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8-12

 私はアレンさんをまっすぐ見つめたまま、力強く頷いた。


「以前に話しましたよね? ショコラ――ココアは今は飲みものでしかありませんが、将来的には板状、粒状、クリーム状のものを開発したいと」


「はい、覚えています」


「オレさまも覚えてるぞ!」


 イフリートがはいはいと前足を上げる。

 そうだね、イフリートと出会った日のことだったよね。


 イフリートたちが傍にいることが当たり前になり過ぎて、なんだかものすごく昔のことのように思える……。


「それはチョコレートというものなんですが、必ず爆発的に売れます。必ず、です」


 グレドさんはあんまりピンと来ていない様子だったけれど、不味くてお茶として飲むしかないと言われていたナゴンから餡子を――そしてあんぱんやあんバターなどの人気商品を作り上げたのを間近で見てきたアレンさんは違う。私の『必ず』という強調に、表情を引き締めた。


「それほどのものですか……」


「はい、それほどのものです。現在の採取方法では絶対に追いつかなくなります。栽培、もしくは飼育する方法を見つけることは必須だと思っています」


「チョコレート……。それは、貴女の夢に絶対に必要なもの。そういうお話でしたね?」


 私は頷いた。


 パン屋で、チョコレートを使用した商品がないことなんてあるのだろうか? 少なくとも、私は知らない。必ずなんらかの形で使われているような気がする。


 そして、私の思い描く理想のパン屋には、それは絶対に必要だ。


「それならば、仕方がありませんね。――お任せを。貴女の身は私が守ります」


 アレンさんが目を細め、胸に手を当てて軽く一礼する。


「ありがとうございます!」


「オレさまたちも協力するぞ!」


「大丈夫よ。ティアは絶対にアタシたちが守ってあげるわ!」


 にゃんこたちもしっかり同調してくれる。


 よし! この勢いに乗って、テオブロマの実――カカオもゲットするぞ!





          ◇*◇





「ティア! このクレープっていうの、美味しい!」


「ホント、美味しい! 俺はこの鶏肉のカレーっぽい味のが好き!」


「ボクはこの玉子のが好きだよ。美味しいね」


「アタシはチーズとハムのが好きよ。ねぇねぇ、ティア。これはクリームやフルーツでも美味しいんじゃない?」


 にゃんこたちは、クレープを使ったラップサンドを食べてご満悦。私はホッと息をついた。


 前回、ナゴンを探しに行ったときは、家でお弁当の準備をしていったじゃない?

 イフリートも、受肉はまだしてなかった三にゃんずもそれを覚えていて、昨夜宿屋についてから、「山に入るならお弁当は?」って言い出したのよね。

 そして、イフリートが、「あのときのお弁当の玉子サンドは、めちゃくちゃ美味しかったぞ! また食べたい!」なんて言っちゃったもんだから、三にゃんずの『自分たちも食べたい』大合唱がはじまってしまい……。あれ? 私、朝食やランチで玉子サンド作ったことなかったっけ?

 ああ、マヨネーズを作るのが面倒くさいからやってなかったかも? 今度、マヨネーズも製品化するか。親孝行(おねだり)で。


 でも、今回山に入るのは、急遽決まったことだったから、当然パンを用意してきてない。


 どうしようかと悩んで悩んで――クレープを使ったラップサンドにすることにしたの。


 そして今朝、急いで材料を買ってきて、宿屋のおかみさんに頭を下げて厨房を使わせてもらって、全員分のラップサンドお弁当を作り上げた。


 具は、玉子サンドの中身――玉子サラダとハムチーズ、そして鶏肉とキャベツを香辛料で炒めたものの三種類。


 サンドウィッチとはまた少し違うけれど、満足してくれてよかった。


 イフリートが食べた玉子サンドも、帰ったら作ることをしっかりと約束させられたけどね。


「アレンさん、どうですか?」


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