佳代の記憶
読んで戴けたら嬉しいです。゜+.゜(´▽`人)゜+.゜
『私は知っていた。
あの病院で患者たちがどんな待遇を受けているか。
症状の軽い者は毎日近くの養鶏所に車で運ばれ一日中タダ働きをさせられていた。
風呂と言う名目で真冬に暖房の無い部屋で冷水を描けられたり、看護師の機嫌次第で暴力も振るわれていた。
中にはベッドに縛り付けられる者も居た。
看護師たちの寮を管理していた私は、それらの話を食堂で嬉々として話す場面によく出くわした。
そんな扱いを受けていれば脱走する者は後を絶たない。
それらの話を耳にしても私は心を動かされる事は無かった。
今思えばそれは酷い偏見だったのかもそれない。
でもその頃の私は、看護師寄りの考え方に毒されていた。
狂って看護師たちの手を煩わせる患者たちに人権などあっても仕方ないと思っていた。
脱走する者は何故かこの寮を見付けると希望を見付けたように目を輝かせて訪れたものだった。
私はそれらの患者に優しく接した。
それは彼らに憐れみを掛けるだとか、単純な親切心からでは無い。
人の迷惑など省みず自由が欲しいなどと思い上がっている彼らが許せなかったのだ。
彼女も脱走してこの寮に希望を見出だした一人に過ぎない。
私はいつものように言葉巧みに彼女を招き入れ、すっかり私を信じ込んで安心し切って食堂でコーヒーを飲んでいるのを見届けると、病院に脱走者を保護したと連絡を入れた。
食堂で病院での愚痴に適当に合わせていると、病院から三四人の看護師たちがどかどかと寮内に入って来た。
彼女は顔を強張らせて言った。
「裏切ったの?
信じていたのに!! 」
手錠を掛けられ、両脇を二人の看護師に掴まれて引き上げて行く時、彼女は振り返り私を見て顔を醜く歪ませ叫んだ。
「この偽善者!! 」
こんな光景はいつもの事だった。
何日か後に彼女が隔離室で首を吊り自殺したことを、食堂で面白おかしく話す看護師の会話で知る事になる。
精神を患いお国の役にも立たない狂った非国民が死んだところで、何が哀しいと言うのだろう。
だがその夜から私は彼女の夢に悩まされることになる。
かのしは毎晩恨めしそうに私を睨み付け「この、偽善者!!」と罵った。
そしてかつて私が病院に戻して死んで行った患者たちまで現れて、私を罵るようになった。
ある晩、私は奇怪な死を遂げる。
関節と云う関節が反対方向に曲がり腕や脚が複雑骨折して、内蔵に折れた肋骨が不自然に刺さり死に至った。
私が裏切った患者たちが一人ずつ怨みを込めて私の身体を折り曲げて行った。
壮絶な痛みがゆっくりと加えられ、私は人の激しい怨みの恐ろしさを嫌と言うほど思い知って息絶えた。
彼らの怨念は私をこの寮に縛り付けた。
そして私の念は私自身を縛り付ける。
その念とは、ここから誰をも出さないと云う事。
時折訪れる患者では無い民間人ですらも私は、それを望んでいるのかいないのかさえ解らないままここに閉じ込める事になる···················』
読んで戴き有り難うございます❗(人´▽`*)♪
なんと必死に更新していたら、いつの間にか後1話になっていました。
今日の朝7時に完結しようと思います。
最後までお付き合い戴けたら嬉しいです。