第8話
※ レッサリー王都 王都冒険者ギルト中央支部
「ゴブリ・・ゴブイムさん。こちらが盗賊団団長の懸賞金と、犯罪奴隷7人の買い取り金に馬車馬4頭の買い取り金の合計です。金額を声に出す事は危ぶまれますので、この書類で確認して下さい。」
「はい」
まあ言ってる事は間違ってないだろうが、懸賞金とか買い取りあたりで其れ也の金額が予想出来ちゃうよね?そこのお金も手元を見えなくする形でも、治安維持に何となく貢献?遣ってます感がありありだ。
因みに俺の名前がゴブリン臭い名前なのは、其れ也の意図から来ていたりする。しかも偽名として出ないから、こっちの世界で使える仕様なんだよ。
創造神であるアトウムから貰ったアトーという名は、この世界では名として使ってはいけない奴らしい。ウをーで伸ばしてるのに使えない・・むしろ違う名にすれば!
まあ自分の名を殆ど使ってないから、ゴブイムの方が馴染んでいたりする。ゴブリン、ゴブリンって叫びまくってた・・ああゴブリンに成り切ってたわ。
誰がゴブリンだよ!呪詛のように否定する俺です。
この冒険者ギルドの受付嬢が、俺の襟元を凝視するんだが・・この世界に無さそうな刺繍ガラの花フリルみたいな形で精密に作り込まれている。俺はそいつを取り覗きたかったが、このブラウス全体が崩壊しそうなので諦めた。
しかも白!真っ白なブラウス。その上から盗賊の所で拾ったシャツを着て誤魔化した訳だが、この襟元を隠すシャツなんて無かったからね。
王女クラスがオーダーで・・頼めないが頼むのかな?王子にセンスは期待出来ない、首輪形の襟に成りそうだし。
無事予備冒険者に成った(未成年)なのでもうこの冒険者ギルドに用は無い。俺の前に居る受付嬢や、飲み食い中の冒険者達を一通り分析に掛けたが重要な敵はいなかった。
商館狂いや賭け狂いはそんな大罪じゃないし、盗賊括りの強盗や殺人鬼なら問答無用なんだが。
「おおっとすっかり忘れてたよ。潰した盗賊団が結構な数の冒険者のタグを所持してたよ。それも渡しとく。衛兵さんにも言ったけど、処分しないと悪用されそうだよね。」
「・・それは。現在は行方不明の扱いの冒険者はいません。一応紛失物の扱いで預かりますが、一定の期間に引き取りに来なければ所持者死亡の扱いに成ります。その時には、それの拾得の対価が発生します。その期間も結構な長さに成りますから、どちらのギルドに移動しても受け取れる形にして起きます。それではありがとうございました。」
「了解でーす」
それではのお暇で外に繰り出し、誰かが俺を狙ってくれば良い釣りが出来るかもなと。
ゴブリンの耳との格闘中に追加の盗賊のお金の書類も貰ったし、紋付の短剣がノーテウ・ドゥファン伯爵家由来なのも解ったからな。
だがそれ以上は踏み込まない、馬鹿勇者ヨンサム・レッサリー第一王子のパレードが6日後に行われるのだ。凱旋だって。
・・7回目の凱旋とは何だろうか?買い物帰りでも凱旋にしちゃったの?太陽から振ってるのは赤外線だから!
「あっ、こんな所に誘拐犯が!」
「あ”あ”っん!」
何でも威嚇すれば何とか成るさんに、バカバカと石をぶつけつつ相手が逃走した所を追い掛ける。そのまま追い詰めて追い詰めて追い詰めたら逃げ込んだ先へ同伴をかます。
奴等のステータスに誘拐歴が表示されてるから、片っ端から土下座プスっとを繰り返えした。
さらに奥の部屋の中て待ち構えた前衛の下っ端2人が、そこのドアを開けた瞬間に飛び掛かって来る。
その行動がおおって思うけど、躓いた様にもんどり的な感じの土下座にさせる。容赦なしの消失三昧だ。
「なんだてめえ」
「へえー偉そうな人攫いが居たか」
中で身構えた4人程の臨戦態勢中の奴等に見える様に、障害物に成った土下座の下っ端の首を跳ねる。
「問答などいらん!ほれ消失」
ここのリーダーらしいのを残し、幹部とは呼びたくないクズ達はハイハイの土下座に移った。リーダーの顔色もいつの間にかゴキブリの様な色に成っていたりする。さてと首を傾げながら思う。
「お前等みたいな裏稼業はな、捕まえても金に成ったりしない?秘密過ぎで証拠も出無そうだし、賞金首にも聞いた事がない」
「かっ、金か!ある、嫌出すぞ。幾らなら引くんだ?」
「はあ?お前の命はそんな安いのか?はした金なんて貰ってどうする?」
「いや、ある、あるぞ。みんな持ってけ!」
「ほう、消失」
じゃらじゃらと金貨がばら撒かれ、金貨に溺れてしまったクズどもが妙に邪魔だなと思った。
出入り口まではいはい野郎を蹴って寄せ集め、金品の全てを収納に確保する。ついでに部屋の中を家探ししたが、背後関係に繋がる種類らしき物は見つからなかった。何かに使えそうな書類は、血塗れに成らない場所に避けて置く。
先ずは生きてる人攫いの処分を終わらせ、最初に刺した奴等の腹に人攫いとダイニングメッセージを書いていく。床でもテーブルでもない腹・・いいのかダイニング?書いたの本人じゃないし!
これ、俺が残すものじゃないけどな。でも何で死んだか他の人には解らんから、こいつ等に黒幕が居れば知れるだろうよ。次はお前だ的に。
それから外へとごく自然に路地から出て来た俺は、冒険者ギルドに戻った。ふらふらと遊んでたら宿を取り損なったので、簡易的な宿代わりに成る冒険者ギルドにお願いに上がっている。泊めてくんろ。
お金はあるけど宿屋を知らない感じ?危ない宿屋が無い訳じゃないからさ。俺の選択肢にあの牢屋は無かったけど、冒険者ギルド的にはあるんだと。なんでも路上より安心だとか。
そりゃそうか、夜でも使える屋根付きのギルドの訓練所が、安心の範囲に入るとは思わないわ。
あのゴリラとの同室は避けたいのでついでに聞いたら、最後に捕まった盗賊が自白した為、確認が必要との事で衛兵所に連れて行かれたそうだ。だからって鍵を持って入れる牢屋を進めるのは止めてくれ。
宿賃も払えると言ったら、ちゃんとした宿屋に案内された。俺を知っていた昼間業務の奴が居なくて、引継ぎの酷さを垣間見てしまった。
報連相の大事を訴えたりしないが、そこは重要度が高い奴だったと思うぞ。
泊まった宿屋で起きたらもう直ぐ昼だと言われたが、必要な用事の類は6日?いやもう5日先か。ここから暫くは遭遇戦しか熟せないので、相手に期待するしか無いな。街中ぶらぶらを続けるか。
そして装備をばっちり着熟した俺は、後払いになっちまった宿代を払い屋台が揃っている場所を目指す。借金取りに追われた夜逃げじゃないけど、泊まり逃げにあわない様に宿代は前払いなんだって。
それと俺が今回だけ後払いなのは、冒険者ギルドの紹介なのと夜のお金の遣り取りはしていないとか。
場所か?お金の隠し場所がバレない為か?夜間金庫があれば手数料で儲かるのに。俺もそこそこのお金が集まってるし。
人攫いが200枚以上の金貨を持っていたんだよ?思わず他に隠してた金品まで持って来た。深みに嵌って行く泥棒の気持ちが解ったようで複雑です。だから屋台で発散だね。
「野菜のスープ?」
「ああ、肉は少な目だがその分安いぞ。隣に麦パンの屋台がある、漬けて食べれば腹の足しになるからな」
「解った、それ一つ頂戴」
器は絶対に返却しないといけないが、隣の麦パンを2個買っても全部で銅貨6枚に収まった。おつりに鉄貨を渡されたが、形が長方形で投げ銭にも出来無さそう。腹を満たしたというか、汁が多いので満杯を超えている。
しかも普通に食べれる味だったので、食に問題は起きないだろう。ギルドで見た残飯らしき物は、後から何かを突っ込んだ見せるユーチューバー?盗賊の副業なのかな?顔キモのユーチューバー・・多いよね?
特に何かを買うとかは無いので、あっちフラフラこっちフラフラしてたらスライディングタックルを仕掛けて来る奴か出て来た。
まあどうでもいい、弱い奴等に何か出来たりしないからひょいひょいと飛び越す。そのまま進むと終わりが見え、そこにゴミの山がありここがスラムだと。
まあ良く解らない不思議の一つだが、外壁の中に働かない人達のスラムがあるのだ。その外の指定の場所に外壁に守られていない農村部がある。そこに定住している人達は2千人近くいるそうな。
何と歪なと思ったが、そんな農村部の外側を兵士がまめに巡廻警備にあたっている。農家は大事だけど全てを覆う外壁も無理があるわけだ。
そこそこの隙間が多い動く外壁?上手く遣れてれば問題もすくないかな?農家出身の兵士は真剣なんだろうな。
農家は中級?スラム人は下級なんだな。
「スラムの脇のゴミが不法投棄って何だよ!」
怒るよ、怒鳴ったけど。不法投棄業者も一応チェック対象だな。金を貰って集めてるのに、処理をしないで捨てるとか。
思わずゴミの分析に憤ったけど、誰がとか解んないのよね。ゴミの不法投棄犯も罪人扱いで見れる様にと。投棄ゴミと表示されちゃった・・。
俺のそんなこんなの憤慨中に、スラムの年寄りチームが沸いて来る。奴等には痛い目を見るのはどっちなのか、ちょーっと!教えておくとしよう。
「・・ゴブリン?」
「・・途中からゴブリンに気がついたら目に狂気が」
「はあ、それと関係があるかは解りませんけど、10日置きにスラムで教会が炊き出しをします。それには戒めも入っていますから、食べさせる肉・・炊き出しの鍋で使われるのはゴブリンの肉です」
お前ちょっとは仕事しろよ、仕事に関係ない事を聞きにくんなよ、私が暇なのはお前のせいだ的な目をしつつ俺の必要な情報を教えてくれたのがギルドの受付嬢。
そんな事があのスラムの奴等を追い込んでいるのか?ゴブリン信仰?崇めてるの?それが見えたのでゴブリンを振り回し、ゴブリンアタックやゴブリンボンバーを決めつつ逃げ延びたからな。
あそこでゴブリン2匹の損失は、必要経費としておこう。その炊き出しの為にギルドにもゴブリン肉の依頼が教会から入るらしい。その時に在庫を流すか?
「すいませーん、冒険者ギルドから聞いて来ました」
消火器売りじゃないよ、ゴブリン売りとも違う。さっきのスラムの話しで、ゴミの不法投棄の事を聞いたらそれの関わりは商業ギルドなんだと。それで俺はピーンと来た訳で、そんな事業を商業ギルドが何処かの商会に斡旋したんじゃないかと。
ゴミは出る物腐る物なんだが、それを処理する場所もちゃんと作られていて、引き取りと捨てる事的な搬出搬入で飯を食ってる商会がある。
そこでの労働は其れ也の者達にも出来るから、ここは委託させているらしい。俺がそこで問題と感じたのは、ゴミ処理場の人間も委託業者らしく処理費用を持ち込みから取っている。これな!
そんなたいした金額じゃないし、国はしっかり支援としてお金も出しているんだと。それなのに持ち込み業者の一部の者はその金をケチったわけだ。
許すまじ。
不法投棄されてる場所を、教会の炊き出しで使っていればもっと厳しい対処がされたに違いない。なら次は教会か?