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2-11

「自信満々ですね……」


「ええ、これは自信あります。間違いなく人気商品になりますよ」


 アレンさんが私の目を見て、きっぱりと言う。


「…………」


 金色にも見える――まっすぐで、真摯で、美し過ぎる双眸。

 不思議……。なんの根拠もないのに、アレンさんがそう言うなら絶対に大丈夫だって思える……。


「このあとは、また試作を?」


「え? ああ、はい。カレーパンともう一つ、お店に欠かせないと思っているメニューを」


「よろしければ、お手伝いさせてもらえないでしょうか?」


「え……?」


 思いがけない言葉に、私はパチパチと目を瞬いた。


 手伝いたい? 嬉しいけど……なんで?


「素人が手伝ったりしたら、パンを台無しにしてしまうでしょうか? それなら、邪魔にならないようにしますので、見学だけでもさせてもらえませんか?」


 私の沈黙を変な風にとったのか、アレンさんがなんだか申し訳なさそうにしながら言葉を続ける。


「この料理を作る際も、あまりにも手際が良過ぎて……。貴族のご令嬢だったことが信じられないぐらいで……。その、もっと見ていたいと言うか……」


 そこまで言って、なぜかほんのり顔を赤らめる。

 その赤面の意味はよくわからなかったけれど、手際のいい作業を見ていたいって気持ちはわかる。私もパン屋の仕込み風景の動画とか好きで、よく観てたもの。


「私のパンに興味を持ってくださってありがとうございます。聖騎士さまにお手伝いさせることが失礼にあたらないのであれば、ぜひ」


 もう一つのメニューは力のいる作業が多いので、むしろすごく助かります。


 にっこり笑ってそう言うと、アレンさんがぱぁっと顔を輝かせた。


「ほ、本当ですか!?」


 ひえっ!


 思わずギュウッと目をつむって、両手で顔を庇ってしまう。

 そんな私に、アレンさんはきょとんとして首を傾げた。


「あの……?」


「い、いえ、なんでもないです……。どうぞお気になさらず……」


 聖なる光(輝かんばかりの笑顔)に目が潰れそうになっただけです。


 あ、危な……。神が作りたもうた国宝級美青年の笑顔ってマジ凶器。ちゃんと気をつけてないと、店を出す前に天に召されかねないわ。うっかり直視しないようにしないと。


「もう一つのお店に欠かせないメニューって、どんなものなんですか?」


 自分の顔面の威力をわかっていないアレンさんが、ワクワク感を抑え切れてない様子で私を見る。くそぅ……! 好奇心旺盛な子供みたいな表情も最高にいい……! 

 おかしいでしょ。なんでこの人が攻略対象じゃないの? 前世からの筋金入りのガチ喪女ですら強制的にドキドキさせちゃうぐらいの顔面破壊力よ? 絶対に攻略対象であるべきでしょうよ! 攻略(プレイ)したかったよ! アレンさんルート!


 私はやかましい心臓を必死に宥めつつ、にっこりと笑った。


「クリームパンです!」





          ◇*◇





 玉子をボウルに割り入れて、砂糖を加えて、白っぽくなるまでしっかりとすり混ぜる。

 そこに小麦粉を加えて、さっと混ぜ合わせる。粘りが出てしまうので混ぜ過ぎては厳禁。粉感がなくなるぐらいがベスト。

 鍋で牛乳を温め、鍋肌からフツフツと泡が出るぐらいになったら火を止め、バターを加える。

 バターが溶けたら、最初の玉子を漉しながら少しずつ加えて、しっかりと混ぜ合わせる。


 そして、ここからが本番。


 再度火をつけて、木ベラで絶えず混ぜながら中火で加熱。

 最初はシャバシャバしているけれど、加熱していくうちにとろみがついてゆき、最後はもったり重くなる。大きめの気泡ができてきて、木ベラを持ち上げたときにクリームがリボン状に落ちて、そのまま筋がしっかり残るぐらいまでに固くなったら、カスタードクリームのできあがり!


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