第9話
※ レッサリー王都 中央孤児院事務所他全て兼務の入口
「・・なんだお前!」
「どうでもいい、ここの責任者に合わせろ」
何か面倒臭そうなガキ・・俺と同じ?ちょっと歳上?そんな感じの奴等が前に立ち塞がったけど、威勢のいいだけのあんちゃんに用は無い。あと孤児院なのに俺より歳上じゃん。
ただまあ、余計な事に顔を突っ込んで行く俺なんです。
「ええと、はい。ここも元々は教会の傘下でありました。ですが医療員に務められない職員がここを任されています」
ヒントが一杯あったなこれ。傘下でありましたはもう違う?医務院に務められないは、回復能力とかか?それに出て来たのも一人やん。
「こちらの孤児院勤めの出来る者も最近は増えておらず、運営もお貴族様の支援に頼っているのです。それも少し減っているのですが」
等々の深い話もここまでにして、其れには踏み込まず早々に話題を逸らす。何かの事が起きたら相応の藪蛇な事が起こる可能性も合ったからだ。
この修道女らしき女が不満事を思い描くと、その内容が情報に箇条書きに表示された。要らなかったよそんな機能!じっくりの話し合いに付き合わないし、ゴブリンの思い事とか表示されては堪らん。
〇ここも当初は多数の貴族が支援をしていたが、近頃まで寄付の減額が無かったのはノーテウ・ドゥファン伯爵家だけ。
〇今はノーテウ・ドゥファン伯爵が後ろ盾に成ってくれて、採取したスライムゼリーを商業ギルドに卸せている。
〇各貴族からの寄付の減額理由は、勇者ヨンサム・レッサリー第一王子が魔王国の侵攻に大きく予算を集めたからと聞かされた。
「これ食べられたら食べて下さい」
ここは手持ちの野菜の山盛りを寄付しておこう。色んな野菜を持っているけど、100人前くらいの量がありそうだ。
取り敢えずの初めは手持ちの野菜を見せ、この孤児院にある買い置きの物をちょっと移動する。そこは「古い物から食べて的に」入り切らないかちょっと焦ったよ。安心して下さい、状態維持を掛けます。
その結論としては、長持ちする物は後回しにして貰うで解消さ。ダメそうな奴はスライムが処分するらしい。
ゴミを食い、増えた自分の分身はゼリーに成るのか?ナンマイダー
〇スライムゼリーはこう作る。薄茶色のスライムは草原の葉っぱだけを沢山食べさせてから分裂させる。
〇濃茶に成ったスライムからゼリーを取り、十分な水分を飛ばす(煮る)すと軟膏状の傷薬に成る(ゼリーの数倍は高値になる)
いいね!商業ギルドの交渉役が俺って・・まあ暇だし直ぐに行こう。
「ええっと、孤児院の方々にはスライムゼリーの納入に問題はありませんが」
「さらに此方を!ですね。」
そこそこのお金が発生するかもと、孤児院に居た修道女さんも連れ立って来ている。そこに孤児数人はお願いしたが、面倒臭さそうなあのガキ達は要らなかったのに。
俺が教えて作った軟膏ゼリーは、作り方は秘匿して貰い販売全権を商業ギルドにお願いした。
「こんな感じに塗り込むと擦り傷はあっという間に治っちゃう」
ここで登場の擦り傷を持ってる子、数少ない一人を検体者に連れて来た。その子の擦り傷を軟膏でさっと直すと、すごいブスクレ顔をこっちに向けてくる。
そりゃまあねえ、孤児院で他の子を治してたら痛みが無くなってみんな喜んでいたんだ。それなのにここまで待たされ痛かったし、その憎い奴が目の前だし!まあブスクレ上等だよ。
なんと中級ポーションもびっくりな性能で、お値段が超低価格なんですよ。商業ギルドの人が悪事を考えたら後ろ盾の伯爵が何をしてくるか?へへ
「任せに任せてみんなお任せですが、小さい皿か漏れにくい葉を使って量り売りにすれば、買う人達も買い易くて良く無いですか?」
ねー納品するのも樽か大瓶(土器)に出来るもの。スライムゼリーを入れてる器だってただじゃ無いんだよ。
物売りは作って売るまで考えないといかんぞ。スライムゼリーやスライム軟膏をそこそこのビジネスにしたいので、餌に出来る不投棄ゴミをどうにか出来ないか?
やんややんやと孤児院の一団・・弱間数人の検体者は不満顔だったが、適当にお帰りいただいた。もう会う事は無さそうだし。
「余計な話を耳に入れたく無かったので、孤児院の方達が居る時には話せませんでしたが、ゴミ収集の商会の状況はどうなのですか?一度聞いた話ですが、ゴミの処理場には成りませんが、ある程度はスライムが処理出来ます。伯爵にこの話を通した方が、スラムの端の不法投棄を減らせたりしませんか?」
「それは其れ也に苦情も入っているのですが、あの収集業者もユンボソン男爵様の後ろ盾を持っていまして。王都内はゴミの量も大変多く、7つの商会から成り立っています。そのどれかの一つ?振り分けられている何組かの一組か二組なのでしょか?簡単な対処は出来ていないのです。」
「そうですか、様子見しか出来なそうですね。」
いやー残念顔がどんなか知らんけど、この場は適当な顔で濁しました。認識されてない・・この人少し前にゴミの話しを聞いた人だったわ。
ダツダン!パレード3日前・・何とかデイズっぽい何かです。あの日新たなスライムの活用法がないだろうか?そんな事を考えながら、夜の繁華街を彷徨っていたら素行の悪い一団に遭遇した。
遊び場の多い都内を彷徨う、将来の無い若者達みたいな奴等だ。無駄金を消費せず貯金しとけよ・・あっ、こいつらゴミじゃん。いやいや、ゴミ収集商会の奴だ。儲かってるのか?
なまいきに仕事の悩みの相談をしつつ、何時でも勤勉な俺ってマジ凄いと奢りまくっとる。官庁勤務に成れるな、清掃業にも届いてないけど。
リサイクル業界は国の援助でほぼ賄ってたから、真剣に仕事に取り組むとか無かったし他国に捨ててたからなあ。何処も碌な奴がいないな。
おおぅ、こいつ等は一応接待っぽい。持ち上げられてる偉そうな役人?管職?ああ、文官ね。ぶぅふっっードゥファン伯爵家の文官かよ!
神様やってない?何なのこのタイミング!いばりデブは始末の対象かな?汚職横領使い込みって、お金三姉妹ですか?身体が機能崩壊寸前のデブなんですけど。まあ様子みしつつ店に入ったらやっとくか。
そんなあんなの日から2日も経ったけど、ドゥファン伯爵様に面会希望を出し今日が面会の日だったりする。
「例の短剣の事で報酬が欲しいとのことだな」
「はい」
いやー怖い程こっちを睨んでますよこのおじじ。最後まで長引かせれば、相当の切れ長の目が完成しちゃうよ。
「いくら欲しい」
「いえ、お金では無く知りたい事が御座いまして。お話頂ける事であればお聞きしたいかと」
「・・なんだ?」
「はい、王都の正門に程近い孤児院をご存知かと」
「・・だれ・・いや何処から聞いた?」
「はい、それは商業ギルドで御座います。孤児院の経営が窮した折に手を差し伸べてお救いしたとか」
「大した出費の物ではない」
「はい。我等平民にとっては感謝しか有りません。ですがここに来て経営に危機を感じたのかも知れません。商業ギルドに追加の仕事を依頼しております。他の貴族の方々の支援がもっと減る様な事が在るのか知りたかったのです。」
「・・他・・勇者侵攻なんぞやでの資金要請など出ていない筈だが・・」
「孤児院の方に出向く者が何か知っているとか?」
「・・支援?救援?・・アウトデーか?」
「はい!?アウトデー様と申すのですか?」
「・・なんだ?」
「はい、2日前の夜半に東の中商店街の飲み屋で、「俺様を誰だと、・・家のアウトデーと喚きながら倒れたらしいので。しかも金まで撒いたとか。一緒に飲んでいたゴミの収集業の方達はその後急に消えたらしいです。」
「・・・」
「孤児院にお貴族様方の援助が減る様な出来事は無さそうと思って良いのでしょうか?」
「事は国からの要請で動く事はある。だが我がドゥファン伯爵家からは、いままで通りだ。それの確認か?」
「はい。変わっていなかったのか確認もしたかったですので。それの事をお聞きしたかったのです」
「ふん、変わらぬものとしてやる。暫し時間は掛るがな」
「はい、宜しくお願いします」
最後はタヌキ同志の化かし合いに成ったか。中々食えない爺さんだよ。平民の俺への侮りは少なからず合ったが、見た目だけで対応したりしなかった。いや、見た目からの侮り?さすが伯爵、サスハクだ。
用も終わったのでそそくさと屋敷から出ようとしたら、摘まみ出される感じで出された。何の仕様だ。
心配しなくても二度と・・忘れ物で来たりするから、ここで確約はしないよ。孤児院にも2度と行く事は無いと思ったが、今回の事は話したほうが良いだろう。
だが孤児院、されど孤児院だ。認識されて無かったからお前誰状態と、擦り傷の検体者達にはめっちゃ懐かれた。遊び疲れもあるんだね。
さっさっ!パレード2日前です。3日後が当日なのは良く解らない言い回しじゃないかな?それと、孤児達と予想外の遊びをしたので、宿屋を取りそこない冒険者ギルドの斡旋先の宿に泊まった。
そこはお金の管理問題があっちこっちに合って、夜の飛び込み客への対応が冷たかったりする。
俺って毎回が新期扱いだから、一見さんお断りの店には絶対に入れない。予約可、その日に辿り着けないと無駄に成ります。
だからふらプーな俺は、冒険者ギルドにお願いするんだけど、ギルドタグを見せる度に仕事しろ!的な目で見られる。
昼前の時間に朝昼兼用の食事をし、冒険者ギルドに来て掲示物を見たら知ってる話しが出ていた。
あの横領犯のアウトデーと当日に飲んでいた奴等が、不審人物として手配されている。不審・・横領犯の共犯とか、世間に出せない犯罪の横行を広めるのは伯爵家の醜聞を招くからな。
あの家で何を遣ったかくらいは大雑把に解るだろうが、そこに便乗して濡れ衣を着せる奴が居ても可笑しくない。
不審は不審を積み重ねるから、どれだけ信用の置ける者が居るかにもよるけど。
これと言って何もする事の無い俺は、暇潰しを兼ねて外壁の外へ出ようとしたら審査で跳ねられた。
予備冒険者は冒険者と同行するか、農村部あたりの依頼の仕事を受けその書類を持参する必要があると。
誰だよ仕事しろとか。城壁内の予備冒険者の依頼は、お金に成らない肉体労働ならまだましで、掃除範囲が解りずらい掃除だったりする。遣り損、遣らなきゃ怒られ損と見の蓋も無いやつだ。
あっちこっちの掲示板に異常に目立つ掲示物は、ヨンサム・レッサリー第一王子の凱旋パレードを告知している奴だった。
そんな彼は王城内で浮かれ放題に違いない、このパレードが終わりもう少しの時間を過ごせば、ウエストりー王国の第二王女が嫁として輿入れする手筈に成っている。
この待ちの期間が結構あやふやだったりするのは、この世界の移動速度がかなり遅いからだろう。
さらに足を遅くするのは、魔王討伐に打って出た敗残兵が盗賊に走った事も起因する。
そいつらは敗北もあるが、そこで死にたくないからの脱走兵であった。敗戦し戻った兵は責任を取らされ厳罰が処される。折角戻っても死ぬ可能性があるなら、生き残りを掛けての盗賊への転職。ここに夢や希望があるのか?ゴブリンみたいだ。