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異界の界  作者: lukewarm
2/8

生前

 それは平凡な日常だ。

 ――いや、日常だったと言うべきだろう。

 朝起きて顔を洗い、コンタクトを入れ、食事をし、電車に乗り、四駅先で降り、歩いて高校に行き、ラノベを読んで授業を聞き流し、購買で菓子パンを買い、友人と戯れながらパンを食べ、昼寝して授業を聞き流し、歩いて駅まで戻る――さなか。


 トラックに撥ねられる。


 迫るトラック。

 ――ああ、死ぬのか。

 淡々と、そんなことを考える。

 走馬灯なんてなかった。

 だって俺には、そんな未練なんてなかったから。

 現実は残酷だ。

 俺は何かにぶち当たり、そして絶望した訳じゃないけども。

 現実は残酷だ。

 現実には何もない。

 俺の大好きな魔法や、超能力や、神や悪魔なんかはこの世にいない。

 だから、死ぬならそれまで。

 未練はない。

 生きれるならその方がいいけど、無理なら諦める。

 魔法や、超能力や、伝説の生物なんかがいないなら、来世や天国なんてあるはずないのだから。

 だからこの死を受け入れる。

 ああ、なんで死ぬんだろう。

 いつも通り生きて、いつも通り退屈な毎日を過……ご……し……た……の……に…………

 ……最後、俺が信号無視したんじゃないか。

 そもそも、手元の本ばっかり読んでて信号自体見てないや。


 ――なんだ、自業自得か。


 そう考えると、本当に未練がなくなった。

 トラックの運転手さん、事故起こさせて、本当にすみませんでした。




 刹那――世界が暗闇に変わる。

 闇は地面から湧きだし、俺を呑みこみ、暗闇へと放り出した。

 闇。

 それに俺は、歓喜を覚える。

 それは、ないはずの“何か”だったから。


「やあ。来たね、物語の種」

 その男は闇に浮かび上がるように存在する麗しき青年。

 片手に分厚い本を持ち、不敵に笑っている。

「ここが何なのか、気になっているようだね?」

 頷く。

「では教えてあげよう。ここ――そしてこの世界について……」


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