その2
何が起きたのか彼らには理解できなかった。
「この女ぁっ!」
頭に血が昇った一人がスティールに飛び掛る。同じように剣を振り上げ、小柄な少女を捉えた――――
「なっ……」
またしても、冷静に少女が剣に触れた瞬間にそれは少女の手の中に移っていた。
「呆けてないのっ!」
驚愕に固まった男の隙を突いてスティールがその腹を蹴飛ばす。呻き声をあげてその男が転がった。
――――――あと二人。
残りの二人は明らかに狼狽した様子で、奇声をあげてスティールに向かってくる。先程手に入れた剣は遠くへ放り投げて転がった。
反対方向からそれぞれやってきた相手に、スティールは先に掛かってきた男を避けてすれ違いざま武器を奪う。その勢いのまま向き直って後から来た男の喉元に突きつけた。
――――――正直重い。
「学習しようよ、おじさん」
刃先を揺らして喉を引っかくような動きを見せると、その男は呆気なく武器を手放した。
「帰って。見たでしょう?私は盗める。剣でも、お金でも、例えばその眼球でも、――――――――心臓でも」
男たちの目に怯えの色が走った。手下たちが大男を伺う。
「―――くそっ!気味がわりぃっ、ずらかるぞ!」
それを合図に男たちが走り出した。どちらにアジトでもあるのか街道を外れて逃げていく。
「ふう…これで何とか……って、レーシェ!」
ようやく安心したスティールは同行者の存在を思い出して慌ててレーシェの姿を探す。
いまだ倒れたままの彼の傍に寄って抱き起こすと、暢気にもゆっくりと目を開けた。
「スティールさん…?」
「レーシェ!大丈夫?怪我してない?」
「あの人たちは…?」
「えっと、追い払った。もう大丈夫だから」
「・・・・・・」
レーシェがスティールを凝視する。
「…どうかした?」
「…喋り方が、なんか…」
「あ」
しまったとスティールが呟く。しかし、すぐに諦めた少女は肩をすくめて笑った。
「そ、こっちが地なの。さっきの方がお淑やかで可愛かったでしょ」




