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「たしかな情報としまして、私が討伐のために聖都を離れたのは三ヵ月ほど前のこと。その時点で、王太子殿下はアリス・ルミエス嬢と婚約はされていませんでした。そして、アリス・ルミエス嬢が精霊と心通わせられるとの情報につきましても、その時点で神殿は把握しておりませんでした」


「そう……ですか……」


 アレンさんが嘘をつく理由なんてない。だからきっと――それが正しいんだろう。


 どういうこと? シナリオどおりなんの狂いもなくエンディングまでたどり着いたはずなのに、どうしてエピローグにズレが生じているの?


「そもそもこの二年間で、魔物の出没件数は減るどころか増えております」


「えっ? そうなのですか?」


「はい。悪戯に不安を煽ることになりかねないのであまり言いたくはないのですが、実は聖騎士に十分な休息を与えることができないほどになっていまして……」


「……! それであんなにも……」


 今、そんなことになっているなんて……。


 二年間、パンのことだけを考えてきた自分を反省する。


 ああ、もう! 私の馬鹿! なんで気を抜いたりしたの? まだエピローグが残ってるんだから、ヒロインの動向に、ストーリーの進行に、最後までちゃんと気を配っておきなさいよ!

 でも、正しくエンディングを迎えたのにエピローグに狂いが生じるなんて思わないよね……。


「そういう事情なら、なおさら食事と休息を強要してよかったです」


 私は微笑んで、アレンさんと――あと二口ほどになったクロックムッシュのお皿を見た。


「足りますか? よろしければ甘いものなどいかがです? 余っているので、食べていただけると嬉しいのですが」


「甘いもの、ですか?」


「ええ、パンプディングというんです」


「パン……プ……? またはじめて聞くものですが、パンという名前がついていることからして、もしかして甘いパンなのですか?」


 そのとおり。パンプディングとは、もともと硬くなったフランスパンのアレンジとして作られたデザート。

 簡単に言うと、プリン液に一口大にちぎったバゲットを浸して十二分に吸わせてからオーブンで焼いたものだ。


 昨日、なぜだか猛烈に食べたくなって、たっぷり焼きりんごを入れてシナモンをきかせたものを作ったんだけど、いかんせん量が……一人で食べるには多すぎたのよね……。


「ええ、そうなんです。パンのデザートです。とってもおいしいですよ」


「パンのデザート……! 食べてみたいです。ご相伴にあずかります」


「よかった! 準備しますね!」


 私はにっこり笑って、冷蔵庫へと向かった。


「……どういうことなの……?」


 パンプディングを取り出しながら、小さく呟く。


 わからない。いったいなにが起きているのだろう?

 どうしてエピローグが正しく進んでいないのだろう?


「たしかめなきゃ……」


 一度、アシェンフォード公爵家に戻る必要がありそうだわ。




 

一章が終わりました。

少しお休みをいただきまして、二章開始は10月1日となります。

しばらくお待ちくださいませ。


一章は物語の冒頭なので、理解度を高めるために1ページの文字量を多くしていたのですが、

二章からは少し減らしてより読みやすくしたいと思います。


どうぞよろしくお願いいたします。

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