかった。

「それに部屋もあまり綺麗ではないな。定期的に掃除をしているようだが、誠意がない」


そう言った彼は少し考えてこういった。

「よし、我がここでお前に食事を出そう。健康も管理してもらう」

そう言ってからだろうか。カプリコが料理を作ってくれるようになったのは。

彼の料理は本当に美味しかった。それに、毎日きちんと健康管理がなっていた。

さらに私の才能に興味を示してくれた。

それが何より嬉しかった。彼は私のことだけを見てくれていたからだ。

私が「お嬢様」だからじゃない。私のお父さんが「社長」だからじゃない。

彼は「マスター」である私を見ていてくれた。そして私のことを思ってくれていた。

本当は「順位」のためなのかも知れない。それでも私は嬉しかったし、何より『一人』じゃないことが嬉しかった。



「うん。何回か答えれないけど、美味しい料理を何度も食べた」

私はカプリコの問いに微笑みながら答えた。

私はいつから、彼を好きになってしまっていたのだろうか。

もしかしたらこの料理を始めて食べた日にはもう……。

「そうか。では、これを」

私が皿の食べ物を平らげたのを見ると、カプリコはそっと何かを出してきた。お椀?

私は蓋を開ける。そこには薄い黄色が綺麗な物が入っていた。

「……茶碗蒸し?」

「あぁ、そうだ。最近雪音の顔が赤いのでな。恐らく熱だろうと思い、それに合う料理を作った。

 解熱作用がある梅を入れて、寒気や熱にいいシソ。最後に消化にいい卵を入れた料理で

 雪音は日本人だ。やはり和食も食べたいだろうと思い、茶碗蒸しを作った。まさか嫌いか?」

カプリコは少し不安そうに聞いてくる。私の顔が泣きそうになってるからだ。

そして今まで以上に顔が真っ赤になっている。あぁ………やっぱり私はこの人が好きだ。

「…どうした?熱が上がったのか?」

真っ赤な顔している私を見て、カプリコは聞いてきた。私は首を横に振った。

「そうか…。なら食せ」

私は頷いて、スプーンで茶碗蒸しを掬い、口に入れる。

すごく美味しい。何よりさっきの料理以上に……気持ちが籠もっていた。

本当に……私のことを心配してくれて、作ってくれた。それが嬉しくて溜まらなかった。


「それと……。雪音」

私が食べていると、またカプリコが話しかける。

見てみると、彼の手には折鶴があった。

「雪音は折鶴が好きだろう?知ってるぞ。雪音の昔の写真によく映っているからな。

 能力を使わずに手で折った。ふっ…たまには手で折るのもいいものだな」

そういっているカプリコの手から折鶴をそっと取る。気のせいか手の温もりが籠もってる気がした。

「……ありがとう。」

「ふっ、喜んでくれて嬉しい。」

そういうと、カプリコはなぜか私に背を向けた。

「どこ行くの?」

「…少しお暇をいただく」

そういって歩みを進めようとする。私は思わず彼の服を掴んで止めてしまった。

「…どうした?」

「…ダメ、行かないで」

私はどこかで悟ったのだろう。カプリコが帰ってこないかも知れないことを。

あの気持ちの籠もった食事も、この暖かい折鶴も、まるで最後の別れを告げてるようだったから。

「隠しても仕方ないか。私は恐らくこれから行くところで死ぬ」

「――っ!?」

「身体もボロボロでな。ある奴と約束しているんだ。最後の闘いを」

「…ダメ。」

「我侭を言うな。それに貴様は俺のパートナーに過ぎない。止める権利はない」

その言葉に私は思わず黙ってしまう。確かに私にカプリコを止める権利はない。でも……。

「……きだから」

「ん?」

私の言葉に、振り返るカプリコ。

「……好きだから!わ、私は…貴方が…好き!」

言ってしまった。言っても意味がないのに。

私本当に汚い女だ。こういって彼を引きとめようとしている。

「…そうだったのか。もしかして顔が赤くなっていたのも」

カプリコの言葉に私は顔を真っ赤にしながら頷く。

彼は去ろうとしていた歩みをやめ、こちらに向かってきた。

「済まない。けれど我は奴との約束を果たさなければならない。これで許してくれ」

そういうと、カプリコは片手で私の背を押して、自らの胸に入れた。

その直後、カプリコが苦痛の表情になる。もしかしたら胸の方に大きな傷があったのかもしれない。

それより、私は涙が流れた。彼の胸の中はなぜか……落ち着いた。

「では、行ってくる」

私にそういい捨てて、カプリコは部屋から出て行こうとする。

「ちょっと待って」

私がそういうと、彼はまた振り返る。振り返った瞬間。私は背伸びをして彼の頬に唇を合わせた。

「ふっ、雪音も中々大胆な所があるのだな。今のは驚いた」

「……////」

彼はそういって、私の頭を少し撫でて、無言で去っていった。


私は、彼が作ってくれた折鶴を胸の所でつぶれないようにそっと握った――――――。

「あらら♪もう終わりにしようと思ってませんこと♪」

「―――っ!?リブラ!?」

「わたくしの任務はこれで完了ですわ♪」

天秤座のリブラは、そういって雪音の頭に、その大きな鈴をぶつけた。






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「ん……もういいのかい?」

「あぁ。予想外の収穫もあったしな…」

「ん??」

屋敷の屋根。

我が向かった先には、もう既にFISHBOYがいた。

「お前こそ、サジタリウスたちはどうしたのだ?」

「んー逃がしちゃったんだよねぇ…」

少し苦笑いをしながらFISHBOYは言った。今はスーツを脱いだ青年の姿だ。

我が始めてあったときも、彼はこの姿だった。ごく普通の町にいる青年の姿。

「まあ、それはいいじゃん。僕が君の最後を彩ってあげるからさ♪」

そういうと、彼の周囲にいた二匹の双魚が、物凄いスピードで彼の周りを回転する。

そして双魚から放出される水に、青年は包まれていく。

そして数秒して、包んでいた水が爆発するかのように分散していく。

分散した水が消えて現れた青年の姿は…もう既にスーツ姿だった。

「変身!正義の海援戦士!!FISHBOY!」

そう高らかに叫ぶ。そしてヒーロー特有の決めポーズをしている。

スーツと言うよりはもはや「鎧」と言っていいほどの精錬された形状のスーツを見に包む。


「さあ………始めようかカプリコっ!!」

「あぁ…望むところだっ!!」







その数分後のことである。

屋敷の紙人形たちもみな、消滅し、神倉雪音の姿も消滅した。




残った神崎ご一行も、その屋敷から姿を去っていった。




こうして、山羊座の星霊カプリコは――――――脱落した。



                      ☆



「はぁ……なんか不完全燃焼だねぇ」

「って、てめぇは何してたんだよ。ここで…」

「あっ、あんたを探してたんでしょう!一週間も帰ってこないから!!」

「それで迷ったら敵地にいた…と」

「……」

俺の言葉に何も言い返せないのか、黙り込む由香。

俺たちを囲んでいた紙人形共は急にただの紙として落ちていった。

恐らくカプリコの野郎が誰かにやられたのだろう。


「あっ!いた!!」

すると、そんな声がした。

見てみると、毒島を抱えている知らない女がこっちを見ていた。

「…知り合いか?」

「あーうん。鬼塚綾ちゃん。あたしの親友」

由香がそういうとともに鬼塚って女がこっちに物凄い形相で駆け寄ってくる。

うわぁ…毒島なんか放り捨てられたぞ…「げぶっ!」って言ってたぞ今…そうとう痛いなありゃ。

「由香ぁぁぁぁぁぁ!!!誰だこのイケメンはぁ!!」

「え、えーっと。あ、あのね?綾ちゃんこれはそのー」

必死な鬼塚に肩は猛烈に揺さぶられながら、何とか答えようとする由香。

「お、鬼塚…落ち着けって……」

すると遅れて、さっき地面に体を打ったのか、ケツを摩りながら来る毒島が鬼塚に話しかけた。

「い、いや!だって!由香がこのよくわっかんねぇイケメンに誑かされてんだぞっ!!」

「言い方が親父だぞ…鬼塚ぁ…。そういえば後で事情は話すって言ってたけどまだだったな。

 今から話す、だからいい加減神崎を話してやれ。なんかぐったりしてるし…」

「あ、そっか…悪い由香」

「べ、別にいいよぉ~」

首が据わってないかのようにふりゃんふりゃんしながら由香が返事した。完全に目が回ってる。


そっから毒島は鬼塚って女に事の全てを説明した。

1月1日の年間星座占いで由香が俺のパートナーに選ばれたこと。

そこから他の「占い師」たちと闘いを続けているということ。

自分も過去に由香と闘った「占い師」だったこと。

敗北した占い師は記憶がなくなるから直接戦った記憶がないこと。

自分の昔のパートナーはスコーピオンと言う男だったということ。

そして今回の件も偶然だけどその「占い師」との闘いに巻き込まれてしまったということ。


「へ、へぇ…いまいち信じがたいが、毒島のあれを見た後だと信じるしかねぇな」

「あれって?」

鬼塚が手を顎に乗せて納得していると、由香が頭を横にして言った。

「あぁ、すっげえんだぜ?毒島のやつ。なんか透明で綺麗な鳥いっぱい出してさ!

 でっけぇ鳥呼んであたし助けてくれたし、なんか広間でペパレンジャー?って奴らと戦ってたとき

 ほんと、マンガのキャラクターみたいにかっこよくてさ!!正直あれ見ちまったら信じるしかないってやつだ!」

「……なんか綾ちゃん毒島くんについて偉く語るね」

「…ばっ!お前が聞くからだろー!」

「ふーん(笑)別にあたしは毒島くんについて聞いたわけじゃないんだけどなぁー」

「なんだそのにやけ顔はぁー!」

なぜか女子二人がはしゃいでいる。

それを俺と毒島はただ呆然と見ているしかなかった。

「…レオンさん」

「ん?なんだ??」

そんなとき、突然毒島が話しかけてくる。

「本当…ありがとうございます」

彼が突然礼を言ってくる。恐らく星力を共有していることについてだろう。

「いいっていいって、これでスコーピオンの奴に借りが出来たしな」

俺は毒島の方を見て笑ってやった。



「んじゃ、そろそろ帰るかぁー」

俺は伸びをしながら全員に聞こえるように言った。

「あっ!あたしまだあんたがここに来た理由聞いてないぃー!!」

「あー…めんどくさいな。帰ったら言ってやるから、ちゃっちゃと帰るぞ」

「もー!遅れてきてしかも特に何もしてないくせに主人公面で仕切るなぁー!」

「なっ!?一番傷つく一言言いやがって!せっかく土産も買ってきてやってたのに、これは毒島たちにやるか!」

「土産はいるぅー!」


俺と由香の会話に、毒島の笑い声が聞こえた。

隣の鬼塚は少々睨んでいたけれど…まあそこは気にしないでおこう。



そして俺たちは――――――――元の星見町へ戻った。




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「ただいまぁーですわ♪」

「ん?リブラ。仕事は終わらせたの?」

「ええ♪もちろんですわ。こちらのUSBメモリに、彼女のパソコンのデータがあります」

そういってリブラは、足引にUSBメモリを奪う。

当初の計画通りだった。彼女と自分の知識を平等にし、パスワードを手に入れ

彼女が消えた後、パソコンにパスワードを打ち込んで全てこちらにコピーしたのだ。

もう星座占いに関わらないだろう神倉雪音には、宝の持ち腐れだろうから。

「あ、リブラ。あなたが星見山で軽く散歩してる間に李里香が帰ってきたわ。そして私に自白した」

「……なんですって?」

「自身が双子座の占い師であることを自白したわ。頭を下げて「でも自分で自由に動きたい」と言ってきてね。

 仕方ないから許してあげたわ。あそこまで真剣な李里香の顔……久々に見ましたし」

足引は腕を組み、足を組みながら溜め息を吐いて呟いた。

「そうなんですの♪許して頂いて彼女は喜んでおられるですわね♪♪」

「えぇ…でも、何か彼女……「怒ってる」ような目をしていたわ…何があったのかしら?」

「そこはわたくしがまた調査しておきますわ♪では、これで…」

「えぇ、お願いね。リブラ」

そういって、リブラは部屋を出た。

足引は、リブラから受け取ったUSBをパソコンに差し込み、データを読み取っていく。

「…彼女、ここまで調べ上げていたの!?ほぼ全員の星霊の居場所まで把握してるじゃない!」

しかも移動するであろう星霊にはマークをつけてる。サジタリウスのアジトがわかってるのはでかい収穫だ。

足引は少し笑みを溢し、そのデータを調べあげることにした。




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「おじゃましまーっす♪ですわ♪♪」

わたくしは勝手に扉を開けて中に入る。

実は以前きたときに、合鍵を勝手に作っていたのです。

「あら、リブラさん。ちょうどよかったです」

中には食器を片付けている李里香ちゃんと、なぜか真剣に待っているジェミニの姿があった。

「どうしたんですの?この重苦しい空気は?」

そういいながらわたくしは彼女の部屋のソファーに座りこむ。

「えぇ、ちょうどあなたが来るのも待っていたの。リブラさん…この前あたしと組むって言ってくれたよね?」

「えぇ♪わたくしは李里香ちゃんが好きなので♪♪」

「なら、協力してください」

「……」

重い空気がのしかかる言葉。わたくしは思わず絶句してしまう。

「よーし!」「とうとう!!」「「バトルだぁー!!」」

横で何やらはしゃいでるジェミニ。え?バトル??

「そうです。あたし、松原李里香は………獅子座のレオンを倒します」

「…それはまことですの?」

「えぇ、だから。あなたの力も借りたいのです」

その瞳は…真剣そのものだった。

一体彼女に何があったのかわかりませんが……。

「いいでしょう♪面白そうですわ♪♪この天秤座のリブラ。しっかりと李里香ちゃんの僕となりますわ♪」

わたくしは堂々と、彼女に告げた――――――。





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「ふーん…早苗さんねぇー」

「な、なんだよ…」

「べっつにぃー」

家に帰ってから、俺は由香話した。

自分の昔のパートナー早苗のこと。

すると途端にこんな不機嫌な感じになってしまった。一体どうしたというのだろうか?

「ちょうど十年前ぐらいかな。早苗と組んでたのは、あの山にあいつの墓があるんだ。その墓参り」

「ふぅーん。あ、十年前はあたしもあそこに住んでたんだよねぇー」

「へぇー…。どっかで合ってるかもしんねぇな」

「そうかもねぇー」

なんか、今日の由香は何やら拗ねているご様子。

これ以上早苗の話をするのはなんとなくやめたほうがいい気がしてきた。

「さ!録画してたものでも見るかな!春の漫才祭り!!それとR-1も見てぇ!」

「あれ消したよ?」

「えぇー!!」

「…嘘だって。そんなマジでショック受けないでよ。もぉー」

そういって笑顔になった由香はリモコンを取って、録画してたR-1を再生してくれる。

ほうほう…スギちゃんかぁ…。これは今年来るかぁ?俺はキャプテン渡辺の方がよかったが。

「はっはっは!徳井やっぱり面白い!ただの変態じゃーん」

隣でゲラゲラ笑っている神崎。それを見てると少しほっとした気がした。



見てるか?早苗。これが俺の新しいマスターだ。俺が久々に真剣に護りたいと思ったマスターだ。

だから安心してくれ。もう俺はお前への罪悪感に負けはしねぇよ。こいつが居れば………。

「ん?なんか言った??」

「いや、別に。さあ優勝は誰かなぁー」

そういいながら俺は再びテレビに目をやる。

見るとCOWCOWの多田が笑平さんの真似をしていた。







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「うぅー!祝二年生!!」

「ほんっと…テンション高いなぁ…由香は」

「へっへーん!だって二年生だよ!後輩が出来るんだよ!楽しみで仕方ないよ!」

「……すっげえ戦いに巻き込まれてるとは思えない余裕だなぁおい」

「まあ敵が着たらそんときはそんとき!あっ!毒島くんだぁー!」

「え、ちょ、由香ぁ?」

あたしは目の前を歩いている毒島くんの所まで走って挨拶をしてくる。

ある程度談笑をしているうちに、あたし達三人で学校に言ってる形になった。



そしてクラス発表。残念ながらまた美優ちゃんたちと同じクラスではなかった。

けれどあたし、毒島くん。綾ちゃんは同じクラスだった。

「結局ほとんど一緒のメンバーだなぁ」

新しい教室の机に座り、毒島くんが呟く。

「そうだねぇーあたし達は特に変わってないね。美優ちゃんとバルちゃんは一緒になったらしいけど」

「まあそりゃあな。先生曰く「仲の良さそうなやつらを集めた」らしいし」

「なるほどな。修学旅行とか色々あるしなぁ…二年って」

そうして三人で話していると、あたしは一人の子に目線が言った。神倉雪音だ。

いつもみたいに大人しめではあるのだけど、以前のような暗さを感じれなかった。

「ちょっと二人ともここで待ってて」

あたしは二人にそういい捨ててあたしは彼女の席に向かった。



「ねぇ、神倉さんも同じクラスだったんだね♪」

「……えっと、神崎さん?」

「うん♪名前覚えてくれて嬉しい!」

「…い、一応…去年のクラスメイトだから」

少し照れている神倉さん。

その机には膨らましてある折鶴があった。

「その折鶴どうしたの?」

「そ、その…私の宝物なの」

彼女はそういうも、恥ずかしいのか、折鶴を折りたたみ、自分の胸ポケットにしまってしまった。

やばい……この子、今まで接しなかったのが損なぐらい可愛い!!!

「また同じクラスになったんだし!仲良くしよ!!」

あたしはそういって神倉さんの手を取って、毒島くんと綾ちゃんのいる場所に向かった。



その日から、あたしたちの二年生としての生活が始まった。





どうもーついに5章を終えました。

今回は毒島裕太の戦闘と、カプリコVSサジタリウスがメインでした。

これで三章のスコーピオン戦での伏線は全て回収して


今まで見ていただけの松原李里香とジェミニもついに戦意を見せて

六章では彼女たちが敵として出てきます^^

それに、出てくるメインキャラは全て出しました^^

ここからは折りたたむように物語が進む(?)のでお楽しみください♪♪


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