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心臓が再びありえない大音響を奏でる。
アアアアアアアレンさん! ご自身の顔面偏差値を計算に入れた行動をしてください!
じゃないと、いつか死人が出ます! って言うか、もうすでに、アレンさんの知らないところで天に召されちゃった人いるんじゃないですか!? 萌死とか尊死とか嬉死とかで!
「わわわわわかりました……」
わかりましたってなんなのって自分でも思うけれど、それ以上に言いようがない。ほかになんて言えばいいのかわからない。ごめんなさい! 前世からの筋金入りの喪女なんで、恋愛のスキルはもう清々しいほどゼロなんです!
私はアワアワしながら、イフリートの真紅の毛並みに顔を埋めた。
精霊たちとアレンさんのおかげで、迷いは消えた。
私の中で、進むべき道も定まった。
だけど、エピローグが正しく進んでいない現状はなにも変わっていない。それについてはどうしたらいいんだろう? どうすれば、正しく進むようになる?
聖女の役割を私が肩代わりすればいいって、そんな単純な話でもないと思うのよ。
だって、それってバグにエラーを重ねてることにならない? ヒロインが聖女として覚醒しないバグに、悪役令嬢が聖女の能力を持ってしまうバグ。それを、悪役令嬢が聖女の役割を果たすってエラーでカバーしても、本当にそれでシナリオは正されるの? 状況は改善されるの?
上手くいけばいいけど、致命的に悪化しちゃう可能性だって高いよね?
だからやっぱり、私は悪役令嬢の枠からはみ出しちゃいけない気がするの。
とりあえず、悪役令嬢のままパンを焼くことで国や世界に貢献する方向で行くことになったから、ヒロインが聖女として神殿入りする邪魔はせずに済んだ。
まだ、シナリオが正規のルートに戻る余地はある。
そのために――私に何ができる?
そうだ。パン屋のオープンを目指す中で、ヒロインと精霊たちを逢わせることができないかな?
精霊たちがヒロインのことも好きになってくれたら、なにか変わるかもしれない――よね?
そこまで考えて、私はイフリートを見つめた。
「どうした? ティア」
イフリートが尻尾をフリフリしながら、頭をスリスリと押しつけてくる。
「もーっ! ずるいわよ! イフリートばっかり! アタシも抱っこしなさいよ!」
「ぼ、ボクもお膝に乗せて」
オンディーヌとグノームも私の膝に頭をこすりつける。
――うん! そうしよう! みんなと本来の聖女――ヒロインを逢わせてみよう!
私の立場では少し難しいけれど、なんとかアリス・ルミエス嬢とコンタクトを取ってみよう!
「はい、みんな抱っこね!」
私はにっこり笑って、オンディーヌとグノームをお膝に抱え上げた。
「じゃあ、シルフィードも!」
「えっ!? お、俺はいいって言ってるでしょーよ!」
シルフィードがギョッとして、すっとんで逃げてゆく。
んもう! テレ屋さんなんだから!
少しお休みをいただきまして、五章開始は12月10日(日)です。
再開をお待ちくださいませ。




