第65話
※ナサセクッ王国 オルト子爵家滞在中
「中々だったな」
「侯爵、子爵家の幼子2人の相手程度なのに、随分と疲弊して見えるな。笑顔に引き攣りも合ったぞ。」
「そんなに不得意とは思っていないが、似たり寄ったりの事も気にせず繰り返してくるのがな。それに気づかないのはどうなんだ?」
「安直に見たなら慣れが無いのだろう。もしくは楽しいから気づけないかだ。夢中に成れる事が少ないのではないか?知識の習得は、多くの者が好まないらしいからな」
私も含めてみたいな納得顔だが、特にルベール・ゲントールはその傾向にありそうだ。
こうして弁論大会は厳かな雰囲気・・ないわ!そう、有ったのは俺の最近のちょっとした思い出話しを語る会?そんなお話し会だ。
それしかないのよ、ここの子等は領を出た事など数回しか無かったのだから。さらに同年代と関わった事など無きに等しい。
むしろ俺は同じ生物だからとか、そんな説明から入ったからね。
それなのにルベールときたら、良く解らないニコニコ顔と何かに納得してやがって。
だから即座に仕返しもしてある、俺の渡したお金は好き勝手に使う事を禁じた。ルンルン買い物など許さん!ただ欲しい物があれば俺が買って渡すよと。
一人で外出した際に必要の買い物があった時は、恐怖の事後報告をする破目に成ったわけさ。
さし渡って彼女に必要な衣類はそこそこ買ったが、王都の方が・・最低限に切り替えが早い奴で王都で買うと。
「う~ん、レッサリー王国かぁ」
「ダメなのか?」
「レッサリーで親善大使の勉強?何か違う気がする。」
「ダメなのか?」
「双方を取り持つのが親善じゃなかろうか?各々の領なら外商管とかだったりだけど、国もそれ程はないからな。」
「ダメなのか?」
「針が飛んでるレコードかよ!まあいい、ルベール・ゲントールの雇い主は俺がする。月の基本給は金貨2枚でどうだ?」
「基本給は変わるのか?金貨2枚なら十分過ぎるな」
「まあ基本が変わるかは別として、衣食住は俺持ちにしとけば間に合わない事はないだろう。」
「畏まりました。」
「畏まらなくていい。お金の遣り繰り・・あっちこっちから入るから、手を付けるのに困るなあ。」
「・・領税の全てを受け取っているのだな」
「んにゃ、それも・・ああ、あれってどうなってるの?侯爵領にあった蓄財は、領地経営に使い回しにしたのよ。それでも国に払った領税、それからの配当が又来るわけだ。使い切れないから使い道に困るなあ。」
「いったい幾ら・・いや聞かない、聞きたくありません。頭が痛く成るので結構です。」
「ルベール・ゲントール、大使は大きな商談もある事を覚えておいてね。」
目を零すな!それに3秒ルールは使えないからな。
「イム侯爵様、王都ナサセクッへの出発は予定通りのまま、2日後で宜しいですね?」
良いよ、小さく肯いておく。オルト子爵家の2人の子女から逃れる、その算段も漸く整ったからな。たいした面倒じゃなかったけど、心情はそこそこ大きかった。
その増えてしまった俺の存在は、減っても元に戻るだけなのだが。
「ここからの大きな障害は、パァレユウ伯爵という者か。」
「はい、王都からの連絡に注意されたしと、名が書かれていましたので」
ほんとオルト子爵の言うように、面倒そうな奴が出て来やがった。王都の遣り取りは商業ギルドを介しているが、これは秘匿性がかなり薄いのだ。
あら何か来たみたい、その程度に職員が目にする場所になる。そこにそいつの情報?みんなバレバレに成るからな。
知った奴等の命の保証?誰もしないよ。危惧を書いて送るのも重罪に処される、そんな物騒な事になるのさ。だから王都にこれから帰路に入ると送ったら、その中にパァレユウ伯爵の名前とそれを丸で囲った中?があったのよ。
いやいやしたいけど、その領は通り道だったりする。
今回の俺達の目的はオルト子爵の諸々の報告と、それに俺も同行するからだ。いつもの勝手にお先にするのは、そのパァレユウ伯爵の件もあり同行に変更している。
さらにレッサリー王国に、ルベール・ゲントールを連れて行く事も決まった。俺の考えも浅く、同行に便利だと俺の部下の位置にしたが、これは不味いかも?そのまま俺の侯爵領に来るに違いない。
そうなると最大の問題が、移動時間の短縮が出来ない事。
ウマ!そうよね、お尻に負担があるよねー
ここはですね、ナサセクッの王都にレッサリー王国からお迎えを頼もう。公爵領?レッサリー王都に向かえを来させればいいじゃない。俺達がこれからの移動に6日・・今回は緊急の報告があるのです。いつもの、みんなの領に寄りますよ行動はなしで。
ガンバの行進で遅くても6日、もう一日くらい短縮の5日もありそう。ってな所に邪魔な感じのパァレユウ伯爵が浮上ですわ。
俺がオルトール集合国の様子を見ていたら、パァレユウ伯爵がシャミン男爵領に変な噂を流したのだろう。
伯爵が直接に知らせていないのは、彼が諜報の仕事が遣りたい所からだと。動きを悟らせない暗躍なら、人知れずの噂で事を動かそうとしたのかもな。
何もかもが中途半端だから、犯人?黒幕?まともに断定が出来ていない。
だが所詮はそんな噂で、それに信実が有るかは不確定だが策は操ればいい。シャミン男爵の子息も、目的を動かす出汁?何でも良かったのかもな。
少なくても今のシャミン男爵領は、ここで歩く早さを変えた様だ。子息に溜まった我慢は報われたのか?それは本人しか解らない心情なんだよ。
取り急ぎの行進だから随行員も少数になり、ここは総勢9人で済ませている。王都にはオルト子爵家の邸宅も構えているので、領までの帰路にはそこから随行員を追加するとの事
今日もやっと子供等から解放され、おやつタイムの少し前から旅先の予定の再確認をしていたのだ。その合間や隙間に、ごちゃごちゃとルベール・ゲントールが口を挟んでいたが。
今は旅程の衣服の選択に、使用人達に連れていかれた。売られた子牛の様な目が、こちらに哀愁を届けていた。
あいつ、女子の感覚を何処に落として来たのだろうか?ナサセクッの王城にお世話にるなら、ドレスなども必要に成りそうなのに。
ちょっと面倒だけど、王城に在りそうな・・俺達が滞在した時の注意事項や予定を先に聞くとする。備えあれば憂いなしと言うからな。
パァレユウ伯爵の件はそこそこ気になるので、オルト子爵が知りうる彼関係を聞いている。奴はかなり暇を持て余しているようだ。
彼の領地の先に王国直轄地があり、その先が王都とそんな位置関係に成る。その直轄地の中心に、パァレユウ伯爵の手掛けた有楽店の幾つかがあるらしい。
いやらしい、実にいやらしい。
そんな店が王都にでもあれば、災いになる口は堅いままなのだ。だが少し離れたお隣さん、そこは1日も掛からない気の抜ける場所なのさ。
幾つもの噂が溶ける場所を作っていたとわ。手強い?口が軽いだけなら、それで罪ほ問うのは難しいからな。
「イム侯爵様、そのネモの奇行は何なのですか?」
「ん?ああこれ?きっと腕に筋肉?肩かな?見分けが付かないけど上に向けての筋力アップじゃないかな?」
「ただ上げてるだけに見えますな。動きもそのままですし」
「あははは」
止まってる、いや寝てる?バンザイのままやん。フン!とか鼻息か何かを出そうよ。見た目が木彫り細工みたいだし。
確かにオルト子爵の言う奇行だろうなあ。
ルベール・ゲントールが、かなり早い時間でこちらに戻った。彼女の話しでは、着れる服の殆どを受け取って戻ったらしい。
そんな雑で良い事なの?色々な所から集められていて、中には買い取りの物もあるだろうに。
ただその辺は、オルト子爵が賄ってくれたのだとか。有難いです。
***
出発!あの2日何ちゃらは早く過ぎ、王都に向け長閑な道筋を進んで行く。長閑・・オルト子爵領からシャミン男爵領の隣の領まで1日が必要なのだ。
避けた訳じゃ無いよシャミン男爵領は。こちらが王都への道筋なのです。そして前日の昨日は、子爵領から少し先のこの辺を開拓しといた。
困る程に土地が余っているが、生産物の保存技術の無かった今までは、開拓も出来なかったのよ。だが安心して下さい!
生産物も整理し直し・・ぶっちゃけ作れない物はすっぱり諦め、出来る物を増産し過剰に成れば売ればいい作戦に変わった。技術?ギルドにあるじゃなーい。ウケケ
ルベール・ゲントールの呆れ顔はなんだ?お前の服代なんだぞ。勉強時間を増やしてやる。
暇だ!ルベールからはオルトール集合国の事を、思い出すままに語られるが驚愕する類の冒険譚は出てこない。
対抗するオルト子爵も似たような物だ、誰も波乱に巻き込まれている訳ではない。俺は万丈だが、苦労話しには遠いのだが。
それに語るより考えを進める方が、割と意欲が掻き立てられたりする。今もパァレユウ伯爵が起こす行動の予測や、それの対応を推測するのに余念が無い。
それと幾つかの対策も施し済で、付き合わされてる商業ギルドも可哀そうになる。諜報に関わりたい伯爵は、主な情報源を商業ギルドにしてそうだもの。
彼ならギルドの情報に真偽は問わず、その場に部下を送るなりして精査するからだ。するよね?これが諜報好きの根幹と言えるだろう。
そんな伯爵に表だっての対策は、宿泊予定先にある商業ギルドへの顔出しだ。そこで何かの連絡確認や、こちらがする必要の連絡を依頼する。
こんなバッチリに俺達の足跡が解るのだ、それ以外の何を収集するかは知らない。担当者も些か戸惑うのではないか?あまりにもセコイ嫌がらせに。
この幾つかと言った1つだが、これはオルト子爵の動きと俺のゴリゾブン侯爵も別扱いだ。特に俺の場合は、レッサリー王国の遣り取りもあるしゴリゾブン侯爵領の事もだな。
ついでにオルト子爵領に使いそうな肥料を、商業ギルド経由で送らせた。参考品なのに臭いとは、全くで全くな物の移動だわ。
自分の勇気が有機を生む・・聞かなかった事にしてくれ。日本の勇気は戦後にドンドン消されたわ。
俺の予想から全く期待に当たらない、お隣の領の市場は寒いものだった。解ってますぅーだって、オルト子爵領と変わらずの気候風土だからね。
ここに物珍しい果実とか合ったら、それこそ驚きのまま買い漁っただろう。いや無しです。
この地域にも少しは・・そこはオルト子爵領から伝播する事を期待する。何故?ここは男爵領だから、右に倣えが子爵領なのさ。
オルト子爵領が好景気に上がれば、それの情報はバンバン流れるのよ。これが又貴族制度が足を引っ張り、下位貴族の真似事はうんちゃらされるが今回は逆です。
もう褒め称えつ、みんなマネようぜ的に擦り寄りもあるし!
でも寒いわー。宿の料理もご想像道理でご座います。