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7-14

「じゃあ、パンを少しどかすから、一緒に調理しましょう」


 あとで配るパンを手早く食品棚に移動させて作業台を開けて、調理開始。


 調理長が味見用に一部カットした洋ナシを、三分の一をスライスに、残りをサイコロ状にカットしてゆく。あれはバターソテーとサラダ用かな?


 じゃあ、私はコンポートを作ろう。赤い洋ナシもどきを大きめにカットして、皮を取り除いたら、レモン果汁をまぶす。

 お鍋に砂糖と白ワイン、水を入れて強火にかける。しっかり煮立たせてアルコールを飛ばしたら、弱火にして、レモンの皮を一欠片と洋ナシを入れて木の落し蓋をする。このまま二十分ほど煮る。


 その間に、最後の一個をクラフティにする。


 赤い洋ナシもどきは、皮を取り除いてサイコロ状にカットする。ボウルに卵を割り入れ、砂糖を加えてしっかりと混ぜる。そこに溶かしバター、小麦粉、牛乳の順で加えて、そのつどしっかりと混ぜて、だまにならないように。

 グラタン皿にサイコロ状の洋ナシもどきと卵液を流し入れたら、オーブンでじっくりと焼く。

 クラフティをオーブンに入れたところで、料理長がサラダとバターソテーを持って来てくれる。


 さっそく、二人で味見。


 まずはせっかく熱々だから、バターソテーのほうから。


 スライスされているものをフォークで半分に切っただけでも、食感がけっこうしっかりしていることがわかる。ではでは、一口。


「……! 美味しい!」


 これはたまんない!


「バターの強い風味に、果実の香りが負けていませんね。甘みも強いので、バターの風味と塩味を完全に自分の引き立て役にしていますよ」


「わかる! なにより、洋ナシって甘~い品種は果肉がトロッと柔らかいことが多いじゃない? これは甘みが強いのに、食感がしっかりしているのがまたいいアクセントになってる!」


 お次はサラダ。


「ん~っ! このシャクシャク食感が、すごくサラダに合ってる!」


「香りも甘みも強いので、生ハムと一緒に食べても負けないのがすごいですね! 後味の清涼感のおかげか、オリーブオイルにもよく合う!」


 これ、本当に美味しい。いいなぁ~。欲しいなぁ~。

 食事にも、デザートにも、もちろんパンにも、すごく使えるもの。


 そしてナゴンと同じくまだ世間にほとんど流通していないのだとしたら、お金にだってなりそうじゃない?


 いろんな意味で美味しい! あーっ! これ、欲しいっ!


「業者は、今回はたまたま手に入ったって言ってたのよね?」


「そう言ってましたね」


「販路開拓できないかなぁ……。もちろん、お値段にもよるけれど……」


 料理長が難しい顔をして、首を傾げる。


「どうでしょう? 問い合わせてはみますが……。こんな果実、噂でも耳にしたことがないので、本当にまだ発見されたばかりだとしたら、安定供給は難しいかもしれませんね」


「あー……やっぱりそうかなぁ?」


「でも、お気持ちはわかります。これ、ものすごく魅力的な食材だと思います。もっといろいろな調理法や味の組み合わせを試してみたいです」


「そう! そうなのよ!」


 これでジャムを作って、ジャムパンやデニッシュパンも焼いてみたいし、チーズやトマトなどと合わせた総菜パンもできそう! コンポートを使ってパイやタルト、ヴィエノワズリー系のパンも焼いてみたい!

 バターソテーをトーストに乗せて食べてみたいし、パンケーキはマストよね。絶対にやりたい!


 あ~~~~っ! パンを焼いたばっかりだけど、またパンが焼きたくなってきた~~~~っ!


「あ、あの……お嬢さま……」


 頭を抱えて見悶えていると、出入り口のほうからおずおずと小さな声がする。

 そちらを見ると、数人のメイドがなんだかもじもじしていた。


「なぁに? どうしたの?」


「あ、あの……その……」


「なんだかすごく……甘い香りがしていて……」


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