一章 「占いの始まり」
『今日の星座占い♪』
「おっし!今日は何位だぁー」
あたし、神崎由香は今年16歳になったばかりの花の女子高生。
誕生日は8月14日。獅子座。趣味は読書と……。
『獅子座は7位♪今日はちょっと失敗しちゅうかも♪でもその失敗で転機が訪れる!?
ラッキーからはブルー♪ラッキーパーソンは茶髪の人♪』
「なるほどなるほど…」
あたしは炬燵に入りながらテレビの「星座占い」を見る。
これがあたしの一番の趣味。…と言うか日課だ。
あたしは急いで炬燵から出て、青色のゴムで髪をポニーに縛る。
「うっし!遊びに行くか!!」
寒くて堕落に誘う自分の身体に喝を入れて、あたしは家を出る。
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「綾〜」
「ちょ、何急に抱きついてるのよ由香。」
あたしがインターホンを押してすぐに出てくれた少女に思いっきり抱きつく。
あたしはこの「茶髪」の人に会うために、彼女の家にお邪魔した次第である。
「だって寒いしぃ〜それに綾茶髪だしー♪」
「はぁ?何??茶髪??」
「星座占いだよー。今日のラッキーパーソンは茶髪の人ー♪」
そういいながらあたしはクラスメイトで小学校からの親友。ちょっとやんちゃで
ヤンキーに間違われる綾ちゃんのそのふくよかな胸に顔をスリスリと埋める。
「あんたほんとに星座占い好きだなぁ…」
「うん!女の子だもん!!」
「女の子はみんな星座占い好きってわけじゃねえよ……」
綾ちゃんは「はぁ…」と溜め息を吐きながら言った。
「んで?今年も行くの??・・・年間星座占い」
「もちろん!!去年は獅子座6位だったから残念な一年だったんだぁー」
「確か小学校の頃獅子座が一位のときにあんた偶然金持ちの財布拾って
警察届けて一割とかで10万ぐらい手に入ったっけ?」
「うん…残念ながらその9割を親に取られちゃったけどね…」
まあ…結果で言えば1万円を手に入れたのだ。
さっき綾ちゃんが言っていた年間星座占い。
毎年年始に行われる大きなイベントで、全国から中継や観光客で賑わう。
その神社で大々的に発表される星座占いは今年一年の「運」を示してくれると言うものだ。
あたしは毎年これに綾ちゃんを巻き込んで現地に赴いている。
まあ……星座占い好きっ娘として当然の義務と言うわけである。
「じゃあ、集合は朝の6時ね」
「また随分と早いな…了解♪」
放課後、あたし達はそう言い残して、別れる。
明日がその……年間星座占いが行われる日であった。
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「わー。やっぱり人がすごいねー!」
1月1日。元旦。
あたし達は約束通り星見町にある「星見神社」に来ていた。
「ほんとだな…私こういう暑苦しいの嫌いなんだよなぁ…」
「まあまあそう言わず!!行こっ!綾ちゃん!!」
あたしは綾ちゃんの手を取って神社の方へ向かう。
同じ「星見町」だけど、この神社があるのは結構山のほうで
朝6時から自転車で来たけれど、ついたのは9時ぐらい。
その時点で人が多かったのに
ちょっと朝ごはんのためにマクド○ルドに行ったらこの始末である。
大きい神社には屋台が並び、子どもがそれをせがんでいる姿も見える。
カップルで来ているもの、家族で来ているもの、友達同士集まっているもの
いろんな人が来ていて、神社は活性に溢れていた。
「あっ!始まるよ!!綾ちゃん!!」
「えぇ?私向こうでとうもろこし食いたいんだけどー」
あんま乗り気じゃない綾ちゃんを引っ張りながら
あたしは神社の神官のおじさんが現れた所に向かう。
あのおじさんの合図で順位の描かれた大きな紙が神社の屋根から幕下ろしされるのである。
あたしはドキドキと心臓が高鳴った。
あたしにとって最高のイベント。人生の一部。その出来事が今、始まろうとしているのだ。
「……あれ?」
そのとき、あたしは何かを感じた。
何かが喉に入ってきたような…そんな感覚。
その感覚にキョトンとしているとついにおじさんの合図で幕は下ろされる。
『一位 いて座
二位 牡牛座
三位 乙女座
四位 蟹座
五位 天秤座
六位 双子座
七位 山羊座
八位 獅子座
九位 さそり座
十位 水瓶座
十一位 牡羊座
十二位 魚座』
でかでかとした文字でそう書かれていた。
「獅子座…八位かぁ…」
あたしは少し残念だった。
去年六位だったから、今回は上に上がっていてほしかった。
自分でこの順位を変えれたらどれほど嬉しいだろうか。
「…よしっ!順位見たし、どうする?屋台でも回る??」
「そうだね♪綾蟹座であたしより順位いいんだから奢りだよ!!」
「はぁ?そりゃねえよ由香。順位なんかで私が奢るかっつうの」
あたし達はその後、屋台を回ったりしてこの祭りを楽しんだ。
これが、あたしの平和な日常の最後と思うと……もっと楽しんでおくべきだったと後悔する。
「はぁ…疲れたなぁー」
家に帰ってベッドに横たわる。
綾と屋台回ったり、昼からカラオケ行ったりして今日はとても楽しかった。
けれど…一つ気になっているものがあった。
この身体の中に何かが入り込んだかのような感覚だ。
あの発表される直前、あたしの喉を通ったようなあの感覚が今だに胃袋に感じるのだ。
「…ま、気にしてちゃだめだよね……」
そのままあたしは疲れたまま眠りについた。
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「はっはっは!レオあんた八位だって!惨めー」
「うっせんだよバルわよぉ!!」
「ふっふーん。今年はあたしの方が上なの♪偉そうにしないでくれる?」
「てんめぇ…」
「まあ落ち着け。男女の喧嘩はよくない」
「そうだよー」「二人も僕らみたいに」「仲良しになろう」「「よー」」
「はぁ…ここで馴れ合っててもしゃあねえってのにこいつらは・・・」
「…………。」
「スィー…あんたしゃべれないでしょ……」
「はっ!ただタウロスの言う通りだ!ここで馴れ合ってもしゃあねえわなぁ〜」
「…ここで話していても、利益はない。」
「うん。僕も毎回この光景嫌になっちゃうよ…。」
「まあまあ皆様。ここは公平に…二人の喧嘩を見守りましょう」
「…へっ!結局ここ全員殺意も何もかも出しまくってるのに何が公平だよってな」
影がそれぞれに話している。
そこに現れるのは、巨大な男。
「今年の…お前たちのパートナーが決まった」
男の言葉を聞いて、全員が彼のほうをみる。
「ふーん…♪今年は誰がパートナーなのかしら♪」
ただ一人、少女はそう言った。
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「……ん?何??ここ?」
夢の中。
あたり一体が宇宙。
そこにただただあたしはフラフラと浮かんでいるような状況だった。
『神崎由香…だな?』
すると、宇宙のどこからか、そんな声が聞こえる。
「あ…はい。」
あたしは夢と判断し、これに対応する。
『お前は…獅子座の『占い師』に選ばれた。』
「……え?」
『続きはこれから話す。ついてこい』
その言葉とともに、何もなかった宇宙に光の道が現れる。
そこをあたしは歩く、隕石や、人工衛星などもあり、とても幻想的な夢だった。
『さあ…ついた。ここだ』
「…扉……」
目の前にあるのは大きな西洋風の扉。
『開けろ。』
「あ、はい…」
声に従ってあたしは扉を開く。
大きな光に包まれ、思わず目を閉じる。
そして、目が慣れてきたのを感じ、目を開く。
そこは…宇宙と言うのは変わっていないのだが、円状に椅子が12個並べられている。
そして椅子の後ろには…星座かな?が映っている。
「遅かったなぁ獅子座」
あたふたしていると一人の人が声を掛けてきたけれど。姿がはっきり見えない。
あたしも今気付いたがあたしも
そこの十一人も全員真っ黒な服に顔が隠れるように大きなフードを被っている。
その声の方を見てみると、椅子に座っている人がいる。後ろの星座は……魚座?
「あなたを待ってるの。はやく座ってくれない?」
また声がする。その声の主の後ろにあるのは……双子座?
「時間の無駄が生じてしまったわ。この無駄を何で埋めようかしら」
「っていうか。なんでオレらこんなとこいるわけ?」
「ぼ、僕にもわかりませんよ…」
おのおの独り言のように言っているもの。遅れてきたあたしに文句を言うものがいた。
あたしは状況の掴めぬまま、空いている席に座る。後ろに映っているのは獅子座。
『十二人…。全員集まったな。では、星座占いを開始する』
この言葉が、あたし達12人を巻き込む……占いの始まりだった。
☆
『十二人…。全員集まったな。では、星座占いを開始する』
真ん中に座っていた男がそんな言葉を言い出す。
あたし達12人はその言葉にただただ呆然とするしかなかった。
「…あの、その星座占いとは結局何をするんですか?」
そんなとき、一人の男が話し出した。
『おぉ、いて座の占い師よ。それを今から説明する。
ここにいる12人には、殺し合いをしてもらう。』
「「「「「「「―――――っ!?」」」」」」」
『済まない。まあ、それはあくまで表現の問題だ。
皆にはさっきも言った通り。それぞれに星霊と呼ばれるパートナーを配置される。
そのもの達と協力し、他の者の星霊を潰すこと。すなわち、相手の星霊を殺すことです』
「ね、ねぇ。これって毎年やってるんだよね?じゃあ去年した人はどうなってるの?」
『あぁ、牡羊座の占い師よ。それについても説明しよう。
星霊を殺し合うのが今回のゲームであるが、潰された瞬間に行われるのは
その占い師の「記憶抹消」である。今回の件に関する記憶を一切排除する。
まあ、記憶と言う面では、その占い師も星霊を無くした時点でゲーム上死んだことになる
星霊が死んでからも、他の星霊を殺そうとしないようにこのような処置をとってあるのだ』
『なお、舞台はこの星見町となっている。
この場所から逃げようなどと考えないことだ。過去にそのような行動を
星霊とともに取った者がいたが……どのような事態になったかはあえて伏せておこう』
男の言葉にあたし達全員容易に「逃げられない」と感じることが出来た。
『では、集会はこれにて閉会とする。最後にわたくしと出会える一人は…誰でしょうかな?』
そういうと、あたしの目は真っ白になる。
そしてその直後目を開くと―――――そこはよく見知った天井。あたしの部屋だった。
そして起きたすぐ隣には大きな本があった。
「なんだろ…これ?」
それを手に取り、見てみると「本を開き、契約せよ」と書かれていた。
本を開くとそこには大きな円状の模様が書かれており、
そこに自分の身体の一部を置いてただ言葉を発すればいいらしい。
あたしは自分の髪の毛を一本抜いて、その円の上に置いた。
「えーっと。我。獅子座の占いするもの。星座占いの命に基づき、汝を召喚す。…でいいのかな?」
そういった直後、本は光だし、中に浮く。
これが……召喚っ!!
あたしは少しドキドキした。
マンガとかで見たことあるよこういう展開。あたしは今、そんな状況に立たされている!
「はぁ〜やっとかよ……」
出てきた煙からそんな声が聞こえる。
「……え゛っ…」
あたしは思わず嫌そうな顔をしてしまった。
目の前にいるのは、顔立ちはものすごくいいが、
パンツにティーシャツで不潔そうに髪をぽりぽりと掻いて欠伸をしている男だったからだ。
野生的な顔に、逆立った金髪。まさに獅子…と言う風貌なのだが……だらしない…。
「ん?お前が俺のパートナーか?」
あたしに気がついた男があたしを見てそういった。
「あ、はい………」
「そうか。じゃあ、一年間俺はこの家ん中でだらだらしてるからよろしく」
「ちょ、ええええええええええええええええええ!!??」
「あ?なんだよ??文句あんのか?」
「えっ、嫌…その、殺し合うんじゃないの?あなた達!?」
「あぁ?いいんだよ。そういうめんどくさいの。ほかの奴らが適当に争っておけばいいだろう」
「な、なんなのこいつ……」
あたしは少し呆れてしまった。
なんだろう…超カッコイイイケメンさんなのに…残念すぎる。
「あ、自己紹介忘れてたわ。俺はレオンっつうんだ。よろしく!」
「あたしは神崎由香。こちらこそ一年間よろしく…」
入って一分もしないうちにあたしの家でくつろぎだしたレオンにあたしは少々呆れて、疲れた。
なんか…さっきの集会の緊張感が嘘のようだった。
こうして、あたし…神崎由香の星座占いは始まった。
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「「じゃ、じゃーん!!二人揃ってジェミニだよ!!」」
「へぇー子どもじゃない。」
あるビルの屋上。
彼女は本を片手に現れた二人の子どもを見てそういった。
「「うん!!」」「僕たちは」「双子だからねー」
「双子なのに…名前は?」
「「僕たち揃ってジェミニだよ!」」
「それって…おかしくない?」
「んー…」「考えたことなかったなー」
「じゃあ、君がジェミで、君がミニって呼びわけていい?」
スーツ姿の女性が屈んで、子ども姿であるジェミニに問いかけた。
するとジェミニの顔がパァーっとおやつを貰った子どものように笑みを広げる。
「「うん!!それすっごくいい!!」」
「そう、あたしは松原李里香って言うの。よろしくね」
優しい微笑みで言う女性は、まるで聖母のように優しい笑みを浮かべていた。
「うん!」「こっちこそよろしくね!!」「「リリ姉っ!!」」
「リリ姉…か。うん。よろしくね」
そういい、李里香は二人の頭を両手で撫でてやった。
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「ふぅーん。この町に十二人ね…面白そうじゃん♪」
「…………」
「うん。わかってるよ。お前のためにも無茶はしないさ」
「…………」
「安心していいって。それより、この光景最高じゃねえか?夜の町を上から眺めるのって…」
少年は銭湯の煙突の上に座りながらそんな言葉を発していた。
彼の背中近くにはぷかぷかと宙に浮かぶ小さな魚がいた。
「安心してよ。僕がスィーを一位にしてやるからさ」
「…………」
「そうかしこまるなって。大丈夫。お前と俺なら出来るさ」
そういって男は、夜の風に当たり、気持ちよさそうな顔をする。
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「えーっと…。あなたが乙女座さん?」
「えぇ、あたしが乙女座のバルよ。あんたは?」
「あたしは加賀美優って言うの。」
「ふぅ〜ん。やけに可愛いじゃない」
「そ、そうかな?」
「あんた…気にいったわ!!あたしとコンビ組むのにふさわしい!!」
「そう言われるとちょっと嬉しいかな……」
「じゃあ早速!ショッピング行こうショッピング!!」
「え、もうこんな遅いのにっ!?」
「いいのっ!変なのが絡んできたらあたしが殺ってあげるからさ」
「こ、殺しちゃダメだよぉ〜」
「さっ!行こ行こ!!」
そういって少女、加賀美優は。パートナー、バルに連れられ、夜の町へ出ていった。
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「……おっしゃ!召喚された!んで?俺のマスターは……え?」
「……おぉー」
出てきた直後、腕をパキポキと鳴らして気合を入れていた男は目の前の光景に愕然とする。
「こ、子ども…?」
召喚された男は、とてもガタイが大きく、筋肉も発達しており、親父のような風貌だった。
そして目の前にいるのは、ぺたんと座り込んで、目の前には広げられた本がある。小さな少女。
「えーっと…まさか。お前が俺のマスターか?」
恐る恐る聞く男。
すると少女は嬉しそうに顔を綻ばせ、立ち上がる。
「……パパ!」
「はぁっ!?」
そのまま元気な声でそういい、男に急に抱きついた。
男の身長的に腹部にも届いていない彼女の顔は本当に嬉しそうだった。
「…これはどうなってんだ?」
男は困惑した。
過去になかった例だからだ。
「えーっと。お嬢ちゃん?これだとなんか不審者みてぇだな。よし、お前。名前は?」
「…たかなみさくらっていうの。歳は5歳」
「……5歳と来たかぁ」
男ははぁ…と溜め息を吐きながら呆然としていた。
そして、当たりを見渡す。時間も時間だからか、場所は家。恐らく彼女の家だろう。
二階が存在しない大きな和風式の家。けれど…彼女以外人の気配がしない……。
そして更に見渡すと、仏壇を見つけた。
「…そういうことか」
そういって男は自分に抱きついてきている少女の頭に手をポンと置いた。
「俺はパパじゃなくてタウロスだ。」
「たろうす?」
「たろうすじゃなくてタウロス」
「た、たう、たろ……パパ!!」
「だからパパじゃねえって!あぁ〜もう!どうしたもんかなぁー」
頭をぽりぽりと掻きながら、タウロスは苦悩した。
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「自分!サジタリウスと申します!」
突如現れた男は長身で、姿勢も正しくしながら、キリッと目の前の男性を見て言った。
「そうか。じゃあ、これ使って。君なら使いこなせるはず」
「なっ!?これは銃か?」
長身の男は物を漁っている男から投げられたライフルを受け取ると大げさな反応を取った。
「あぁ、そうだ。まあ、これで俺たちが勝とうじゃねえか。な?」
長身の男は不思議そうにライフルをジロジロを舐めまわすように見回した。
そして、これは自分でも使える。
と判断したのか、まるでこれから冒険が始まるかのような笑みを浮かべた。
「あなた様は中々面白そうだ。手塚隆吾様」
「そうだろ?まあ、楽しもうぜ」
大きな部屋。そこには数々の「兵器」が置かれていた。
それを射手座の占い師手塚隆吾といて座の星霊サジタリウスは眺めていた。
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「ぼ、僕キャンサーって言うんだ。よ、よろしく…」
召喚された小柄な男はかしこまった態度で目の前の男に挨拶する。
「そう緊張すんな。今日から俺とお前はブラザーなんだからさ!」
そんな男の緊張を解こうとするように気さくに話しかける男性。
「う、うん。ブラザーか…。なんかいいね」
「だろ!?わかってくれるかキャンサー!!」
「うん!!僕…君のために頑張るよ!!」
「あぁ、俺たち二人で頑張ろうぜ!」
そういいながら、お互いに拳を軽く当てた。
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「今回の星座占いで私に課される負荷は?」
「狙われる危険性と、私と一緒に過ごすって言う自由な時間の消失…ってところかしら?」
大きな部屋。
ビルの最上階だろうか。
窓から見えるのは綺麗にライトアップされた街だった。
その中で大きな机に座ってノートパソコンをいじっているメガネを掛けた女性と
その女性の机に腰を乗せている西洋風のドレスのような格好をした女性が一人。
「なかなか大きいわね。それで?私の利益は??」
「一位になれば、あなた様は幸福な人生を手にいれますわよ。少なくとも一年は。
星座占いの順位によって来年の「運気」が変わるのですわ」
「ほぉ、なるほど、危険性と言うリスクがある分。成功すれば安定した利益が入ると」
「そういうことになりますわね♪」
「久々に燃えるじゃない。私頑張って一番目指すわ」
「そういうことでしたらわたくしは頑張りますので、ご安心を。あなたにきっと利益を与えますわ」
そういって、天秤座の占い師と天秤座の星霊リブラは互いににやりと笑った。
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「あぁ?てめぇが俺のパートナーだぁ??」
「そ、そうだよ!僕は君のマスターだ!!だから離せ!!」
いかにも男子の部屋…と言ったような所だろうか。
ベッドの上には携帯や音楽機器、ノートパソコンなどが置かれ
机には資料や勉強道具。本棚にはマンガなどの本が置かれており
部屋自体は綺麗に整理されており、それゆえに個性が見えない部屋であった。
「マスター?てめえ見てえなヒヨッコがマスターかよ!!」
「痛っ!何すんのさスコーピオン!!
大体僕がマスターだよ!?僕を一位にするためにお前は頑張ってほかの星霊を―――――」
そう怒鳴る少年の目の前に突如大きな針のついた長い尻尾のような者が現れる。
「いいか?てめえと俺じゃあ立場は俺の方が上だ!お前は黙って俺のバックアップやってろ!」
「は…はい……」
少年はやや泣きそうな顔で、
だぼだぼのズボンに大きなパーカーをき、首には目立つ首輪や耳にピアスなどをつけた
スコーピオンの言葉にただただうなづくしか出来なかった。
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「私があなたと契約する。あなた、上位に行くことが目的。」
夜の公園。
そこの長い木で出来た椅子に座る無表情な少女がいた。
その横にある木にもたれかかっている男は暗闇のせいでよく見えない。
「そうだ。我が一位でなくてはならぬ。絶対にだ」
「それで?最初はどうするの??」
「様子見…が一番だろう。最初のうちから争っていては生き残れん」
「そう…じゃあ、私もゆっくりしてていいのね」
「それは困る。敵に素性がバレないようにお願いしたい。あと、出来たら情報収集も頼みたい」
「わかった。本当に慎重だね。カプリコ」
「そうしなければいけない。無謀で滑稽な行動を取るなど、愚の骨頂だからな」
パソコンを前にキーボードを叩く少女と
その後ろに立つ長身で黒いスーツの男。山羊座のカプリコ。
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「ふ〜ん。お前そんな夢あんだー」
「うん…。絶対に叶えたい夢なんだ」
とある病室。
「……うっし!ならこのエリーさんが夢香の願い叶えてやる!」
「え?いいの?」
「ああもちろんだ!あたしはあんたの星霊なんだからな!!」
「うん!!」
ベッドで寝込んでいる少女はとても嬉しそうにうなづいた。
元気で長いルーズソックスにミニスカート、大きな帽子の少女。
牡羊座のエリーはその顔を見ると自分もなぜか笑みが溢れてしまった。
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「えっと…アクエリアスさんだったよね?」
「はい♪」
男は疑問形で彼女に問いかける。
彼女はというと顔を高揚とさせ、赤く染まっていた。
「君も……その殺し合いに参加しなくちゃダメなんだよね?」
「はい♪」
「それって…大丈夫なの?」
「大丈夫よ。あたしは海徒が入ればそれでいいから」
「ははは、そんなこと言ってもらえて光栄だよ。しかもアクエリアスみたいな美人に」
マンションの室内。
白いスーツを来ている青年と、青い髪が目立つ少女アクエリアスは互いに手を取りながら会話した。
これが、「星霊」と「占い師」の運命の出会いの……始まった
☆
「………はぁ」
あたし、神崎由香はお正月だというのに憂鬱だった。
希望に溢れる年始だと言うのに溜め息しか出なかった。
「おっ、やっぱ正月のお笑い番組はいいよなー」
などとほざきながらあたしの部屋に寝転がり、ポテチを食べているこの紐男が来てから五日。
「ねえ、レオン」
「ん?なんだよ」
「本当にいいの?その、戦わなくて」
「あぁ?いいんだよ。大体最初っから喧嘩ふっかけてたら最初の犠牲者になるだけだ。
少なくともこの数日間は冷戦状態になるだろうな。こっから攻めるとしても多数じゃねえ」
「そ、そういうものなの?」
「あぁ、だからいいんだ」
なぜかさっきまでのちゃらけた表情から真剣な表情に変わるレオン。
その表情には少し寂しいものを感じたのは…なぜだろう。
「じゃあ、あたしは用事あるから外に出かけるけど、誰が来ても出ちゃダメだよ?」
「あーわかってるわかってるだから早く行け。こっちはお笑い見るのに忙しいんだよ。」
その適当な感じに少し腹を立てたが、ここで意固地になってはいけない。
…と悟ったあたしは荷物を持って、部屋を出ようとする。
もう一度振り返ると今だにテレビを見て「わーやっぱ中川家おもしれー」などと言ってる。
(ほんと…レオンで大丈夫なのかな……星座占い)
あたしはそんな不安を抱えながら、家を出た。
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「はぁ、もう…。綾ちゃん今日から田舎に帰っちゃうんだもんなー」
あたしはそんな独り言を言いながら街中を歩いていた。
お正月と言えば、セールである。
お洋服ももちろん欲しいし、何より福袋!!これがあたしの目的!!
ただ…今年八位だったからあんまりいい結果はないと思うけど…。
これもそれも、去年に八位になったレオンのせいだと思うと少し腹が立った。
店に近づくと、もう既にセールで人だかりが出来ていた。
「よしっ!神崎由香!突撃ぃぃぃぃぃ!!!」
あたしはそう叫んでその人だかりに入り込んでいった。
いろんな人にもみくちゃにされながらもなんとか中央に近づく。
(…よしっ!あとは服をつかめば!!)
あたしはそう思い手を伸ばす。
目の前に自分の好きそうな服があったからだ。
これだけは取る!!その勢いであたしは服を掴むが、その直後に人の波は逆流する。
あたしはその服を掴んだまま、人混みの外側へ流されていく。
「……っと、大丈夫?」
そんなあたしを一人の女の子が受け止めてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「いいっていいって。貴方もここに?」
「はい。ほら、服ゲット♪」
あたしは持っていた服を彼女に見せた。
「わー可愛い!私もそれ探せばよかったなぁー」
「えーっと。君は?」
「あ、私はもう何着か買ったよ♪」
そういって彼女が言っていると、レジの方から一人の少女が近づいてくる。
「ミュー!買ってきてやったわよー」
「あ、バルちゃん。ありがとう」
「で?誰その娘??」
途中で来たバルちゃんと言う少女はあたしを見て問いかけてきた。
「えーっと。さっきこの人波から出てきて、それを私がキャッチしてあげたんだよ」
「ふーん。あんた…名前は?」
「神崎由香って言います。あの、バルちゃんって本名ですか?」
あたしがそんなことを聞いてみる。
バルって本名だったら日本人じゃないよねと思ったからだ。
「あーバルちゃんのはあだ名だよ。上原優花でバルちゃん。
んでわたしが加賀美優。ミューってバルちゃんは呼んでるんだ」
二人ともいい子で可愛いなぁっと見とれてしまう。
自分が男だったら恐らくナンパしちゃってるだろう。
美優ちゃんは本当にクラスのマドンナみたいなおっとりタイプ。
それに対して上原さんはちょっと怖そうだけど、気品を感じる。
こんな二人が一緒にいたら注目の的だよね…っと思った。
でもなんだろうこの感じ…上原さんからは……似た雰囲気をどこかで感じた気がする。
「ねえ、ここであったのも何かの縁だしこれからどこかに食べにいかない?」
「ちょっとミュー?神崎にも都合ってのが」
「あ、大丈夫だよ。誘ってくれてすごく嬉しいし♪ちょうど知り合いが帰省してて暇だったし」
そうあたしが言ったことで、あたし達三人は食事に出ることにした。
色々話した。そしていろんなところに遊びにも言った。
今日初めてあったのにこんなに仲良くなれるなんて…思わなかった。
これが運命の出会いってやつなのかな♪♪なんて思っちゃったりもした。
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「…くそっ、ジュースもポテチも切れちまったし、由香のやろう家に帰ってこねえんだもんなぁ」
大きめのダウンを来たレオンがぐちぐちと文句を垂らしながらコンビニに向かっていった。
星霊は、毎年誰かのパートナーとして召喚される。
しかも占い師のように記憶を失わない。だから現代のシステムなどにも精通している。
レオンが正月にお笑い番組を見て、お気に入りの芸能人がいるように。
他の星霊達も、それなりにこの時代の知識も全て備わっているのだ。
「はぁ…だるっ」
彼はまだ文句を垂れながら身体を震わせ店に向かっていた。
やっとコンビニに辿りついて、彼女の貯金箱から漁った1000円でお菓子や酒を買って
レジに向かい、会計を済ませ、暖かいコンビニからおさらばした。
歩いている途中に上機嫌で「ねぇ〜こは炬燵でま〜るくなる〜♪」などと歌いながら
「あぁ、俺も炬燵でくつろぎてぇなーこいつでも飲みながら」とほざいていた。
そしてそのまま歩いていくと、見知った顔の少女が見えた。
他にも二人ほど一緒にいるのが伺える。
知らない少女と……もう一人は…。
「―――――っ!?」
驚いたように表情を変えると、レオンは物凄い速さで彼女、神崎由香の居場所に向かった。
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「いやぁ〜今日は楽しかったねぇ〜」
「ねー」
「はぁ…あんた達今日始めてあったのに仲良くなりすぎでしょ…」
あたしと美優ちゃんが笑顔で向き合っているとそれを見て呆れた上原さんが溜め息を吐いた。
「…ん?あれは??」
すると、目の前に何かが走ってくるのが見えた。
それは突然跳躍し、ものすごい高さまで飛んでいき、そのまま落下してくる。
あたし達の目の前へ。
「由香ぁ!!そいつらから離れろ!!!」
「え?」
突然現れたのはレオンだった。
そしてレオンはわけのわからない言葉を発していた。
なんであたしが美優さん達と離れなきゃ――――――――。
「…へぇ……あんたのパートナーだったんだー。レオン♪」
「――――っ!?」
すると突然口を開いたのは上原さんだった。
「ねえ、バルちゃん。もしかしてこれが言ってた?」
「うん。そうだよミュー。ってことで」
「―――えっ!?」
突然あたしの身体中を何かが張り巡らされた。これは…弦?
まさか…上原さんが星霊!?
じゃああの時に感じたことあると思った雰囲気は…精霊の雰囲気!?
「てめえ!!いきなりマスター狩りかっ!?」
「あ〜ら。その言い方訂正してくれない?狩りはしないわよ。利用するの♪」
レオンは悔しそうに歯軋りを立てた。
あたしの身体にまとわりついた弦がさらにきつく締め上げてくる。痛い。
「まさかここであんたが脱落!12位になるなんて、最高だわぁ〜」
上原さんは悪女を連想するような笑顔で悔しそうにしているレオンを見つめていた。
「ね、ねえバルちゃん。やりすぎじゃない?」
突然残忍な姿に豹変したバルを見て、少々引きながら、美優はバルに言った。
「ごめんねミュー。でも、あたしこいつ嫌いなの。みんな嫌いだけど特にこいつは大嫌い♪
だから今回だけのお願い。こいつを殺らせて?」
上原さん…もとい乙女座のバルはまるでおねだりをするように美優ちゃんに言った。
「わかった。だけど、由香ちゃんは開放して。
そうじゃないとバルちゃんのこと嫌いになっちゃうよ?」
「うっ。わ、わかったわよ。ミューの言う事に逆らえないわ」
そういってあたしを巻きつけている弦はひゅるひゅると消えていった。
「じゃ♪はじめよっかレオン。あんたをビリにする舞踏会でも」
「残念ながら俺はラップ好きだ。舞踏会とか興味ねぇ!!」
そして、レオンは再び跳躍する。
本当に空高く。
上空に飛ぶレオンを捕らえるかのように、バルの腕からかすかに見える弦が放たれる。
「はっ!てめえことあるごとに俺に挑んできてるせいでてめえの手のうちはわかってんだよ!」
レオンは上空なのに彼女の弦を上手く避け続ける。
けれどバルは何も言わず。手を引っ込めた。
するとレオンが避けた弦が戻ってきて、レオンの背中を切り刻む。
「だから学習しないのよ!あんたは!!」
そのまま弦もろともレオンを叩き落とすバル。
その叩きつけた衝撃で大きな土煙が起こる。
少しするその煙が突如大きな風に飛ばされるかのように荒れ散っていく。
目を凝らして見ると、レオンが物凄いスピードでバルに接近していた。
「…くっ!!」
そのままレオンは彼女の腹部に拳を放った。
「バルちゃん!!」
勢いよく飛ばされるバルを見て、美優ちゃんは叫ぶ。
あたしも少し胸が傷んだ。
なんで、さっきまで仲良くしてた
あたし達がこうして争わないといけないの?これが…星座占いなの?
手応えを感じ、様子を伺うように見ているレオン。
そして軽くバックステップする。
さきほどまでレオンがいた所がバコッ!と地面が割れる。
見てみると数本の弦が地面を叩いていた。
土煙の中から現れた弦はまた元の場所に戻った。
それの繰り返し、弦がまるで生物のようにレオンに向かって物凄いスピードで這いよる。
レオンはそれを淡々と避けてゆく。レオンは距離を詰めようとするがバルの弦がそれを許さない
その光景はバトルマンガのワンシーンのようだった。
「あらあら、まだ五日なのに、血気盛んですわね」
「「――――ッ!?」」
争っていた二人が、その声で止まった。
あたしと美優ちゃんも声のする方を見上げる。
そこにいるのは西洋のドレスのような白い服装に、
マフラーのような物を首から垂らし両端に鈴のような器を付けた少女がいた。
「…リブラ!!」
「……面倒なのが来ちゃったわね」
彼女を見て、レオンとバルはそれぞれ嫌な者にあったような苦しそうな顔をした。
そしてリブラと言う少女は静かに上空から落ちていき、地面に足を付ける。
「はぁ…やっぱり西洋のドレスはスカートが気になりますわね。今度あたり和服にしようかしら」
戦場のど真ん中に来て、そんなとぼけたことを言うリブラ。
「さて、わたくし争いごとは好みません。星座占いのルールで争わなければならないですが
こんな早くに争わなくてもよろしくなくて?もうちょっとゆっくり行きましょうよ」
などとのんきなことを言いながら、レオンとバルに問いかける。
「う、うるさいのよ!あんたはぁ!!」
先に煮を切らしたのはバルのほうだった。
彼女は弦を勢いよくリブラに向けて放つ。
「…弦と鈴の『スピード』を平等に」
そう呟いた直後、彼女は両端についている鈴を大きく放つ。
するとその鈴が全ての弦を弾いてしまう。
「くそッ!!」
そのままの勢いに乗って、レオンも彼女に立ち向かう。
「…レオンとわたくしの『腕の力』を平等に」
その直後、レオンの重い拳をその細い腕で受け止める。
「これでわかったかしら?今日あなた達はわたくしには勝てない。
そしてわたくしはあなた方がここでひかないならわたくしがあなた方を潰しますわ♪」
「「―――――ッ!!!!」」
悔しそうに二人はリブラを見た。
彼女はのんきに髪を整えながら、二人の返答を待っている。
「ね、ねえバル。今日のところはやめとこう?そもそも私達が戦う義理はないよ」
「そ、そうだったねミュー。ごめん…。ちょっと私が興奮しちゃって……」
美優ちゃんに言われしゅんと身体を小さくしながらバルは言った。
「はぁ……帰るぞ由香。せっかく買ったビールがぬるくなっちまったぜ…」
レオンも不機嫌そうにそういって去ろうとする。
「え、ちょ。ちょっと待ってよレオン!!」
あたしもそれに慌ててついていった。
「よし、これにて第一戦閉幕ぅ〜ですわ♪」
戦場のど真ん中でまたの拍子抜けするようなセリフを吐くリブラ。
その言葉に既に去ったレオンやバル以外の気配も散り散りに去っていった。
これが、私たちの…長い戦いの………はじまりだった。
一章として始まりの話を書かせていただきました^^
こっから色んな「星霊」と「占い師」が出ますので
もしよろしければお読みください♪♪