看板
ホラー、また書いてしまいました。
一万六千字余り、全十一話です。
読んで戴けたら、嬉しいです。
通りゃんせ、無限に続く帰り道
生きるよりも辛い、死ぬよりも辛い
誰かが見てる
誰も助けてくれないよ
延々続く帰り道
永遠に続く帰り道
人は潜在的に恐怖を楽しみたい欲求を持っているのかもしれない。
テレビやネットでの恐怖映像を見たがるのは、安全な恐怖を楽しみたいのだろう。
しかし映像だけでは物足りなさを感じる輩は後を絶たず、恐怖を貪欲に求める。
山道を縫うように走る一台のセダン。
乗っているのは大学生の木村孝則と本庄静音、ジムのインストラクターをしている時任里香、三人は高校時代から仲が良く、オカルト好きの三人はよくつるんで心霊スポットを巡っていた。
孝則は人生の目標が無かった。
目標の無い日常は退屈である。
退屈を持て余していた高校生の孝則に近付いて来たのが同級生の里香とその親友静音だった。
里香には目算があった。
孝則は背が高くしなやかな肢体が美しい少年だった。
それは、里香が恋に陥るには充分な理由になる。
純粋な乙女心は少しでも好きな人と近付きたいと願うものである。
しかし里香はあまりに恋に不器用だった。
里香が孝則を誘ったのは、街の外れにある心霊スポットと噂される古い神社だった。
だが何の刺激も無い日常に退屈し切っていた孝則は恐怖と言う刺激に飛び付いた。
こうして心霊スポットを三人で巡るようになって四年になる。
今日も里香の運転で山奥にある病院跡の廃屋探検に行く処である。
目指す廃屋は、戦時中表向きは精神異常患者の慰安を兼ねて建てられた病院だった。
しかし実際は当時非国民と呼ばれた人々、日本の軍隊では当たり前にあったいじめや暴力、そして戦場の凄惨な現場を見たショックで精神異常になった兵士などを収容していた実質は牢獄である。
現代では考えられないずさんな治療が行われ、噂ではロボトミー手術などが行われていたらしい。
院内では女性患者がレイプされて身籠った子供を注射で強制的に堕胎させるなどと云うこともあった。
そこは残酷を好む人間の縮図のような場所だった。
三人はその噂を聞き付け期待に胸を膨らませる。
女の霊が出ると言う大橋や、男の子の霊が出る展望台、火の玉や生首が見えると言う古井戸など様々な心霊スポットを訪れたが、彼らはこれといった恐怖体験をしたことが無かった。
ナビを見ていた孝則が言った。
「この辺りで横道があるみたいなんだけど」
里香はスピードを落とす。
うっそうと茂る木々の緑に目をこらしていた静音が声を上げる。
「あ、今のとこそうじゃないかな」
里香が急ブレーキを踏んだ。
三人の身体が前のめりになって車は止まり、バックする。
静音が言った。
「相変わらず里香の運転は荒いなあ
あ、ここ、ここ」
伸び放題になっている雑草が覆い被さっる隙間にかろうじて見える二本の土色を静音はガラス越しに指差す。
「えーー、こんなの見落としちゃうよお」
そう言って里香はハンドルを切る。
横道に入った途端、長く伸びた雑草が車体にぶつかりバラバラと音がする。
時間は夜の7時を過ぎていた。
辺りはまだ明るい筈だが横道に入ると木々の枝に光が遮断され一気に視界は暗くなった。
里香が徐に言った。
「ここを教えてくれた人が、結構な比率で出るって言ってたんだよね」
「今度こそ当たりなのかなあ」
静音が不安気に肩を縮込ませる。
静音は心霊スポット巡りを孝則や里香ほど楽しんではいなかった。
どちらかと言えば安全な恐怖を楽しむ方の人種である。
てきれば家で恐怖映像を見ている方がいいと思っていた。
だが、静音も孝則に恋をしていた。
それは親友の里香には内緒の事実で、静音はせめて孝則と共に行動できることを望んでこのイベントに参加し続けていた。
「静音ビビってんの?
それが目的でオレ等、心霊スポット巡りやってんだよ」
笑いながら孝則が言った。
「そうだけどお············」
静音は太腿の間に両手を挟んで俯いた。
バックミラーでその様子をチラ見した里香が言った。
「やだ、マジでビビってるの、静音」
「だってえ·········」
孝則が助け船を出す。
「ユーチューブでその手の動画見漁ってる割に恐がりなんだよなあ、静音は
大丈夫、イザとなったらオレが守ってやるよ」
里香が鋭い一瞥を孝則に向ける。
「孝則はいつも静音のナイト様なんだから」
孝則は助手席から里香の顔を面白がるように覗き込む。
「なに、妬いてるの里香? 」
「妬いてなんか·········」
「オレは二人のナイト様だよ」
三人が雑談しながら暫く車を走らせていると途中で草に塗れた黒い看板を見付ける。
里香は車を止めて窓を開けた。
孝則は車を降りて看板を覆う草を避けた。
黒地に赤文字で大きく『通りゃんせ』と書かれた、見るからにいかにもと云う看板が現れる。
静音が不安そうに言う。
「なにこれ、どうゆう看板? 」
「なんだろうな·········」
孝則が車に戻る。
「こんなワザとらしく看板立てられたら逆に笑えるんだけど」
里香はそう言ってアクセルを踏む。
それから30分ほど進むとそれらしい建物を発見した。
読んで戴き有り難うございます。ヾ(≧∀≦*)ノ〃
ホラー好きの娘に焚き付けられ、またホラーを書いてしまいました。
ホラー小説を読んだことごないが無い私が書いたホラー小説ですが、またまた娘に叩かれながら、頑張って書きました。笑
最後までお付き合い戴けたら、嬉しいです。<(_ _*)>