その5
レーシェは虚ろな目を開いた。
腹が痛い。呼吸が苦しい。目の前もよく見えないし、すぐ傍に立っているのは―――――
「…ティ……ぅ…?」
こちらに背を向けて立つ少女がいる。でもどうして彼女の右手が赤いんだろう。
それに、彼女に群がる影は――――敵?
「…ぶ、な…」
危ないよ。
そう言いたいのに言葉にならない。
―――――また助けてもらっているんだろうか、僕は。
悔しい。急速に湧き上がった思いにレーシェは自ら戸惑った。
今の自分になってから、無感動で無表情な日々が続いていたのになぜだろう。
「っ、ふっ…」
喉をせり上がる深いな感触にレーシェは呻く。そのままだらしなく開いた口からぬるりとしたものが吐き出される。
―――――ああ、死ぬのか、また
いつかはと分かっていたことなのに、このままでは嫌だと思う自分がいる。
「ス…ぃ…ル…」
危ないよ。逃げて。
おぼろげに見える少女の背中に呼びかける。
どうしてこんなに気にするんだろう。
助けてもらったから?偽装でもいいから一緒に行こうと思ったから?最初に声を掛けられたと き か ら
ああ。
僕だって君を守りたいんだ。
自覚した瞬間、意志は身体を動かす力になった。
「…ぃール…、っ、」
喉に音を集めて振り絞る。届け。届け。
「……ぅ、ぁ…ス、ティールっ…!!」
少女の背中が揺れた。
時が止まったかのような静寂を感じた後、ゆっくりと彼女は振り返る。
「…れーしぇ…?」
はっきり見えた。涙を零して頼りなげにレーシェを見る。
「スティ、ル…」
大丈夫と微笑んでみせる。果たして上手く笑えているだろうか。
「レーシェえっ」
少女が駆け寄ってくる。
うん。おいで。
傍らに来た少女に手を伸ばすと、握り返してくれた。
「スティール、離さない、で…」
「え…?」
「今だあっ!!!」
スティールの向こう、怖気づいた男たちが懲りずに群がってくる。
だけど、もう、触れさせない。
「僕が、守、る……っ!」
地が揺れた。けれどそれは一瞬のこと。
次の瞬間には大地から百の尖塔が噴き出した。
あと、2ページくらい…?うっ…




