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「さっきも言ったでしょ? 私はイフリートが大好きよ」
耳をぺたんと寝かせてしゅんとしてしまったイフリートをぎゅうっと抱き締める。
「この大きさでこそイフリートって感じがするから、いいのよ。このままで」
「ほ、ホントか?」
「ホントよ。何度でも言うわ。イフリート大好き!」
「ティア~!」
イフリートがご機嫌でしっぽを振る。
「ず、ずるい! ずるいわっ! イフリートばっかり! アタシも抱っこ!」
そんな私たちに、オンディーヌが抗議の声を上げる。
「パンも食べたいわっ! あんバタートーストも! あんバターも! あんぱんもよ! この前のクリームパンも! ハニーバタートーストもよっ!」
「出て来て早々、うるせぇなぁ~」
「なによ! イフリート! アンタだけいい思いするなんて許さないんだからっ!」
ああ、喧嘩しないで喧嘩しないで。わかったから。
慌てて、オンディーヌを抱っこしてあげる。わ! やっぱり比べるとちっちゃい! 軽いっ!
「綺麗な毛並み……。吸い込まれそうな青ね」
「ふふっ。そうでしょう? もっと撫でていいのよ」
オンディーヌがふふんと誇らしげに笑う。この子、おしゃまな女の子って感じで可愛いな。
「あの、ぼ、ボクも……」
グノームが私の足をちょいちょいとつつく。
「やぁよ! まだアタシ!」
「え? で、でも、ボクだって抱っこしてもらいたい……。せ、せっかく受肉したし……」
あ、そうだよね。今まで肉体がなかったから、こういうふれあいってしたことないんだったよね。
「もうちょっと待ってなさいよ」
「オ、オンディーヌもイフリートにずるいって言ってたじゃない……」
「そ、そうだけど……」
「まずは順番にしよ。またいつでも抱っこしてあげるから。ね?」
そう言って優しく頭を撫でると、オンディーヌがむすっとして「しょうがないわね」と言う。
私は「おりこうさん」とさらに撫でてからオンディーヌを床に下ろして、グノームを抱き上げた。
この子もすっぽりと腕の中に収まるサイズ。
イフリートはあの大きさでいいけど、やっぱり普通の大きさのにゃんこもいい! 可愛いっ!
「君は不思議な色合いだね」
「だ、大地と、草花の色なの……。へ、変?」
「あ、そっか! そうだよね。変じゃないよ。すごく素敵!」
「あ、ありがと……」
グノームが恥ずかしそうに下を向く。この子はかなり大人しい性格みたい。
「ふふっ。ふわふわもちもち……」
短い手足もめちゃくちゃ可愛い。
しっかり堪能して――最後はシルフィードだね。
抱っこするために手を伸ばすと、シルフィードはビックリした様子で首を横に振った。
「え? 俺はいいよ。イフリートたちほど子供じゃないから」
お? ちょっと周りの目を意識し出した小学生の男の子みたいなこと言ってる。
「まぁまぁ、そう言わずに」
「え? えっ? い、いいってば!」
「私が抱っこしたいんだよ。にゃんこ大好きだから」
有無を言わせず抱っこして、すりすりする。
「~~~~っ!」
暴れたりはしないけど、恥ずかしいのかものすごく嫌がってる感じが――あ、なんか興奮する。
思う存分抱っこしてスリスリして、モフモフ撫で回して――ふぅ、満足!
ああ、やっぱりモフモフ最高っ!
そして、可愛いは正義っ!
「えーっと、じゃあ……」
ご所望のパンを用意しようと視線を巡らせて――アレンさんがじとっと私を見つめていることに気づく。
あ……あー……。
「こ、この子たちにパンを用意したら……ええと……話し合いましょうか……」




