フィエール辺境伯編 あらすじ・登場人物紹介
辺境伯の二姫、エイプリルは旧帝国からの戦姫の伝統を踏襲、チーム(姫隊)を率い、国境警護を任務としている。
大山脈西方の広大な地は、150年前まで、1000年に渡ってルースカリエ帝国だった。
ある時、七部族で形成されている遊牧民ガリエルが、優秀な部族長を得てアルテン高地の北西から低地に下りてきた。破竹の勢いで大陸を南東へと征服軍を進める。遂に千年帝国・ルースカリエに至り、北から守りを破り、帝都を落とす。更に南下、帝国の中央を割る。
最終的には、ガリエルの長は、末の皇女の身代わりをそれと知らず皇妃と定め、ガリエル皇国を開く。
皇弟フェロステラ卿は、この戦いを見定め、末の皇女とその守護の姫隊に所属する上位貴族の娘達を、植民地に逃がす選択をした。
フィエール子爵は、フェロステラ卿の臣下として植民地の最西フィエール平原を預かっていた。
フェロステラ卿に従って植民地に逃げる領民の最後尾を守り抜き、反転してガリエル兵を押し返すべく奮戦。
故郷奪還に燃える皇女が僅かの間に戦姫へと成長、姫隊を率いて子爵兵団に参戦、ガリエルを大山脈の西に押し返し、国境を確定。
皇女は、フィエール子爵へ嫁し子爵家は辺境伯位を預かる。
それから150年。ガリエルから第三王子を王女の婿に求められたフェロステラ公領改めドナティエール王国は、これを断るためにフィエール辺境伯の二の姫エイプリルを婚約者に指名。
エイプリルは王都を離れて貴族のための学園に、そして王宮の住人になることが決まる。
故郷を離れるまであとわずかの時を、エイプリルは辺境伯領の重要地点を巡る視察の旅に出て、そこに住む人々と別れの言葉を交わすことにした。
この編では、国土回復編を無理なくお読みいただけるよう、読者を辺境伯領を巡る旅へと誘います
主要登場人物紹介
ヒロイン
エイプリル・カンディステラ・ラ・フィエール
帝国の伝統を継いで姫隊を率いる、戦姫の血筋を引く娘
フィエール辺境伯家の二の姫。辺境伯家の指揮官のひとり
将来の夫たるエリス・コーエンとともに育ち戦ってきたが、王国の指名を受けて、第三王子の婚約者となる
辺境伯家の家族構成
父:辺境伯、ヘンリー・ル・フィエール
母:辺境伯正妻、メリーアン・セデステラ・カリス・ラ・フィエール
カリス侯爵家より嫁す
第一子:大姫、ローズ・フェリステラ・フィエール・ド・カンデラ
カンデラ公爵夫人
第二子:マクニール子爵 (敬称)、ジャルダン・ル・フィエール
目下王宮で事務方労働中
第三子:次姫、エイプリル・カンディステラ・ラ・フィエール
帝国の初代戦姫の名を継ぐ
姫隊の主要メンバーと構成員
エイプリル・ラ・フィエール、愛称エリー:
フィエール家兵団の指揮官、姫隊リーダー
騎士エルザ・ラドクリフ、通称、エル:
エイプリルの乳母子。バックアップ隊を管理
騎士エリス・コーエン:
エイプリルの夫になるはずだったフィエールの奉公人
サポート隊を管理
騎士ファビアン・キャメロン:
森人の血を引く。徹底した武闘派、特に役割はない
騎士マイケル・ラドクリフ:
姫隊の馬と犬を管理。エルザの弟
姫隊のバックアップ隊:情報収集、管理、先行索敵など、
表に出ない部分を扱う、9名
姫隊のサポート隊:輜重、雑用など、表に出る部分を担当する 24名
ウイレム:塔のウイレム、旧帝国の知の集約を引く魔法使い、錬金術師、賢者
砦・城、訪問順 5.サリア城下の花まつりに掲載の地図をご参照ください
サリア城:サリア男爵、妹サリア夫人・キャサリン
ホッジス城:ホッジス子爵ダン・ル・フィエール、辺境伯の実弟
ケイマン三叉路
ケッパー砦
ハック駐在所
ジガ城:ホーリー卿ジョットレイ
モリスン駐在所
ツェルナ三叉路
リバーアン砦:ストラッサー卿、リバーアン夫人ジョアンナ・コリンズ
ハスマン砦;ソーンダイク卿
他に、ゴッチ砦にゴッチ夫人、マナウス砦にソーンダイク卿
このお話では、固有名詞にラテン語、イタリア語、英語などが入り混じって使用されています
ドナティエール王国が、侵略から逃れて植民地に建てた国家であり、多重文化国家になっていることを示しています
まず、ヒロインのエイプリルという名前
ローマ初期の暦・ロムルス歴で4月を象徴するアフロディーテが、次第に英語で4月を意味するエイプリルに変わっていく言語変化が面白かったので、そこから取りました。
アフロディーテは、ギリシャ神の名で、ローマ神話ではヴィーナスとなっていると覚えていたのですが、実はそのあたりはローマが初期であるからだろうかな、という自分推測が多重文化を連想させました。考証はしていません妄想のみです
この妄想が非常に楽しい思い出だったので、この長編を書くきっかけになった短編で、ヒロインの名に迷いなくエイプリルを採用しました。
ヒロインの名前が、結果的にこの長編の枠となりました。
設定は、ギリシャからローマへ引き継がれた文化と歴史に強く影響されていますが、異世界設定に引きずられて魔法各種が混ぜ込まれました。
構想全体は、科学文明(ピタゴラス・数学とかエンペドクレス・物理学をイメージ)を持つギリシャ都市国家とそれを引き継いだローマ(コペルニクス・天文など)、それに対して武力頼みの周辺国家(例に引くのは失礼ですが、たとえばスパルタ)という仮の視点を基礎にしています。
(これはヨーロッパ視点の解釈であって、世界史的に見て正しいかどうかは別の問題です)
魔法を科学に置き換えていただけるとわかりやすいです
参考文献:
転身物語、オウィディウス
歴史、ヘロドトス
ヒストリア:岩明均・コミック
ヘロドトスとトゥキュディデス、 桜井万里子
登場人物の名前は、たとえばカンデラ公爵夫人、ローズ・フェリステラ・フィエール・ド・カンデラというような複数の語源で形成されています
カンデラ:スペイン語、ろうそく・行く道が暗くなった時にも明かりとなる存在の意
ローズ:英語、バラ・薫り高い花ではあるがその棘で家を護る、の意
フェリステラ:ラテン語、幸せな星・戦姫の血筋であることを表す
フィエール、ドナティエール、ラテン語系統言語を混ぜた創作、意味は付与していない
ラテン語およびその造語は、旧ルースカリエ帝国に起源を持つ人や場所の名前、および名誉称号
スペイン語、フランス語、イタリア語、およびそれらしく作った混合創作語は、植民地に住むことになった帝国貴族身辺で使用
英語は、植民地と融和していこうとする姿勢から来た、植民地の元の住民が使っていた言語を採用
例外的にドイツ語が入っているのは、元は森人の章があってそこで使っていた名残。この章にはエイプリルが登場しないため、フォーカスがずれると削除
という感じで名詞を選択しています。
現実的な理由もあります。登場人物が非常に多く、しかも作者の趣味で端役にも名前を付けているため、ある程度制限を掛けておかないと誰がどこの人だったか作者自身が混乱してしまうのです。
文化や政治は歴史枠にこだわらず、異世界として書いています。
魔法がありますから、やはり別世界です。指揮官の読みがよく、先読みした指示が良質なら、魔法がない世界に較べれば短期間で、武力に対抗できるだけの準備が整います。これこそがエイプリルがカンディステラの血と知を継承する所以であり、このあたりは主に国土回復戦編で出ます