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その4

「レーシェ!レーシェっ!」


 背後から腹部まで貫通する一撃を受けた少年の身体は芯が抜け、だらりと横たわる。うつぶせになっていた身体をなんとか返すと、少年の顔は色を失って白くなっていた。腹部は真っ赤に染まり、口元からも血が幾筋も流れ落ちている。


「よくも…っ!」


 レーシェを刺した男を睨みつける。殺気を込めれば男は少し怯んだがすぐに余裕の表情を浮かべた。


「さっきは世話になったなあ、姉ちゃん」


 スティールの後ろから声がする。ようやく事態を察してスティールは舌打ちした。


「復讐なんて、情けない…」

「なんか言ったか?そこの兄ちゃんみたいに動けなくしてもいいんだぜ」

「っの…!」


 動けないどころかこれでは死んでしまう。おそらく、今すぐに医者に見せなければ間に合わないくらい。


――――――私のせいだ。


 こいつらを追い払ったこと?逃げていくのを見逃したこと?最初にレーシェに声を掛けてしまったこと?


 自問自答がスティールの頭の中を駆け巡る。


「ごめん、レーシェ」


 スティールの頬を涙が伝った。


「泣くなって。美人が台無しだ。まあ、姉ちゃんが一緒に来てくれたらそいつを助けてやってもいいぜ」

「…へえ」


 俯いたままスティールが言う。そしておもむろに目元をぬぐった。


「そうそう。だから一緒に来てくれよ」



「……れ」


 それは小さな声だった。


「はっきり言ってくれよ、姉ちゃん。来るのか?来ないのか?」


 男の声に苛立ちが混じり始める。だからスティールははっきり言ってやった。


「行かないから帰れ、この野郎」


 ぴきっ。


「ほう…?」


 男のこめかみに青筋が浮かぶ。


「やれええええっ!!」


 それを合図に一斉にスティールに襲い掛かった。






「―――――消えようよ」


 スティールは手を伸ばす。


 触れたのは相手の武器ではなく身体の一部だった。


「ぎゃあああああっ!!!」


 ぼたっと大量の液体の落ちる音がした。


「…ば、ばけもの…」


 悲鳴を上げて転がっているのは3人。見上げればまだ4人くらいはいそうなのは先程より増えたのか。


「…言ったのに。ねえ」


 スティールの右手は真っ赤な液体を滴らせている。その足元には零れた液体が池を作って少女を赤い大地の上に立たせていた。


「てめえ、血を…盗んだってのか…」


 後ろで控えていた男たちも凄惨な光景に思わず後ずさった。


 スティールは彼らに優しく微笑んでみせた。


「ね、消えて」 


 

あれ?今日中に終わるかな、これ…

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