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5 ポンコツ令嬢は賢者に出会う

5 ポンコツ令嬢は賢者に出会う


 レオナードとエリザベートは王宮の中庭でお茶をしていた。

「レオナード様からのお招きありがとうごさいます。」

「エリザベートに聞きたいことがあったのだ。

 経営改革とやらはどうだ」

「それが…。まさか当家が結構苦しいとは知らなかったのです」

「ノヴァンシュタイン公爵家がか?」

「お父様が言うには結構借金があるのですって。初めて知りましたわ。でも、うちはそれでもまだいいそうです。ちゃんと借金が返せているから」

「まだいいとは。他の貴族たちは大変なのか」

「見栄のために別荘を増やしたり使用人の数で家の格を争ったりが流行っていたでしょう?

 借金で見栄を張っている家も多いと聞きました」

「そんな馬鹿な」

「わたくし、使用人を減らしたらいいんじゃないですのとお父様に言ったら、子供にそんな権限はないと言われてしまいましたの。」

「エリザベートは何人も使用人をクビにしてきたのではなかったのか?」

「お父様は問題ある使用人をやめさせるために、私のわがままを利用したにすぎないとおっしゃってたわ。退職金がもったいないからと」

「そうだったのか?」

  結構公爵家はブラックな職場なのでは?とレオナードは内心思った。

「お父様に子供だから経営とか考えなくていいと言われましたの。まずは勉強しなさいと。たしかにそうですけど、家のために何とかしたいですわ」

「そうか。エリザベート。俺から提案がある」

「何でしょう」

「父上から聞いたのだが今、13歳ながら天才と評判の少女がいるらしい。父親の商会を発展させたとか。あと作家としても売れているらしい」

「その子がなんですの?」

「その子は王国の医療にも貢献して今度、賢者の称号をもらうらしい。それで男爵の爵位を授かることになった。彼女はまだ子供だからもらうのは父親だが。」

「あら、平民でしたのね。平民から男爵…まさか」

「そう、あの本に書いてあった通りだ。

あまりの賢さに彼女はニホンの記憶持ちだと噂されている。」

「ニホンは架空の国ではなかったんですの?」

「そうだ。だがこの国にはニホンの記憶持ちが生まれると、国を発展させると言い伝えがある。小説だけ話だと思っていたんだがな。」

 まさか、その子が将来婚約破棄の原因となりますの?

 不安になるエリザベートにレオナードは言った。

「そのものに経営改革のことを相談してみてはどうだ。早いうちから味方にしておけば、断罪とやらは避けられるかもしれないぞ。」




 ケモミミセイギ商会。

 変わった名前ね?外国語かしら。


 エリザベートとレオナードはお忍びで王都の城下町に来ていた。お忍びと言ってもエリザベートの方はドレスで、市民の服を着ているレオナードの方がエリザベートの小間使いに見える。ドレスや化粧品などを扱っているような商会ならエリザベートでも聞いたことあるが、ここは日用品や食べ物を主に扱っている商会でエリザベートはあまり知らなかった。

 レオナードは従者に外で待つよう指示した。

 商会に入ると

「いらっしゃいませ、当店に何か御用でしょうか」

と店員が声をかけてきた。

「ここに賢者の称号予定とかいう人いるかしら」

 店員は一瞬値踏みする目つきををした。

「……、はいあそこにおります。少々お待ち下さい」

 奥にいるのは珍しいピンクブロンドの髪、そしてメガネの子供だった。

 女の子なのに髪を短くきっているの?

肩で切りそろえた髪をエリザベートは不思議に思った。

 忙しそうに店員たちに指示しているようだ。

 店員がエリザベートのことをその女の子に伝え、

女の子がこちらを見た。


ブシューーーー!


 ちょっと鼻血出した!え?何?あの子は病気ですの?


「デュフフフフフ…」

何?その笑い方。


 その女の子はハンカチで鼻血を拭いた後、すぐに真面目な顔になり、こちらに近づいた。

「初めまして。商会の娘、カミーユ・コンフローネでございます。

 美しい方を見ると鼻血が出る体質ゆえ、失礼いたしました。ご用件は何でしょうか。

 さぞ名のあるお家の方と見られますが」

商人のリップサービスとはいえ、美しいと言われて気をよくしたエリザベートは高らかに


「オーホッホっホ、今度貴方は賢者の称号をもらうそうね。その頭脳をこのノヴァンシュタイン公爵家のわたくしが買いますわ。わたくしに仕えるのは名誉ですのよ」

と言った。


「お断りします」


「…あなた、何て?」

「お断りします。ノヴァンシュタイン公爵令嬢エリザベート様。」

「わたくしをご存知ですの?ならば、何故?」

「私こそ何故です。なぜ、あなたに支えないといけないんですか?」

「それはうちが公爵家だからで」

「公爵家だからと言って仕える義務はないです」

「何ですって!あなたの家だって公爵家の力で潰せますのよ」

「どうやって?うちの商会を?」

「それは…お父様に言えば」

「お嬢様はご存知ないかもしれませんが、貴方の家の輸入商品をうりさばいているのはうちの商会です。例えうちに卸さなくても、うちは困りません。ですが、他の商会にできるとでも?鮮度を保ちつつ市場に回すことができるのはうちの商会だけです。困るのはお宅ですよ。」

 何この子。13歳とは思えないですわ。

「きぃ!平民のくせに!」

「貴方様は自分のお父様の商売を邪魔しに来たのでしょうか?お帰りください。」

「あなたは!名誉もお金も要らないの?!」

「わたくしは父親の商会に加えて、作家の副業もあり十分に儲けさせてもらっています。名誉も賢者の称号をいただけるだけで十分です。」

「じゃあ、じゃあどうしたらあなたを雇えるの?」

「私を雇いたければ、人としてその人が一番喜ぶのを用意することですね。」

「何を…」

金でも名誉でもなく…。

「エリザベートが失礼した。エリザベート、今回はあきらめよう。お前ではこの人を雇うのは無理だ」

カミーユはレオナードに頭をたれ、挨拶した。

「挨拶が遅れて申し訳ございません、王太子殿下。貴方がお詫びするほどのことではありません。貴族からのお誘いはよくあることではありますが、ノヴァンシュタイン公爵令嬢はまだましな方でございますので」

「よく俺が王太子と分かったな。」

「王太子殿下がお忍びで城下によくいらっいますのは有名ですので。手を見れば分かります」

 「ああ、剣ダコと火傷か。コンフローネ殿のことをエリザベートに伝えたのは俺だ。責任持って連れて帰る。エリザベート、帰るぞ」

「待ってください、レオナード様!」


帰りの馬車でエリザベート嬢は不貞腐れてた。

「どうして、私は公爵令嬢なのに」

「エリザベート、あのものは賢者。ブライドがとても高いのだろう」

「平民ですのに?」

「平民もみなブライドはある。あのものが言いたいのは人としての礼儀で接するべきということではないか。」

「むー」

「あのものがどういう人か、調べてから来るべきだった。あのものが書いた本を読んだことあるか?」

「いえ?」

「ならば、読むが良い。あのものの気持ちが分かるかもしれぬ」

 レオナードはカミーユ嬢の年齢不相応の表情を思い出した。公爵令嬢どころか王太子に物怖じしない態度。噂に違わぬ聡明さ。

 あのものならエリザベートの支えになってくるかもしれぬ。自分からも、もう一度掛け合ってみよう。

「元気だせ。エリザベート。俺がまた料理作ってやる。腹が減っては戦はできぬだ」

「あら、楽しみですわ。それでは材料買いましょうか。コンフローネ嬢の本を置いてあるか本屋ものぞいて見たいですわ」

 レオナードはエリザベートを連れて、馬車で街を巡ることにした。


 


ー後日。

「いらっしゃいませ。まあ、王太子様。何かご用事でしょうか。」

「コンフローネ嬢、仕事中にすまぬ。エリザベートのことでお願いしに来た。」

 カミーユは腕を組んで困った顔を見せた。

「いくら王太子の頼みと言えども、ノヴァンシュタイン令嬢自身が正解を引き当てないと無理でございます。エリザベート嬢は婚約破棄されるのではと以前から噂がありますが、そこが問題なのでございましょう?」

「その通りだ。だが、それをどうやったらエリザベートにわかってもらえるかが分からないのだ。エリザベートは貴族。貴族というのは身分が低いものに対して何というか…」

「分かっております。ノヴァンシュタイン令嬢はまだマシな方です。話が通じないわけではないですから。

でも貴族にも市民も人であることを分かってほしいのですが何とも…。今まで来た貴族にも同じようにお願いして私個人の雇用は断っているんです。」


 名誉でも金でもなく、人として一番喜ぶものを持ってきてください。


 プライドが高い貴族であるエリザベートには難しいかもしれないとレオナードは思った。

 その時、商会の前で馬車が止まる音がした。

 バン!と派手に扉を開けて、噂をしていたノヴァンシュタイン令嬢が入ってきた。

 鬼気迫る様子のエリザベートにレオナードは

「エリザベート!乱暴なことは!」

と止めに入ろうとした。

 エリザベートはレオナードに気づかない様子でツカツカとカミーユの前に迫った。

「…せい」

「あの、ノヴァンシュタイン令嬢、何とおっしゃしましたか?」

 戸惑った様子でカミーユがエリザベートに聞いた。

「先生!コンフローネ先生。わたくし先生のファンになりましたわ!先生の御本面白くて全て読みましたの。」

目の下に隈ができているがハイテンションな様子でエリザベートで捲し立てた。

「パン屋のアンヌとかもうボロボロに泣きましたの。幼なじみとの別れのシーンとか。」

「あ、ありがとうございます」

「市井の暮らしがこんなものだと知らなかったですわ。先生は貴族のことから労働階級の暮らしまで博識ですのね。」

「そこまで言われると照れますね」

「あの、わたくしとお友達になってくださらない?

ぜひ、うちに来てほしいの」

「エリザベート、だからそんな強引に」

「あら、レオナード様。いらしたの?」

「あ、いっすよ。」

「え?」

軽く了解するカミーユにレオナードは驚いた。

「私のことは気安くカミーユとお呼びください。先生とか実際に言われると恥ずかしくて」

「良かったですわ。お手紙書いて正式にうちに招待しますわ。お仕事の邪魔してごめんなさい。では失礼しますわ」

 エリザベートは去って行った。

レオナードは

「いいのか?」

とカミーユに聞いた。

「ええ。あのお嬢様がまさか正解を当てるとはね」

「正解?」

「私はその人が一番喜ぶものを持ってきてと言いました」

「エリザベートは何も持ってきてないぞ。

 それにそなたの言うのは人としての礼儀だと思っていたが」

「確かに私もそのつもりで言いました。でも」

 カミーユが笑った。


「作家は自分の作品を見て喜んでもらえるのが一番嬉しいのですよ」


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