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第九章  聖女兼パン屋はじめました!

8月9日 2巻発売します!!


8月9日


『断罪された悪役令嬢ですが、パンを焼いたら聖女にジョブチェンジしました!? ②』


が、カドカワBOOKSさまより、発売となります!!


わーい!! 2巻です!! 2巻!!

今回も美味しいパンがめちゃくちゃたくさん出てきますし、聖女問題もちょっと進展します!!

そして、そして――?


WEBでの更新のほうがあとになっちゃううえ、WEBに掲載されるのは第一稿なので、本のほうが文章が整っていますし、WEBにはないセリフや展開があったりしますので、よろしければ本を買ってくださると嬉しいです!!

「ありがとう! お姉ちゃん! 美味しかったよ!」


「本当にありがとうございます……!」


 男の子とその母らしき女性が、本当に嬉しそうに頭を下げる。

 アリス・ルミエスはにこにこ笑いながら、二人に手を振った。


「よろこんでいただけて嬉しいです。また来てね」


 親子と入れ替わるように、女の子が駆け寄ってくる。


「お姉さん! それ、ララにもちょうだい!」


「ララちゃんって言うの? もちろんだよ」


 鍋の中でくつくつと音を立てているのは、カレー。

 木のスープボウルにライスを入れ、そのうえにたっぷりとカレーをかけて渡してあげる。


「ありがとう!」


 ララと名乗った女の子がにっこり笑って、それを持って駆けてゆく。


 聖都は主神殿の前で炊き出しをはじめて、今日で五日目になる。カレーはここでは珍しいから、ほとんどの人は一口食べた瞬間はびっくりするけれど、おおむね好評だ。


(高価な香辛料をたっぷり使っているんだもの。そうでなくちゃ困るわ)


 正直、アリス自身は美味しいとは思ってない。こちらのライスは、日本のものとはかなり違う。サラダやリゾットなどに使われるもので、粒が丸くて大きく、芯は固い。粘り気もほとんどなく、香りや甘みも少ない。米自体が美味しいとは思えないうえに、ここにはカレールーが存在しない。小難しいスパイスを自分で調合して作っているからだろう。変なクセがあるのに、物足りない――なんともいえない味だ。


 それでも、この世界の人たちには美味しいと思えるらしい。


 まぁ、民の生活はラクじゃない。無料でもらえる食べものならなんでもありがたいと思えるだけかもしれないが。


(別に、そのへんの人間に感謝されたって嬉しくもなんともないけれど)


 民相手に人気を得たいわけじゃない。


 目的は精霊だ。


(一匹でいいのよ! 精霊をゲットできれば……!)


 アヴァリティアの嘘と姑息な人気取りを暴いて、自分こそが聖女であると主張できる!


 そうして、もう一度あの女を断罪するのだ。


(そうすれば、エピローグが上手く進み出すはずよ)


 そうでなくてはいけない。

 なぜなら、ヒロインは自分だからだ。


 悪役令嬢がもてはやされている現状は間違っているし、許せない!

 絶対にもう一度、すべてを奪ってやる。


 アヴァリティアは悪役令嬢として断罪され、破滅し、不幸になる。

 そして、ヒロインの自分は王太子と結ばれ、聖女として高みに登りつめ、誰よりも幸せになる。


 それが、この『エリュシオン・アリス』の正しいシナリオなんだから。


 ぐっと拳を握り締めた――そのとき、バタバタと足音が聞こえてくる。

 アリスは舌打ちして、振り返った。


「また、あなたですか!」


 神官がズカズカと無遠慮に近づいてくる。


「主神殿の前で炊き出しをしないでくださいと、何度言えばわかるのですか!?」


「で、でも……」


「でも、じゃありません。今すぐやめてください!」


 アリスは胸の前で両手を組み、わざと大きな声を上げた。


「そんな! おかしくないですか? 民のための行動を咎めるなんて! 神官さまは……いいえ、神殿は慈悲の心を否定するのですか?」


「っ……! 昨日もそう言ってらっしゃいましたが、規則は規則ですので!」


「え? では、困っている人が目の前にいたとしても、規則に反する場合、神殿は人々を救ってはくださらないということなのですか?」


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