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7-5

「っ……」


 なんだかむずがゆいような気持ちとともに、頬が燃えるように熱くなる。


「あ、ありがとうございます……」


「みな、ティアに釘付けになると思います」


「ええ! 会場中の視線を奪うことは間違いないですわね!」


 シャディローランが完全同意する。

 アレンさんは困ったように微笑んだ。


「しまったな……。いいものを提案し過ぎた……」


 そう言って、私のイヤリングにそっと触れる。


「貴女を狙う不埒な輩が増えそうで、モヤモヤしてしまいます」


 私を映す――金色に見える双眸が甘やかに煌めく。

 瞬間、心臓がありえないほど大きな音を奏でる。


「で、でも、アレンさんが守ってくださいますよね?」


 あわあわしながらそう言うと、アレンさんがその眼差しを妖しく――そして優しくする。


「ええ、もちろん」


 アレンさんは頷いて、私の手にそっとキスをした。


「お守りいたします。我が聖女」


「っ……」


 優しく、甘く、柔らかで熱い唇の感触に、さらに心臓がドキンドキンと音を立てて脈打つ。


「ああっ! 聖女さまと銀髪騎士! なんて美しい光景でしょう! イマジネーションがビシバシ刺激されますわぁっ!」


 シャディローランがきゅんきゅんしてたまらないと言わんばかりに、両頬を手で覆って叫ぶ。


「新しいドレスを作りたい! 欲望百パーセント濃縮脳汁が溢れ出してしまいそうですわ!」


 なんかすごいこと言ってる。


「シャディローラン? だ、大丈夫!」


「もちろんですとも! アヴァリティアさまっ!」


 シャディローランが勢いよく私を振り返り、ドンと力強く胸を叩く。


「では、すぐにフィッティングルームでお着換えをお願いいたしますわ。アヴァリティアさま――いいえ、聖女さまの御為に、そちらのドレスは明後日までに完璧に仕上げてみせます! このシャディローランにお任せを!」


「ありがとう」


 彼女の笑顔に、胸がじんわりと温かくなる。

 ああ、変わらないなぁ、シャディローランは。


「とてもパワフルな方ですね」


 テキパキとアシスタントさんたちと打ち合わせをはじめたシャディローランを見つめて、アレンさんが微笑む。


「ええ、いつも元気をもらっています」


 私は大きく頷いた。


「私は、シャディローランほど自分の信念に忠実な人を見たことがありません」


 判断を他者に委ねることがない。誰かがそう言っていたから、みながこうしているから、世間がこうだから――そういう考え方は一切しない。


 己の目で見て、耳で聞いて、肌で感じたことがすべて。


 だから、アヴァリティアの評判の悪さなんて、彼女は一度だって気にしたことはなかった。

 自分のドレスを完璧に着こなしてくれるアヴァリティアが好きだと言い続けてくれた。そして、いつも笑顔で温かく迎え入れてくれた。


 いつだったか、言われたことがある。

『アヴァリティアさまは、モノづくりをしたことがあるでしょう』って。


 シャディローラン曰く、モノづくりの――零から一を作り出すことの大変さを知っている人は、所作が違うと。作品にはもちろん、作者にも最大限の敬意を以って丁寧に接してくれているのが、言葉や行動の端々に感じられるのだそう。


『だから、わたくし、アヴァリティアさまが大好きなんです。わたくしのことを尊敬してくださり、わたくしが作ったドレスを愛して、大切にしてくださり。ドレスを脇役と考えず、着用した際にはドレスを最大限輝かせるべく努力までしてくださるから』


 ふと、笑みがこぼれる。

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